★★★ Excellent!!! 八王子城。かつては熱い想いをもつ人たちがいた 神無月そぞろ 現在は八王子城跡として国史跡となっている八王子城。城は過去に戦場となり、大勢の命が失われたため悲劇の城として知られている―― 八王子城は心霊スポットして取り上げられるが、こちらの小説は違います。 悲劇が起こる前の城の様子から物語が始まり、その時代に生きた人たちの生きざまが描かれています。 紹介文に「史実の流れに沿ったフィクション」とありましたが、フィクションとは思えない臨場感のある文章のため、まるで映像を見ているように登場人物たちが動き回ります。 人が人を想い、そして想いのために行動する熱い姿が小説中にちりばめられていました。 悲劇のイメージしかなかった八王子城、小説を読んで見方が変わりました。ヒューマンドラマを楽しんでください。 レビューいいね! 1 2022年1月20日 20:13
★★★ Excellent!!! 古に思いを馳せる、悲劇の城を舞台とした、戦国青春怪奇譚 一視信乃 落城の際、女子供を含む多くの者たちが悲惨な最期を遂げ、地元では知らぬもののない心霊スポットにもなっている悲劇の城・八王子城。 こちらのお話では、そんなお城の在りし日の姿、人々の営みが、ありありと描かれていたので、読んでいて胸に迫るものがあり、このお城のことをもっと知りたい、もっと知って欲しいと思うようになりました。 これを書いている今日──2021年8月1日は、旧暦だと6月23日にあたり、八王子城が落城した日になります。 1590年のこの日、城で何があったのか。 物語内でも語られる惨劇の顛末を、ぜひご自身の目で確かめてみて下さい。 『紅蓮の石』というタイトルの意味も、そこでわかると思います。 また、八王子の刀工集団・下原鍛冶のことも描かれているので、刀剣好きな方にもオススメしたいです。 レビューいいね! 2 2021年8月1日 21:21
★★★ Excellent!!! 城落ちて夢破れた若者の待つや遠き八王子 泊瀬光延(はつせ こうえん) 読み終わってから一週間待った。それは私にとって頭のどこかで反芻し感想を醸造する手段である。この作者の手法は前から評価していたが、夢幻能の余韻を加えさらに深さが増してきた。 前に書いたかもしれないがこの作品をもって野呂 邦暢の「落城記」を引き合いに出すのは失礼かもしれないが、落城する前の城の状況を活写した2つの作品を賛美したいからに過ぎない。城割とそこに住み守る人々の高らかな営みを丹念に描き、守るものを持った中世の人間模様に感銘するのである。 レビューいいね! 2 2021年8月31日 22:13