第8話:従属爵位
目の前にいるサリー王妃の目の色が変わっているが、それも当然だろう。
俺もまだまだ若年で、それほど社交に参加した訳ではないが、それでも切り出しで継ぎ目のない宝石製のティアラやサークレットなど、一度も見たことがない。
たとえそれが一般的には低質だと言われる水晶であろうと、金の五倍十倍の価値が、いや切り出しのティアラにできるものなら金の百倍二百倍の価値がある
希少性で言えば、金に高価な宝石を飾り立てたクラウンなどよりもずっと価値があり、舞踏会で注目を浴びるのが今から目に浮かんでいるのだろう。
「よくぞこれほどのモノを手に入れましたね、キャメロン、いえラゼル侯爵」
おっと、今までは子供扱いして爵位で呼んでいなかったのに、急に態度を変えてきたな、これはとてもいい傾向だ、褒美を聞いて来ることだろう。
だがこの原石に匹敵する褒美となると、よほどのモノになる。
そんなモノを王家に要求したら、敵対する貴族の妬み嫉みを買ってしまう。
俺だけならそんな貴族叩き潰してやるが、俺のいない時にリアナが危険な目にあってはいけないので、そんな事はしない。
「これほどのモノを献上されては、礼を与えなばなりませんね。
何か欲しい物はありますか、私のできる範囲のモノを与えましょう」
やれ、やれ、やはり強かな女だな。
最初からサリー王妃に支払えるモノと限定してきたか。
これだけの原石に対する正当な支払いをしようとすれば、王妃の年収を遥かに超える金額になってしまうから、当然要求できなくなる。
利権や権限なども、表向きは王妃には与える事ができない。
だが、今更俺やラゼル公爵家に少々の利権や権限など不要だ。
「では、爵位を頂けませんか、我がラゼル公爵家には、ラゼル侯爵、ラゼル伯爵、ラゼル子爵の従属爵位がありますが、私がラゼル侯爵の爵位を使うと、妹のリアナはラゼル伯爵を使わなければいけなくなります。
できれば侯爵の爵位を頂きたく思います」
「まあ、侯爵ですか、それは流石に難しいですわ。
確かにこの原石は素晴らしいモノですが、それだけで侯爵はねぇ。
騎士や準男爵、いえ、男爵の爵位なら与える事はできますが、侯爵は難しいわ」
「では、この原石に加えて新たな開拓村を作るというのはどうでしょうか。
王家の対する従軍義務のある侯爵家が新たにできれば、王家の為にもなると思うのですか、いかかでしょうか?」
「そうね、それでもいきなり侯爵と言うのはねぇ。
準男爵ですら三十人の兵士を三年間養う献金が条件なのよ。
士族位の準男爵位ならともかく、貴族位はそう簡単に与えられないのよ。
私が独断で与えられるのは精々男爵位までよ」
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