第150話 最後の侵入者の排除
ノースグランドの断崖絶壁の上に降り立ったゴーグルの男、ペッパーと左目に眼帯をした女、ヴィネガー。
「おいおい、この気配マジでヤバくね?」
「マジでキッショッいけど、あんたに同意!」
二人は周囲をキョロキョロと見渡しながら、焦燥たっぷりの声を上げる。
二人の前の空中に突如生じる炎と岩。それらは急速に人の姿を形成していく。たちまち、黒色の闇の岩を周囲に浮遊させているブラウン髪の少年と黒炎を纏った黒服を着た額に二つの角を生やした筋骨隆々の男の姿を形成する。そして、二人は前に出現する全身黒ずくめにハットを深く被った男に跪く。そのハットの男を一目見て、竜種さえも眉一つ動かぬ二人から急速に血の気が引いていく。
「くそっ! あれは俺たちでは無理だ! 決めた場所で落ち合うぞ!」
「了解!」
一目散にノースグランドの断崖絶壁の下に降りていくペッパーとヴィネガー。
『疫鬼様、
二つの角を生やした筋骨隆々の男、イフリートが黒ずくめにハットを被った男に了解を求めると、
『よいよいよいのす。追撃なさい。ただし、あえらは次のゲームの駒候補、今回は捕らえる必要まではありません。じっくりと恐怖を与えながら追い詰めなさい。もちろん、万が一闘争になったら、殺しても構いませんよぉ』
オーバーリアクションで了承する。
『イフリート、直ちに追撃に向かいます!』
『タイタン、直ちに追撃に向かいます!』
二人は姿勢を正すと、そう声を張り上げると闇色の炎と砂となり、ペッパーとヴィネガーが下りて行った絶壁の下へと消えていく。
『さーてさてさてさて、我らの神が治める地に侵入したゴミはこれで最後ですかねぇ。これ以上、我らが神の御手を煩わせてはなりません。一応、警備は十分にしておくことといたしましょう』
全身黒ずくめにハットを深く被った男、疫鬼がパチンと指を鳴らすと、白色の包帯で全身を雁字搦めにしたものども、十数柱が姿を現す。
『この土地に侵入、退出するあらゆるものを監視し、もし不信なものがいれば即座に捕らえなさい。尋問は私が直々に実施します』
『ぎぎ』
白色の包帯で身を包んだ者どもは胸に右手を当てて一礼すると、周囲に散っていく。
『ギリメカラ様、鼠の処理、完了いたしました』
空を見下げて疫鬼が報告すると、
『ご苦労、御方様にお前たちの働き、必ず伝えて置くぞ。引き続きの監視を頼む』
天から降ってくる野太い労いの声。
『はっ! はっ! ありがたき幸せ!』
両手を組んで涙を流して歓喜に震える疫鬼。無理もない、疫鬼たち、ギリメカラ派の者たちからすれば、主人たるカイ・ハイネマンに己の存在を覚えてもらえる。それこそが、最大の切望なのだから。
しばし、両手組んだまま微動だにしなかったが、疫鬼は立ち上がると、
『それでは、私も本来の任務であるあの都市の警護に戻りましょうか』
その姿は無数の虫となり、崖の下へと消えて行った。
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