第15話 質問討論タイム
全員のアピールステージが終わった状況で女帝達は元の玉座にいる。
「はい! では次の質問討論ステージに参ります!」
ヴィーナは光学迷彩で隠してあった四角い座面の椅子を持ち中央まで運んだ。
ゆきひとはヴィーナに促されて椅子に座る。
「では質問討論タイムのスタートです!」
スカイパージの上で飛び跳ねるパステル。
最初に手を挙げたのはアラブの女帝タンナーズだ。
「わらわからの質問じゃ」
ヴィーナからマイクを渡されるゆきひと。
「はい、どうぞ」
男の声は少し震えていた。
自分がステージで踊ってから、すっかり体が冷えてしまっていた。
「そちは……童貞か?」
ゆきひとは思わず吹き出した。
体のあちこちから火が噴き出すような暑さが沸き上がる。
異性と付き合ったことはあったが経験は無かった。
何と答えればいいのかと、自分の太い腕を何度も摩る。
「えっとですね……」
『答えたくないことはノーコメントでもOKです。それと自分からも気になることがあれば発言して下さい。私を含め会場の殆どの女性はバージンです。恥ずかしいことではないですよ』
ヴィーナは助け舟を出した。
『そ、そうですか』
ゆきひとはマイクを強く握りしめる。
「俺は……」
むせ返りそうになる。
「俺は、童貞です!!」
観客達からは「おお~」という反応。ゆきひとは生きのいい魚を見るかのような視線を感じた。タンナーズも満足そうに笑う。
「ありがとう」
萌香が静かに手を上げる。
「ゆきひとさん……家族構成をお伺いしたいのですが」
「……家族構成は父母兄そして祖母がいました。祖母以外の家族とは疎遠で……お婆ちゃん子でしたね」
「仲が悪かったんですか?」
「仲が悪いというか……小さい時に両親が離婚して兄は父に引き取られ俺は母方の実家で育ちました。母は放任主義だったので……仲が悪いというより無関心って所でしょうか」
それはゆきひとにとって思い出したくない過去だった。家族の話になると苦手意識のあった母親のことを思い出してしまう。母は男に溺れゆきひとに全く関心がなかった。ゆきひとは過去付き合った異性をよく母親と重ねてしまっていた。
どうせ心変わりしてしまう。
永遠の愛なんて信じない。
親の離婚と母親の異性関係がゆきひとの恋愛観を歪めていた。
「なるほど……返答ありがとうございました」
萌香は平静を装っていたが、ゆきひとに対しての興味が膨らむばかりで気持ちが不安定になっていた。一方のゆきひとは、いい印象の無い家族のことを思い出して元気が萎んでいた。
そんな状況の中、オネットはゆきひとに興味があるのかないのか首を傾げて考え込んでいた。
パステルは空気感をもろともしないオネットの様子に気になって仕方がない。
「オネットさんも何か質問があったらお願いしますー」
「自分の番か。ではゆきひと君に質問をしよう」
咳き込むオネット。
青髪の弁護士に注目が集まる。
「ゆきひと君はこのイベント、メンズ・オークションは人権侵害に当たるとは思わないか?」
その質問は会場にいる全員の意表を突いたものだった。
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