第43話 拾い物

 旅に出て、3日目だ。二人にとっては初めての旅かと思っていたら、既にライカによってサバイバル訓練を課せられた後だったらしい。

 森の中に3日間置き去りにされたそうだ。

 3歳の子供になんちゅう事をしとんじゃ、あいつは。隠れてみてたんだろうけど。それでもやりすぎだろ。

 俺が3歳の頃なんてな――同じ様な事されたな。父さんに。

 何だ、酷いことだと思ったけど普通の事だったな。悪く言ってごめんよ、ライカ。


 それにしても、サーシャもバルスも足が早いな。3歳にしては十二分に過ぎる。普通の大人よりも早いし、持久力もある。冒険者としたら、F級から始まって、既にE級を卒業するくらいの実力はありそうだ。

 将来が末恐ろしい。ライカ2号にならないように、しっかりと一般常識を教えないといけないな。

 うん。いままでサボりすぎた。俺は一般常識を教える役目をすべきだった。今日からはしっかりしよう。


「パパ、あっちにボアがいる――と思う」

 まだその辺りは自信がなさそうだが、獲物がいるのは分かるみたいだ。

「どうする。ボアだったら二人で狩ってみるか?」

「サーシャ姉、殺ろ」

 バルスが無邪気に怖いことを言う。

「パパ、殺ってみる」

 さっきから字が気になるんだけど……。やばい。教育を始めるのが遅すぎたのか。既にライカ色に染まっている気がする。


 二人が殺る気になっているので、任せてみることにした。

 なっ、こいつ等、魔法を使いやがった。しかも紫電だと。

「パパ、凄いでしょ。ママに教えてもらったの」

「父ちゃん、でも、まだ一人じゃ出来ないの」

 確かにこいつ等は特殊な魔法の使い方をした。サーシャが両手で雷の魔法を、バルスが両手で身体強化の魔法を使い、それぞれを片割れに分けて、紫電にしやがった。

 本来、強化系の魔法は本人にしかかけることが出来ない。なぜなら、人は一人ひとり個性があり、本人合った魔法をかけないと十全に効果が出なかったり、最悪強すぎると体が爆発してしまうこともある。

 だが、双子故か見事に魔法が成立している。3歳でこのレベルで魔法が使えるとは天才か。セツナに魔法を教えさせてもいいかもしれない。

 この天才児達を育てられる。親としてよりも師匠としての喜びを感じている。この子達は確実に俺よりも強くなるな。


「父ちゃん、うまいな」

 あの先にいたボアは紫電を使った二人の敵ではなく、あっさりと倒され、いまバルスに食されている。俺とサーシャは既に腹一杯なので、残りはバルスゆきとなった。

 同じ双子なのだが、サーシャは俺と同じくらいしか食べないがバルスは昔のライカ級に食べる。

 なのに、二人の成長の仕方は一緒。わからん。何処にその栄養が使われているのだ。


 サーシャは食事を終えた後、小川へ水浴びに行った。紫電を使って行ったので、何かあっても大丈夫だろう。


「パパ。これ拾った」

 水浴びに行ったサーシャが裸で戻ってきた。やっぱりお前も裸族か。まだ3歳だ。まだ間に合う。

「サーシャ。裸でうろうろしたらいけないよ」

「でも、ママは服よりもパパへの用事を優先しなさいって……」

 あいつ、絶対次会ったらしばく。

「ママの常識、非常識って言ってな、ライカの言うことを聞いていたら、立派な大人になれないんだよ。サーシャもレイ君やモニカみたいにお姉ちゃんなんだから、下の子の見本になれるようにならないとね」

「分かった―」

 素直ないい子である。言うことを聞かない3人とはえらい違いだ。

「で、何を拾ったって」

「ん。これ」

 サーシャが茂みから出してきたのは、これまた素っ裸の女の子だった。

「す、直ぐに拾った所に戻してきなさい。生き物を拾ってきたらダメ」

 この子は何というものを拾ってくるんだ。

「でも、この人、私が川に飛び込んだからビリビリってなって、倒れちゃったの」

 あっ、紫電使って水に入ったから感電しちゃったのか。それはこちらの過失だ。


 こういった場合の対応をきちんと子供たちに教えておかないと。

「サーシャ。こういったときは相手が起きる前に逃げ出すんだ。早く元の場所に戻しに行くぞ」

 俺が、謎の少女を抱き上げて戻しに行こうとすると、その子の目がパチっと開いてしまった。


「キャーーーーー」

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