第2話


 バイトの帰り道。

 私は今日も長い時間をかけて家までたどり着く。

 今日も雨だ。最近、梅雨でもないのに雨が多い。


 雨は室内から眺めるのは好きだ。

 だけど雨の日の電車は嫌い。傘をさして歩くのも嫌い。湿気で髪が膨張するのが嫌い。

 靴もびちゃびちゃ。不快指数はうなぎ登り。

 だけどやっと天国にたどり着いた。だからオーケー。


 帰宅した私は、バスルームへ一直線。

 だけど、隣人もバスタイムのようだった。

 下手くそな歌が反響している。

 エコー効果なんてあったもんじゃない。

 早々とバスタイムを切り上げて、バスタオル1枚で部屋をうろついた。


 髪は濡れている。少し寒い。

 湿度が高い。窓も開けていないのに。


 冷蔵庫を開け、2リットルのスポーツドリンクをそのまま飲む。コップを洗うのは面倒くさくて好きじゃない。

 風呂上がりはやっぱりこれだ。本当は白湯がいいと聞いたけど、でもそんなの飲みたくない。よく銭湯で見かける風呂上がりの牛乳も、体にはそんなに良くないらしい。私はおいしくも感じない。

 そういえば、牛乳なんて独り暮らしを始めてから買った試しがない事に気が付いた。

 私は牛乳も、白湯も飲まない。私の体は炭酸とスポーツドリンク、たまにコーヒーと酒で構成されている。

 だけどすこぶる健康だ。こんな格好でうろついても風邪一つひかない。

 バカは風邪をひかないというやつかもしれない。

 私は自分の体に無頓着だ。

 いや、全てにおいてかもしれない。


 ゆるく愉しく、それなりにハッピーに平凡に生きていけたらそれでいい。

 そして、たまには刺激がほしい。

 そう。だから私は刺激がほしい。


 ペットボトルを置き、隣の部屋に面したキッチンの壁を見る。

 昨日はあれから物音一つ聞こえなかった。

 死んだのかな。ちょっとがっかり。

 もっと楽しい展開を期待したのに。


 銃撃戦とか? カーチェイスとか?

 いや、そんなアクションじゃなくていい。私が好きなのはミステリーだ。

 どうしようか。

 ドアを叩いてみる?

 窓を覗いてみる?

 壁に穴でも開ける?

 いや、犯罪じみた真似はしたくない。

 だって私は常識人だし、当事者ではなく傍観者でいたいだけなのだ。


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