★★★ Excellent!!!
無惨に溺れ死ぬ虫も、枯れ果て歿った葉も。みんな循環している。 ミヤシタ桜
"生"と"死"という二つのテーマを取り扱ったこの作品。
この二つのテーマは、書きやすいと言えば書きやすい。
それは、多くの人が葛藤していく中で答えを導き出そうとするためだ。自分で考え抜いたものは、自分の体験となり、自分の体験となったものは文字に置き換えやすい。
しかし、実際文に起こしてみると少し軽く見えたり、陳腐に見てたりしてしまったり、いわゆる"痛く"見えてしまう。
そのためこの手のテーマのものは、慎重に書く必要がある。
そして、この作品はいま私が言ったポイントのようなものを完全にクリアしている。
軽くもなく、陳腐でもなく、"痛く"もなく。
ではなぜなのか?それは文の淡麗さや、言葉選び、リズム感、タイトル、全てが影響してくるだろう。
そしてなんといっても、生と死の関係を生々しく書いているところだろう。
虫や植物、そして人。命を持つすべての生物の無惨に死にゆく姿が、心を痛め付ける。その描写は、心を穿つ。
また、全部読み終わった時、タイトルがあることによってラストの印象もだいぶ変わっていく。
先ほども言ったが、文章、タイトル、言葉選び、リズム感。その全てが生と死という難しいテーマにマッチしている。
内容については、ネタバレしてしまうので言及はしない。けれど、最高でした。