第15話 9-0時 (crazy)

 その夜、玲香ちゃんは詞を書いていた。


 ――終わることのないさざめき

   夕闇に隠れて見えなくなっていく

   残響 まだ聞こえてる?

   なお咲くことのない花は

   どこまでも深く 何かを湛えて


 玲香「……途中から未咲のことになってるじゃない!」


 ひとり叫んで現状を嘆く。最近あの子のことばかり考えてしまっているフシがある。


 玲香「ま、まぁ、あの子がある意味原動力になっていることはあるんだけど……」


 書いたところで、演ってくれる人はいまのところいない。せいぜい自分で弾き語るくらいだ。

 もし未咲と一緒にできたら最高なんだろうけど、そんな光景、とても描けそうにない。


 玲香「きっと未咲は、練習したとしても続かないのよね……」


 そんな未来しか描けないわたしが、なんだか不甲斐ない。


 玲香「あぁっ、なんてわたしって……」


 ツイてない――そう言おうとしたけど、未咲のことを頭に浮かべると、そうも言えなくなる。


 玲香「わたしにとって、やっぱりあの子って――」


 必要。そう思うのに、さほど時間はかからなかった。


 玲香「続き、書こうかしら……」


 正直、深読みされると恥ずかしい。かなり恥ずかしい

 ただ、そうせざるを得ないほど、このときのわたしは狂っていたのかもしれない。


 玲香「よし、こんな感じかな」


 まずは未咲に見てもらう。それから先を考えよう。


 玲香「そういえば、うみとロコのふたりはどうしてあんなに急に……?」


 何かわけがあったに違いない。後日訊いてみることにしよう。

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