第22話 しつけ

 

 まったく、たかがランクCのモンスターにダメージを与えれないのに、僕は天使に喧嘩を売っただなんて。今思えば、笑えてくるよ……

 そんなことを考えながら、ケルベロスの注意を引いていると、急にビエルが大声をあげた。


 「アシエル !!ごめん!逃げて!!」


 「へ!?」


 僕は、焦りながら必死に逃げようとしたが、とてもつもない爆風に巻き込まれ、吹き飛ばされてしまった。


 「グハッ。イテテ、一体何があったんだよ」


 周りを見渡すも、爆風のせいで砂埃が舞い何も見えない。

 すると、何かがこちらに走ってくる音がした。僕は、急いで銃口を向けると、砂だらけになったビエルだった。

 

 「ゴホッゴホッ。おい!僕だよ!」


 「良かったビエルか、安心したよ。一体、何が起きたの?」


 「アハハ。実は、魔法のコントロールができなくなって、暴発しちゃったんだよ」


 「アハハ、全然笑えないよ。それより、ケルベロスはどうなったの」


 「さぁ、僕も見てなくて。でも、もう少しで砂埃も落ち着くよ」


 ビエルの言うように徐々に砂埃が落ち着いてきた。目を凝らしていると、大きな影がうっすらと見えてきた。


 「アハハ、嘘でしょ」


 僕達の目の前には、無傷のケルベロスがいた。


 「アシエル 、このケルベロスはおかしいよ。強ずぎる、Cランクどころじゃないよ。どうしよう」


 「とりあえず、逃げようか」


 僕達は、ゆっくりとお辞儀をして急いで逃げた。今回は、ビエルを抱えているわけではないので安心して逃げれると思った。しかしケルベロスは、急に動きだし僕達を全力で追ってきた。


 「きてる!きてるよ!どうするんだアシエル !何とかしておくれよ!!」


 「僕に言われても困るよ!!そういえば、何で僕の魔法は、ただ立ち尽くして見ていたんだろう」


 「今そんなこと考えてる場合じゃ、キャ!」


 ビエルは、こんな状況でつまづいてしまった。もちろんケルベロスも全力で走ってきてる。考えるんだ、何でケルベロスは僕の攻撃を防ごうともしなかったんだ……もしかして!!

 僕は、銃をホルスターにしまい、追いかけて来るケルベロスに向け、右手をかざした。もちろん自殺行為だ、でもこれにかけるしかない……


 「ビエル、僕を信じて!」


 「な、何をする気なんだ!」


 「ケルベロス!! 天使の怒りエンジェル・フロレム


 この魔法は、僕が天使の時に使うことができていた魔法だ。もちろん、人間の体で唱える事はできない。大事なのは、この言葉だ。


 「キャイン!!」


 情けない犬の鳴き声が森に響き渡り。急に止まったのか辺りに砂埃が舞う。


 「ゴホッ、ケルベロスのせいでまた砂埃だよ。君は、一体何をしたんだい」


 「まぁ、見ててよ。多分びっくりするよ」


 砂埃が落ち着くと、僕らの前に体を丸めるように身を守っているケルベロスがいた。


 「へ?何してるのケルベロスは」


 「多分だけど。このケルベロス、地下であった天使に飼われていたんだと思うよ。あんなに僕の魔法には無反応だったのに、僕が過去にこの魔法を唱えようとしたときは、必死に身を守っていたでしょ」


 「あぁ!思い出したよ!すごいかっこいい事言って不発した時の魔法だ!」


 「そこまで思い出さなくてもいいけど。その時の魔法は、天使が使うことができる魔法なんだよ。だから、あの時のケルベロスは、大声をあげた僕に驚いたんじゃなくて、この魔法を恐れていたんじゃないかと思ってさ」


 「なるほど……それでこの情けない姿になっているのか」


 「そお言うことだね。でもどうする、このケルベロス。こんなに怯えている姿を見ちゃうと、少し気がひけるとゆうか」

 

 「うむ……ちょっと試してみるか」


 ビエルは、ケルベロスにゆっくりと近づいていく。


 「グルル……グァウ!」


 ケルベロスは起き上がり、近づいてきたビエルに噛みつこうとしてきたが……


 「天使の怒りエンジェル・フロレム!!」


 「キャイン!クーン……」


 ビエルが、魔法を唱えるとまた身を守り始めた。情けない、なんて情けない犬なんだ。こんなに強いのに、たった一言発するだけで、犬以下になってしまうなんて。よっぽどあの天使に、ひどいことをされていたんだな。段々可愛そうに思えてきた。


 「おい!アシエル 。この犬、僕たちが飼おう」


 「は!?何言ってるんだよビエル!飼うだって!?そいつはケルベロスだよ、いつかこの魔法も使えないってバレてしまうんだぞ」


 「それは大丈夫だよ……僕がこの魔法より怖いって、しっかり調教するからさ。何か文句ある?」


 「いえ、文句なんてありません。素晴らしい案だと思って感激しております」


 ビエルの目は据わっていた。あぁご武運を、ケルベロスよ。でも君が悪いんだ、そもそも君が、ビエルの背中を傷物にしたことがいけないんだ。僕は何も悪くない、そう悪くないんだ。


 こうして、ケルベロスの調教が始まった。もちろんそんな簡単にいくわけがなく、最初は何度も反抗していた。

 ……あれから、どれくらいの時間が立ったんだろう……5時間ぐらいかな。僕の目の前には、仲良く戯れるビエルとケルベロスがいた。


 

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