第11話 幽霊のお兄さん④

 通学路、振り返るとそこにいる。

 首に、たくさんの女の人の手のあとをつけたお兄さん。

 一週間と三日前、警察に捕まったあとに死んだ、悪い人。

 今日も黒い車に乗って、私をはねようとした。全身が濡れていて、寒そうだった。


 私は線路の真ん中に立っていた、セーラー服のお姉さんに言った。

「後ろのお兄さんが、ずっとそばにいてくれるんだって」

「本当?」

 お姉さんは嬉しそうに笑って、お兄さんを車から引きづり下ろした。

 お兄さんはお姉さんからはなれようとしたけど、お姉さんはお兄さんをはなさなかった。

 しばらくして遮断機が降り、電車が近づいてきた。


 私は電車が通る音が苦手だったから、走って帰った。

 後ろから電車が何かをはねたような、大きな音が聞こえた。

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