第12話 無属性魔法


 ――――ゲーム開始から7673年後


 魔導書を読み始めの際は、頭痛がすごく、5分置きくらいにエリクサーを飲んでいた。

 読み続けるうちに【魔導中毒耐性】というわけのわからないスキルを獲得する。それを獲得してから体調が大分よくなり、効率は大幅に向上する。そして、現在【魔導中毒無効】に進化してから魔導書の読書に障害はなくなっている。

 魔導書の文字はよくわからん記号の羅列だったが、魔導語の翻訳書のようなものが宝箱から手に入れていたのでそれを使用し解読していく。

 結果わかったことは、私には通常の魔法は使えないという事実。

 ここで、魔法には属性魔法という概念がある。一般に言う魔法がこれだ。

 この属性魔法には一般属性と特殊属性がある。

 一般属性は火、水、土、風の四大基礎属性と、氷、雷、光、闇の上位四属性の合計8つとがある。特殊属性はこの一般属性以外のすべての属性魔法の総称ってわけだ。

この属性魔法は基本的には魔導書の契約も含めて才能があるものしか取得できない。この才能はどうやら、恩恵ギフトやスキルではない別概念のようであり、魔導書で契約できないものは、いくら修行を積んでもその魔法を獲得することは叶わないんだそうだ。

 よって、魔導書の契約すらできぬ私には取得は不可能。ではこの60年間が無駄だったのかというとそうでもない。

 魔法にはもう一つ、無属性魔法という概念があるのだ。これは手っ取り早くいうと物や人体に魔力を纏わせて一定の効果を狙う魔法だ。魔力を操作するだけだから、特殊な才能もいらない。まさに今の私にピッタリの力だ。

 この点、迷宮で取得した本は魔導書だけではなく、他の専門書も数万冊に及んだ。そして、この60年間、それらの本を暗記するほど繰り返し熟読した結果、いくつかの無属性魔法は非常に非効率的であることを発見する。

 その事実に気付いたのは、医学書という本を読んだときだった。

人体はとんでもない数の小さな細胞という成分が寄り集まり、それ等が集まり組織を形成し、さらに組織が集まり、一定の機能を有する器官を形成する。私達が言う臓器とはこの器官のことだ。無属性魔法である【身体超強化】と【超速治癒】の魔導書は、この魔力を込める対象を複数の組織としてしまっている。もっとより小さな単位、理想的には細胞一つ、一つに魔力を込めて操作した方が、より強度なものが出来上がるはずだ。それには、ち密な魔力操作が必要。そして、この魔力操作が可能となれば、私の始めての遠距離攻撃手段も取得可能となるはず。

 もっとも、それをなすには今までと比較にならぬ時間と鍛錬が必要となる。


「いいなぁ。すごくいいっ! これでまた目標ができたぁぁッ!! 私はまた強くなれるっ!!」


 私は歓喜の奇声をあげながらも、魔力操作の鍛錬を開始する。


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