第17話 うみちゃんのかわいいところ
うみ「あのなぁ! そうやってみんな笑うけど、あたしにもかわいいときとかあったんだぞ!」
それは、休み時間中、おしゃべりしているときに出たことばだった。
うみ「小さい頃すずめが道路にとまってる前を自転車で通るときにごめんなさいって思ったり、昔もこんなふうに髪が短かったから、商店街のおっちゃんに『おい、そこの坊主!』って言われたりしてさぁ……ただの男勝りってだけなのに……言ってやったさ、『あたしは女だ!』って」
さらに話を続ける。
うみ「全然似合ってないのに親にフリフリの衣装着せられちまったこともあるし、この前もロコに買い物つきあわされて、おそろいのヘアアクセにしよーみたいな話になったし、全然その気じゃないのに無理くりお団子までさせられたんだからな!」
ロコ「でもやっぱり、この前のうみちゃんが一番わたしはかわいいな〜って思ったよ?」
うみ「あれは忘れてくれよ……ていうか、よく思えたな、あんな状況下で……下手したら死んでたぞ、あたしたち……」
未咲「なんというか、自分で言っちゃうところがまたかわいいよねー。わたしは羨ましいよ、このふたりの関係が……」
春泉「そういえば、ミサキとレイカはホントにどういうカンケーなの……??」
玲香「ただの幼馴染、とも言いづらくなったわね……この前は未咲にあんなことさせられたし……」
春泉「?」
♦
玲香「おねがい、離してっ……もうほんとに出ちゃう……これ以上、我慢できないのよ……っ」
未咲「そんなこと言ってぇ……いつもの玲香ちゃんだったら、ちょっと邪魔されたくらいで余裕でしょ?」
玲香「きょうはほんとに調子が悪くて……朝からトイレにもいけてないし……こうやって喋ってる間にも、ぉしっこ……出ちゃいそうなのっ……」
♦
うみ「たしかにあの日、なんか調子わるそうだったよなー」
未咲「玲香ちゃんのコットンから染み出してくるおしっこ……そう、それはまさに、黄金の湧き水……! あぁっ、もう一回みたいなぁ……」
玲香「言いかたが絶妙に気持ち悪いのよ、まったく……あと、見せないから」
ロコ「玲香ちゃんってわたしたちの前だと油断して、そういうパンツ穿いてくるんだ……」
まるで違うところでは別の素材のそれをつけているのを知っているかのよう。何を知っているというのだろう……。
玲香「それはまぁ……仕方ないでしょ、いまだに時代に合ってないわけのわかんない校則のせいよ」
未咲「下着のおしゃれすら楽しめないこの学校だけど、わたしは玲香ちゃんがいればそれだけでいいんだけどねっ」
玲香「ちょっといいことのように言ってんじゃないわよ……こっちはパンツ代請求したいくらいだっていうのに……」
それでも穿き続けているらしい玲香ちゃん。なにげに健気だ。
未咲「ねぇ、もう一回あのパンツ穿いておしっこして?」
玲香「……わかったわよ、あとでうちに来なさい、トイレで見せてあげるから」
未咲「えへへ、たのしみだなぁ……」
ロコ「えっと、うみちゃん……わたしたちもそうする?」
うみ「きゅ、急にどうしたんだよ、ロコ」
ロコ「実はさっきから……はぁ、はぁ……ずっと、おしっこしたくて……っ、いつトイレに行こうかな〜って思ってたんだけど……いまになって、気が変わったの……」
うみ「大丈夫か……? 無理そうならやめとけよ? 恥かくだけだし、みんないるから逃げ場なんてどこにもないぞ?」
ロコ「いいの……わたし、なんだかだんだん、みんなに見られるの、好きになってきた気がするから……」
呼吸にあわせて動くおなか。その中には、想像を絶するほどの尿量をたくわえた膀胱が、静かにそのときを待ち構えていた。
ロコ「ここはトイレ……誰にも見られてない……おしっこしていい、ところ……」
うみ「おい、だからやめとけって……」
ロコ「うみちゃん邪魔しないで……もう、どっちみち間に合わないもんっ……」
そう言って、少しだけ自分を開放する。それだけでもとっても気持ち良さそうだ。
ロコ「出したい……けど、やっぱり恥ずかしいよぉっ」
言いながら、ふたたび失禁。今度はかなり大きい染みができた。
ロコ「んっ……あはは……もう、けっこうおもらししちゃった……かな……」
それに気づいてからはどうでもよくなったのか、うっすら涙を浮かべながら目を閉じて、すぅーっと息を吸い込んでからゆっくり力をゆるめていった。
ロコ「出てるっ……うみちゃん、見てる?」
うみ「お、おう、ちゃんと見てるぞ……?」
嘘だった。こんな、ちょっとアレな感じになってるロコなんてまるで見てられるかよ……!
ロコ「おしっこが、パンツの中で暴れてるの……」
うみ「実況はいいから……」
実際のところ、太ももがぴっちり閉じていたことがあって三角だまりができあがっていたらしい。
あたしに言わせんな、こんなこと……。
ロコ「全部、出た……」
うみ「そ、そうか、それはよかったな……」
正直目なんてとても合わせられない。そのことにロコは気づいているだろうか。
ロコ「大丈夫、わたしが片付けるから……」
うみ「いやいや無理すんなって。あたしがやるから、ロコは脱いでじっとしてろ」
ロコ「うん……」
自分ですると言ったところにロコらしさを感じたが、ここはあたしがやらずしてどうすんだという。
ロコ「うみちゃん、やっぱり可愛い……♡」
うみ「ばっ……じっとしてろって言ったろ?」
ロコ「そうだけど、やっぱり可愛い……♡」
うみ「二回言うなよ、恥ずかしいやつだな……」
黙々と片付けているときに……ほんと恥ずかしいやつ。
うみ「うわ先生きた……絶対これ心配されるぜ、あたしたち……」
洋子先生が目をぱちくりしながら様子を窺う。
洋子「どうしました……えっと、見なかったことにしますね……」
そのよそよそしさは逆に気まずい。教師としてその対処は正しいのだろうか。
洋子「ほんとは持ってきたらだめなんですけど、いつもお世話になってるかたからこんなものを頂いたので、皆さんにもおすそわけしますね」
未咲「わー、色とりどりの焼き菓子だー! おいしそー……じゅるり」
玲香「上も下も下品ね、この子は……」
未咲「はひは言っは、玲香ちゃん?」
さっそく口にしている未咲。
玲香「なんでも」
未咲「ふっふーん、ほんとはちゃんと聞こえてましたー。あとでお仕置きしなきゃだねっ」
玲香「お仕置きする能もないくせに……」
未咲「そんなことないよ! わたしだってちょちょいって本気さえ出せば……」
洋子「土産話も持ってこれなくて、こんなものになってしまいましたが……そもそもこれ、もともと人からもらったものですし……」
うみ「長らくご無沙汰だった気がするんですけど、元気にしてましたか?」
洋子「ええ、それはもう……ご心配をおかけしました」
聞くと先生は、原因不明の不調がしばらく続いたせいで、この学校に長いこと顔を出せていなかったらしい。
理由はともあれ、何事もなかったようでよかった。
洋子「これからは無理せずに行きたいと思いますので、またよろしくお願いしますね」
全員「はい!」
うみちゃんのかわいいところも見られて、いい一日だったと思う。
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