第16話 腐王
【華の死都】エリア5 最奥の神殿内
エリア5の奥の神殿内十数人の黒ずくめの集団がいた。
――内臓がはみ出している者。
――片腕を失っている者。
――片足と片目を失い身体を引きずっている者。
その全員が瀕死の重傷を負っている。
隊長らしき人物は部屋の中心の石板の前まで行くと、負傷した仲間たちをグルリと見渡すと、
「皆、今までよくついてきてくれた。我らはとうとうこの地にたどり着いたんだ」
右拳を強く握りしめ、力強く叫ぶ。
既に命はつきかけているのに黒ずくめたちは例外なくやり遂げたような達成感に溢れていた。
「この地で眠る怪物が放たれれば、この地の勇者どもとてただではすむまい。そして、現在、ノースグランドでは、ネイム様が我らの大神の復活の計画を進めている。そうなれば、弱った勇者どもを一網打尽にできる! 我ら魔族は勝利するのだっ!」
泣き出すものが出る中、隊長は鞄から酒を取り出し震える手で小さな容器に次ぐと皆に配る。そしてそれらを掲げて、
「人種の絶滅と、我らが魔族の繁栄の未来に、乾杯っ!」
酒を飲み欲して隊長は器を地面に叩きつけると石板に向き直り、それに触れる。
石板から同心円状出現する真っ赤な幾何学模様。それらは回転していく。
ドロドロに腐っていく黒ずくめ者たち。そんな地獄のような光景の中、
「我らが偉大なる王――アシュメディア様、万歳ぃぃっ!」
次々に叫びながら黒ずくめたちは腐り落ちる。
そして、床に渦を成していたグズグズに腐った黒ずくめたちの肉片は盛り上がり、人型の何かを形成していく。
小人のような小さくも風船のような真ん丸な体躯に、頭には毛が一本もなくツルツルで、不自然なほど真ん丸な顔には小さな丸いサングラスをしている。そして、無数の球体の模様が刻まれた真っ赤な衣服を着用していた。
男は浮遊しながらも、神殿を出ると、両腕を広げて――。
『ぷはぷはぷははっ!! 久しぶりのこの
ケタケタと笑い出し、
『大っ嫌いDEATHッ!』
唐突に憤怒の形相となり激昂する。
さらに一転、顔を恍惚に染めると、
『私の鼻が曲がるほどの腐乱臭たっぷりの愛し子たち、出てきなさい』
両腕を上げて両手をパンパンと叩く。
男の真っ赤な衣服に刻まれていた球体の四つが盛り上がり、はい出てくる。
そこに現れたのは黒スーツにハットを被った四体の男女。男女の顔はドロドロに溶解しており、星、丸、逆三角、四角の奇妙な形をしていた。
『肉が腐りぃ、骨が
両腕を掲げて両手と身体を左右にゆっくりと振って、口遊む。
『腐れェ♪ トロケロケロケロォォォ~~♫』
四体の男女もそれにならい両腕を上げて両手と身体を左右に揺らし、コーラスで歌う。
『それがぁ♫』
サングラスの風船のような体躯の男はさらに大きく振り上げた両手と身体を揺らす。
『それそれこそがぁ♬』
四体の男女も同じく両手と身体を大きく揺らす。
『『『『『我、腐王(腐王の眷属)の渇望なりぃぃぃぃ!!』』』』』
サングラスの男と四人の男女は狂ったような金切り声を上げる。
まるでその声に呼応するかのように、男たちの周囲の土や草木は腐り果てた上で、球状の塊となり、巨大な怪物が生まれ出でる。
『さあ、この世界の全てを腐らせるのDEATHッ! 我らの腐敗臭たっぷりの楽園構築のためNIぃぃぃぃぃ!』
怪物たちは大地や木々を腐らせ、他のアンデッドすらも飲み込みながらも、進み続ける。
そう。主の狂った渇望を叶えるために……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます