第40話 テスト勉強
テスト初日を迎え、少し遅い時間に学校へ向かっていた。
歩きながらボーっとしていると、誰かがぴったりとくっつくように歩き始め、横を見ると奏介が並んで歩いていた。
胸の奥がキュンと締め付けられたせいで、『おはよ』の一言も出ないままに、黙ったまま歩いていたんだけど、奏介からも話しかけようとはしない。
ラインでは、次々とメッセージを送ってくるのに、直接顔を合わせると完全無視。
そんな態度を不思議に思いながらも、黙ったまま学校につき、テストを終えた放課後。
おじいちゃんの家に向かっていると、またしても誰かがぴったりとくっつくように歩きはじめ、ふと見ると奏介が歩いていた。
黙ったままおじいちゃんの家に行こうとすると、奏介が「勉強、教えて」と切り出し、思わず顔を見てしまったんだけど、奏介は少し寂しそうな表情を浮かべていた。
「あんま成績良くないよ?」
「俺よりはいいだろ? …ダメ?」
寂しそうな表情をしながら言われた『ダメ?』の一言に胸の奥がキュンっと締め付けられ、「…別にいいよ」と小声で返すのが精いっぱい。
奏介は私の返事を聞いた後、パァっと明るい表情をし、満面の笑みで「うち行こうぜ!!」と切り出してきた。
「家!? なんで!?」
「誰もいないし、うちの方が近いし。 …千歳の部屋でもいいけど」
「うちにしよう?」
不安になりながらもそう言うと、奏介は諦めたようにため息をついた後「んじゃ、飯食ったらそっち行くわ」と言い、自宅の方へ向かっていた。
おじいちゃんの家に着いた後、お昼を食べ、必要な教科書とノートだけを持って自宅に駆け出す。
自宅に戻り、自室で勉強の準備をしていると、下から父さんの声が聞こえ、キッチンに行くと、父さんが遅めのお昼を食べながら奏介と話していた。
『勉強は?』って思ったんだけど、父さんと奏介はトレーニングの話で盛り上がり、奏介は「ストレッチかぁ… 俺、体固いんすよねぇ」と苦笑いを浮かべていた。
「これからテスト勉強するんだろ? 勉強に疲れたらストレッチしろよ。 千歳、手伝ってやれ」
「ふぁ~い」と気のない返事をすると、父さんは気合十分といった感じでジムに戻り、母さんはパートに出かけていた。
奏介と私の部屋に入り、勉強をしていたんだけど、奏介は英語が苦手なようで、頭を抱え悪戦苦闘するばかり。
なるべく丁寧に教えようとしていたんだけど、奏介は苦手意識があるせいか、まったくと言っていいほど覚えられず、頭を抱えるばかりだった。
悪戦苦闘する姿を見て「休憩する?」と切り出すと、奏介は「いや、もうちょいやる」と言ってきかず。
しばらくすると、カズ兄が部屋に入り「オーナーが差し入れだってよ~。 昨日の売れ残りだけど」と言いながら、紅茶とケーキを持ってきてくれた。
お礼を言いながらそれを受け取ると、カズ兄は頭を抱える奏介を見て「無い頭に一気に詰め込もうとしたって無理なんだから、のんびりやれよ」と笑いながら言い、ゆっくりと部屋を後にしていた。
紅茶を飲みながらケーキを食べていると、突然奏介は私の手首をつかみ、フォークに刺さったケーキをパクっと口の中へ。
「自分の食べなよ」と言ったんだけど、奏介は何の反応もしないまま、教科書を眺めていた。
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