第21話 再戦
僕達は、さらに一日休暇をとり、ようやくケルベロスを討伐しに行くことになった。ここまで、いろいろなことがありすぎて、すっかり本題を忘れてしまっていた。
ビエルはやる気十分!と言わんばかりに、ウズウズしている。
「おい!早く行くぞ!僕は天使のことがあって、不完全燃焼なんだ!」
「分かったよ、今行くから。それで、ネウスさんは本当に行かなくていいんです?」
実は、ネウスは前日にケルベロスの討伐を断ってきたんだ。本人が言うには、前回の怪我がまだ癒えてないらしい。でも、僕は知っている……本人は隠して言わないが、彼の半身は軽度の麻痺を抱えているんだ。だからいつも、戦闘になると彼は先を読んで、僕らのサポートをしている。しかし、今回の相手はケルベロス。きっと、足手纏いになると思ってしまっているんだ。説得をしようとしたが、傷が癒えていないと言われてしまえば、僕らも何も言えなくなってしまう。もちろん、怪我が治るまで待つと言ったが、ネウスは『今のお二人ならきっと、ケルベロスが相手でも大丈夫ですよ』と言われ、断られてしまい今に至る。
「はい、私はお二人を信じてお待ちしておりますよ。ただアシエル 殿、私が昨日言った事は忘れないでください。勝てないと分かれば、ビエルを抱いてでも逃げてくるんですよ」
「はい、分かっています。必ず彼女は僕が守ります」
「頼みましたよ」
こうして僕と、ビエルの2人でケルベロスを討伐しに森へ行くことになった。
「なぁ、ビエル。なんでネウスは、あんなに行くのを嫌がるのかな?」
「そんなこと、僕に言われてもわかんないよ。こんな事は、初めてだから。きっと何か理由があるんだよ、意味の無いことをするような人じゃないから」
「そうだよね……それなら、ネウスのためにも頑張ってケルビロスを討伐しよう!」
「おぉアシエル 〜。君も少しは成長したじゃないか。前はもっとウジウジしてたのにな」
「ビエル、いちいち茶化さないでよ」
「アハハ。分かった分かった、じゃあケルベロスを探すとするか」
「どこかに目星でもあるの?」
「そうだな〜、ケルベロスは耳がいいから、大きな音がするとそこにやってくることがあるんだ。だから君がお取りになれ」
「ヘァ?な、何を言っているのかなビエルさん」
「ん?そのまんまだよ。君が、そのうるさい武器で音を出して。その音に、寄ってきたケルベロスを僕が打ち抜くってことだよ」
「アハハ……なるほどね。でも。あのケルベロスを一矢で倒せるのかな?」
「それは心配しなくてもいいぞ!時間はかかるがとっておきのがあるんだ!楽しみにしてて」
「あ……はい」
こうして僕達は、ケルベロス誘き出し作戦を開始した。本当はやりたくないけどね……
「ビエル〜。準備はいいかい」
ビエルは、木の上に登り息を潜めていた。あそこから、ケルベロスを打つ気だ。
「うん!いつでも大丈夫だよ〜」
「なら行くよ!
僕は、上空に向けて数発撃った。森は、急にざわつき始めた。
さぁ、寄って来るかな。僕は、銃を構え周囲を警戒した。
数分後、森の奥から地面を掘るような音が聞こえて来る。少しずつ大きく、ザク……ザク……と音を立てて。
「ビエル!ケルベロスが来るよ!」
「オッケー、わかったよ!最初は君が引き付けてくれ」
僕は、足音が聞こえて来る森に銃口を構えた。
「久しぶりだね、ケルベロスよ」
僕の目の前には、頭が3つある大きな犬が鼻息を荒らしながら出てきた。
僕はビエルに言われた通りに、ケルベロスを引き付ける為、ひたすら撃ち続けた。しかし……
「くっそ、全然効かないじゃ無いか! なんだってゆうんだよ、ただ頭が3つある犬じゃ無いか。それがなんでこんなに強いんだよーー」
ケルベロスは、嘲笑うかのように僕を見つめ、動じることなく打たれ続けている。ようは、全く効いてないってことだ。
さぁて、どうしたものか。どうすれば気を引くことができるかな……あ、気ひけてるじゃん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます