第12話 肝試し

――カイたちの屋敷侵入から30分前。

 十数人の学生たちが屋敷を見上げていた。

「ここが、かの有名なバベル七恐ねぇ。バベルの質も落ちたもんだ。なぁ、マイム、そうは思わねぇ?」

 小馬鹿にしたように金髪坊主に丸顔、頬が張り出した青年が隣の赤髪の少年マイムに尋ねる。

「ええ、オカメ先輩の仰る通り! こんな場所、我らが祖国ならゴロゴロありますよ!」

「いや、祖国のレベルの低下も否めねぇよ。俺たちの世代ならこの世で一番の無能なんて超絶ザコがロイヤルガードになるなんぞ、ありえねぇ話だしな」

 丸顔の青年、オカメが、吐き捨てるように叫ぶと、

「ええ、そこも同感です! あんな無能に好き放題にされる無様な王子も、無能のロイヤルガードを認める王も実に嘆かわしい限り!」

 マイムのこの発言に、同席者の中から次々に賛同の声が上がる。

「なあ、クズキぃ、お前もそう思うよなぁ?」

 唯一声を上げずに俯いている坊ちゃん刈の少年にオカメは同意を求める。クズキはビクッと身体を硬直させると、

「は、はい!」

 声を張り上げる。

「じゃあ、お前に先駆けの栄誉を与える! 精々、役に立ってみせろ!」

 オカメが右の掌でクズキの背中を叩き、拒否不可能な一方的な指示を与える。

「は……い」

 世界が終わるような顔で、頷くクズキに、

「おい、クズ、聞こえねぇぞっ! 返事はどうしたっ!」

 マイムが額に太い青筋を晴らしながら、怒号を張り上げると、

「は、はい!」

 大慌てでクズキは返答する。

「いい返事だ。お前のようなオンボロのカスが、俺たちのために働けるんだ! 光栄に思えよ」

 マイムは顔を醜悪に歪めながら、クズキの背中を乱暴に扉の前に向けて押す。地面に倒れ込んだクズキは起き上がると服についた土を払って、

「わかり……ました」

 悲壮感たっぷりの顔で小さく頷く。そして、大扉の前まで行くと両手で開ける。

 軋み音を立てて開く大扉。その中にクズキは足を踏み入れる。



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