121話真実はどこに?

 調べ物をしつつ、レナを鍛え……。


 己自身の鍛錬も欠かさずやり、アスナと稽古もして……。


 時には魔物退治に行き……ロナードを手助けする。


 そんな日々を過ごし……いよいよ、一年が過ぎようとしていた。




 そして、今日はロナードの部屋にて話し合いをする。


「さて、いよいよ今週末には旅立つが……成果は得られたか?」

「ええ、ありがとうございました」

「なに、礼を言うのは俺の方だ。おかげで、無事に王位を継承することができた」

「俺はただ、父上に手紙を送っただけですよ。ロナードが信頼に値する男だと」


 俺が父上に手紙を送ったことで、皇帝陛下からロナード宛に手紙が届いたらしい。

 まあ、要約すると……王位を祝う言葉が書いてあったと。

 これがわかりやすく、反対する貴族達を黙らせた。

 我が国としては、もうロナードを王だと認識してますよって意味だからだ。


「それはお主が皇帝に信頼されているからこそだ。ただの息子としてではなく、一人の男として……俺も、そう思ってもらえたのだろうか」

「そうだと嬉しいですね……それは、ロナードの中にしかないかと」

「ふっ、それもそうだ。俺は、俺の思う理想に進んでいくだけだ」


 そこで、俺は一つ咳払いをする。


「成果の話ですが、邪神のことや魔族のこと、女神についても、我が国とは違った見解があって興味深かったですね」

「ふむ……まあ、詳しい話は聞くまい。今回のはお主への褒美であって、俺がアスカロン帝国の禁書内容を知ることは許されない」

「ええ、助かります。ただ、これだけは話そうかと思ってまして……」

「なに? ……どんな内容だ?」


 俺は色々調べていくうちに、国の成り立ちから疑問が湧いてきた。

 それに、どうして俺やロナードが狙われるのかを……。


「まずは、ここの初代についての詳しい情報がなかったです。そして、それは我が国も同じです」

「ふむ……しかし、何千年も前のことだ。それも、無理はあるまい?」

「ええ、そう思います。まあ、それは答えがないので置いときます。俺が思ったのは……我が国やこの国の王位は、何者かによって操作されてきたのでは……ということです」

「……すまん、詳しく説明してくれるか?」

「まずは各国の重鎮に、教会……かはわからないですが、スパイがいましたね?」

「ああ、そうだな」

「ですが、今だけですかね? もっと前からもいたとしたら?」

「そう思う理由はなんだ?」

「王位を継ぐ者が、それに相応しくない人がいたり……もしくは、その予定がなかった人がなる場合もあったので」


 俺がこう思ったのは、父上の話を聞いたからだ。

 基盤が出来ていた二人の兄がいて、本来なら継ぐはずもなかったと。

 いきなり皇帝となり、力もなくて大変だったと。


「なるほど、それが俺とお主が狙われた理由に繋がるか。俺やお主が王位を継ぐと困る連中……教会か?」

「ええ、そう思います。ここからは推測になりますが……奴らは信奉者を集めたいはず」

「つまり、ろくでもない男を王位につけて、民の不安をあおぎ……ありえるな」

「国が不安定になれば、女神の信奉者もとい——教会への依存度が高まります」

「そうか……今までも、そうやって殺されてきたかもしれないか」

「あくまでも、推測でしかありませんが……」

「いや、貴重な話だった。俺の方でも、考えておこう」




 その帰り道……。


「ロナードには言わなかったが……」


(そもそも、きちんと……何処かで、良いように作り変えられていないか? 誰かにとって、都合が良いように)


「もしかしたら、フラムベルク家が言っていることと関係が?」


(それで、本来皇位継承をするのが自分たちだと……)


「いや、流石に話が飛躍しすぎか……」


 その後、大使館に戻ると……。


「師匠! お帰りなさい!」

「ああ、ただいま。どうだ? 調子は?」

「うむっ! ゴーレムを動かせるようになったのじゃ!」


(……レナも、随分と元気になったな。俺の国に行くことも、受け入れてたし……もちろん一番の理由は、ロナードの足手まといになりたくないからだけどね)


「レナ、もう一度聞くけど……良いんだな?」

「お兄様の足かせにはなりたくないのじゃ……」

「わかった。なら、俺が責任持ってお前を鍛えよう。そして、いつの日かロナードを助けてあげると良い」

「は、はいっ! よろしくお願いします!」

「クク、随分と素直になって……」

「あぅぅ……」


 すると、向こうからアスナとダインさんがやってくる。


「あらー、カグラさんに報告ですねー」

「おい? そういうアレではなくない?」

「またまたー、私も側室になりますし、どんどん増えていきますねー」

「えっ!? そうだったのですか!?」

「違うからっ! ダインさんが信じちゃうからっ!」

「むぅ……既成事実は失敗しますし、外堀を埋めるのも失敗ですか」


 ……最近、やたら迫ってくると思ったら。

 俺とて思春期の男だ、興味がないわけじゃないが……。

 カグラやセレナを裏切るわけにはいかないしね。


(二人とも……元気にしてるかな? )


 家族のみんなや、オルガにも早く会いたいな……。

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