第22話 岩場で岩と戦いました!

 俺は橋を架け終えると、イリアが倒した魔物たちを回収した。


 アーマーボアが一体に、ヘルアリゲーターが五体。今日の夜は、また肉三昧だ。


 それからイリアを馬に乗せ、俺は橋を渡った。


 揺れないか心配だったが、全く揺れない。

 これなら問題なさそうだ。


「本当に河の上に道が……ヨシュア様は、なんでも作れるのですね」

「いや、無理なもののほうが多いと思うよ」


 とはいえ、思いつく限りの道具や武具は作ってきた気がする。


「生産魔法じゃ作れないものもあるからな。植物とか動物とか、当たり前だけど」

「なるほど、確かにそれは難しそうですが……あ、ここから南東です」


 俺はイリアの指す南東へと馬を走らせる。


 するとすぐに、石が柱のように積まれた場所が見えた。


 イリアもその石柱群を指さす。


「あそこです!」

「あそこか……」


 パッと見た感じは、採石場というより古代の祭祀場か何かに見えるな。


 しかし到着すると、確かにそこは堅い石でできた岩場だった。

 所々、四角いくぼみもある。


 俺は馬を降りると、石柱のひとつに停めた。


 岩を切り取った跡が確かにあるな。

 岩場も平坦だし、誰かしらの手でここが整地されたのは間違いない。


「……イリアは、ここに来たことあるの?」」

「何度か。昔は、ここらへんに良く鹿がいたのです。ただ、最近はアーマーボアが現れ、鹿も現れず」

「なるほど……」


 見渡す限り、動物は見えない。

 見晴らしがいいので分かるが、アーマーボアが来る気配はなさそうだ。


「それじゃあ、試しに少し岩を掘ってみるか……」


 俺は岩に向け、手を向ける。


 掘削魔法……風魔法と火魔法を組み合わせた、石を切りだすのに適した魔法だ。


 追い追い鬼人たちにも石切りの技術は教えるとして、今日のところは岩の強度を確かめるため、少しだけ切り出してみるとしよう。


 そう思い、石に傷をつけようとした時だった。


 突如、地面が揺れだす。


「じ、地震!?」


 イリアは周囲を見渡した。


 だが違う。


 周囲の石が突如、この岩場の中央に集まり始めたのだ。


 その中央には、赤く光る岩が微かに見えた。


「こいつは……」


 石は集まると、巨大な人型へと変えた。


 脚は人間の背丈ほど……体長はその四倍はある。


「ゴーレム……」


 現れた岩の巨人は、ゴーレムという魔物だった。


 中央の核は人形石と呼ばれるもので、周囲の岩を集め、人型を形成する。


 すぐに危険を察知したのだろう。

 イリアは刀を抜いて、ゴーレムに走った。


「イリア、待て! そいつは簡単には倒せない!」


 俺の言葉が終わると同時に、イリアはゴーレムの脚を切断した。


 しかし、ゴーレムはお構いなしに、腕でイリアを叩き潰そうとする。


「っ!?」


 イリアは後ろへと跳び、攻撃を避けた。


 見ると、切断したはずのゴーレムの脚は、石が集まり元に戻っている。


 イリアは刀を向けながら呟く。


「斬撃が効かない……?」

「ああ。中央に赤黒く光る石があるだろう。あれを破壊しない限りは、永遠に石で身体を回復できる……おっと」


 俺はゴーレムが投げ飛ばした岩を避けた。


 岩は崩れることなく、後方へと転がっていく。


「なるほど、確かに頑丈な岩だな……イリア、俺が赤黒い石を露出させる。そしたら、その石を斬れるか?」

「かしこまりました!」

「よし……!」


 俺はゴーレムに向かって走った。


「よ、ヨシュア様、それはあまりにも!」

「大丈夫だ! こいつはむしろ、俺向きの相手だ!」


 その間にも、ゴーレムは俺に岩を連射していく。

 俺は避けもせず、ゴーレムに向かって走った。


「アブソーブ!」


 投げられた岩を、俺は正面から次々と吸収した。


 もちろん、いつ魔法工房の容量を超えるか分からない。

 吸収した岩は、すぐに外へと落としていく。


 そしてついにゴーレムの目前へと迫ると、俺は手を上げた。


 ゴーレムもまた、巨大な岩の手を俺に降り下げる。


「アブソーブ!」


 俺はゴーレムの腕を吸収した。

 もちろん、回収した岩の放出も行いながらだ。


 ゴーレムは当然、なくなった部分を補強しようと、岩を再び集めていく。


 だが、俺の吸収する速度のほうが速い。

 腕、肩、胸……そこまで吸収すると、赤黒い石が露わになった。


 一瞬だった。

 イリアは赤黒い石が見えた瞬間、即座にそれを切り落としたのだ。


 イリアが着地する。


 同時に、ゴーレムを構成していた岩は、がしゃんと音を立て崩れていくのだった。

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