十八日目

ビキッ


「いったぁぁぁぁー!!!」


体に激しい痛みを感じ、目が覚めた。大声を出したことによりさらに痛みが増す。


「……っ……!」


体が動けない。と言うよりは動かせないに近い状態だ。

じんわりと攻めてくる痛みに耐え…落ち着くまで我慢する他なかった……ゆっくりと深呼吸して落ち着かせる。


「おはよー! あれ? まだ寝てるの!? このー! 寝坊助さんめっ!」


勢いよく死神が布団に飛び乗ってきた。


「ぃっっ…………たぁぁぁぁぁぁ!!!!」


断末魔のような叫び声をあげる。激しい痛みに顔をひきつらせながら眉間に力を入れて必死で耐える。


「え……?? ご……ごめん!! 大丈夫かい!? 何があったの!?」


「こ……」


「こ??」


「これは筋肉痛……だ……二日後じゃなくてよかった……」


痛みに耐えながら声を絞り出した。主に腕と足と背中とお腹の筋肉痛がヤバいほどきてる……

次の日に来るってことは俺もまだ若いってことだな!

遅れてこない喜びと現状の痛みに翻弄される。


「すまん……死神……お願いがあるんだが」


「え!? 何!? 僕にできることならなんでもやるよ!」


「湿布貼ってくんね??」


タンスの二段目にカゴがあって、その中に何枚か湿布が入っていた。

高いところにあるが、死神の手が届かない位置ではない

ダメもとで頼み込んでみた。


「わかったよ! しっぷ? だね! 待っててくれよー!!!」


走ってリビングに行き、もの音を立てながら移動した。

途中何かが落ちる音もしたけど……確かタンスの上にはそれほど大切なものは……あったかな???

考えるがなかなか思いつかなかったので何もせず死神が湿布を取って来るのを待っていた。


「あった!! これかな!?」


ぽてぽてと音が聞こえそうな足取りで湿布を数枚取ってきてくれた。

軽くお礼を言って、腕に貼るように指示をした。

小さい手で必死に湿布の袋をこじ開けてビニールを剥がす。


「こうか!? え? これどう剥がすの? うわっ! 手についた!? ねちゃねちゃする…」


「うっわ! これ臭ったことある! くっさ!! うわ! 手についた! やだぁぁ」


嫌がりながらもきちんと貼ろうとしてくれてる姿勢に感謝の念をうかべた。

丁寧に貼ってくれたが、どうしても難しかったらしく……ぐしゃぐしゃに腕に貼られていた。


「え……っと……ごめんよ……」


上手く出来ないのも無理がない。ぐしゃぐしゃの湿布に愛情を感じた。両腕貼ってもらって、軽く体をうつ伏せにして足にも貼ってもらった。


「ふー……ありがとう。これで少し落ち着くといいがなぁ……」


俺はこのまま安静にして眠りにつこうとした時、死神がおずおずと顔を覗いてきた。心配そうな顔をしてじっと見つめている。


「どうした?」


「あ……いやー……なにか力になれることないかなーなんて……」


力になれること……かぁ……特に思いつかない。


「あー湿布貼ってくれたし寝てたら治ると思うから大丈夫だよ」


少し残念そうな顔をして死神が俺の部屋から出ていく。

なにか言った方が良かったかな?


しばらく横になっていると激しく水が流れる音が聞こえた。

止まったかと思ったらぴちゃぴちゃなり始めた。

俺の部屋に近づいてきている……

次の瞬間、ゆっくりと俺の部屋の扉が開かれた。

俺は入ってきた何者かに気づかれないように狸寝入りをした。


(お願いだ……気づかれませんように!!)


冷たいものが額にあたる。何か水的ななにかが顔を伝って耳に入る。


「!?」


驚いて額のものを振りほどこうとした。目をそっと開けると隣に座っているものと目が合う。


「あ! ごめん! 起こしちゃったかい?」


「………なんだよぉー……びびらせんなよぉ……」


てっきり幽霊かと思っていた俺は安堵の溜息を深くついた。


「なんだとはなんだよ!! せっかく君のためにバケツと濡れタオル用意したのに!!」


(……????? 筋肉痛にバケツと濡れタオルいるっけ?)


なにか的はずれな気がしたが……一生懸命やろうとしてくれる姿が可愛い。こんな時彼女がいたら……なんてありもしないことを妄想していると顔に濡れ(絞ってない)タオルを押し付けられた。


まぁ、見当違いではあるが……ひんやりしてて目が覚める。


「ありがとな」


やっとなにか出来たことに喜びの表情を見せて自慢の肉球(なかなか触らせてくれない)を触らせてくれた。


癒される……


「早く良くなってくれよー! 君が元気ないと僕が不安だからさ」


ツンデレか? と思わせるほど顔を赤らめて背けた。


朝と比べてだいぶ体が動くようになり、一度起き上がってみる。

死神にものすごく止められたが、これは風邪とかじゃないから問題は無い。

全くない。


まだ少し筋を痛めている感覚はあるが、だいぶ動かせる。


「看病してくれてありがとうな! おかげで元気が戻ったぞー!」


ゆっくり腕を回して元気のアピールをしてみる……少し腕が痛い……

死神は安心した顔つきになり、びしゃびしゃのタオルとバケツを持って台所に走っていった。


ずっと寝たきりも疲れるので立ち上がり、リビングのソファでゴロゴロすることにした。


ソファに座ろうとすると……テーブルの上のノートパソコンが開いていた。

画面に映し出されていたものは……


『体 動かない 病気 治し方 看病 方法』


かなりの量の検索履歴が残っていた。


「あー……だからか」


パソコンを見ながら口元が緩む。そっとパソコンを閉じてソファに腰を下ろした。

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