第20話 守る者 守られた者


 目覚めるとベットの上にいた。僕の両足はすでに治って動けるようになっていた。

 そんなに長く寝てしまっていたのか。


 目を開くと、僕の顔を覗き込むように見ている少女がいた。

 

 「おぉ!アシエル 起きたか!なかなか目を覚さないから、心配したんだぞ!」


 目の前には、いつも通りのビエルがいた。それが無性に嬉しくなり、彼女を抱き寄せてしまった。


 「お、おい君〜。流石にこの場は僕でもまずいと思うぞ」


 ビエルに言われ周りを見渡すと、青筋が浮かんでいるネウスに、洞窟で救ってくれた男たちがいた。

 確か名前は、フォルトとリータスだ。


 「ビエルの言う通りだぞ。恩人の俺らを無視して、いきなりおっぱじめようとするとはな。教育がなってないな、ネウス」


 「心配しないでください、フォルトさん。あとできっちり教育しますので」


 「ならいいが。お前が、兄貴が言っていたキマイラ殺しのアシエル だな」


 「な、なんですかその異名!僕は殺してないですよ!あ、すみません。洞窟でのことは、本当にありがとうございました」


 「キマイラは死んだそうだぞ、お前がつけた傷のせいで。それに、礼もわざわざ言わなくていいぞ。あの天使は、俺らの討伐対象だったんだ。まぁ、お前らランクDのハンターには、荷が重すぎる相手だ」


 「すみません、何言ってるのかわかりません」


 「んぁ?だから元々俺らが、討伐するはずの天使だったんだよ。お前らが運悪く、出くわしちまっただけなんだ」


 え?キマイラさん死んじゃったの?あれって、お偉いさんのペットじゃなかったっけ。


 「何故、キマイラが死んでいるんですか」


 「おま!話止まってんじゃねーか!その後の話、聞いてねーだろ!まぁ、キマイラは元々かなりの年だったんだよ。そこにお前が、ご高齢の体ボコボコにして寿命が早く着きたってことだ」


 な、なんてことだ……だからあまり強くなかったのか。ごめんよキマイラさん。


 「それで、キマイラ殺しですか……」


 「おい、こいつの頭の中、キマイラしかいねーな。まぁいい。お前らからこいつに、後で説明してやってくれ。俺らは、これからクストスに戻るからな。行くぞ、リータス」


 「はーい。君たちもお大事にね。後、僕の魔法で治癒を早めたから、当分は体がうまく動かないと思うよ。でも、しっかり睡眠を取ればすぐに元気になるからね。バイバ〜イ」


 2人は、用件が済んだのかすぐに帰っていった。


 「な〜ビエル。彼らは一体何者なの?天使を一瞬で殺していたけど」


 「そうか、君は知らないだろうね。彼らが、クストスに10人しかいない、ランクAのハンターだよ。」


 「な!ランクAなの!?だからあんなに強いのか……」


 「そういえば、彼らに聞いたよ。君が自分を犠牲にしてまで、必死に守ろうとしていたこと」


 「それでも君を守れていたか……」


 何が、彼女は僕が守るだ。何が、人類の守護者、天使だ。自分の命を投げ出しても、誰1人救えないなんて……。よっぽど、あの2人の方が人類の守護者だよ。僕に価値なんてあるのかな……

 僕がクヨクヨしていると、ビエルにとても強い平手打ちをされた。  


 「アシエル !君が、今何を考えているか分かっているぞ!君の過去に、何があったかはわからない。でも、今君は人間なんだよ?どんなに素質があっても、すぐに強くなれるわけじゃないんだ。素質のある彼らだって、何年も弛まぬ努力をして今があるんだよ。そんな彼らと自分を比べたところで、勝てるわけがないじゃないか!そんなに悔しかったら、努力をしろ!僕達を守りたいなら、彼らに負けないぐらい強くなれ!そして約束しろ、2度と自分の命を犠牲にしてまで、僕を助けようとするな!そんな方法で守られたって、僕は嬉しくないんだよ……」


 ビエルは泣きながら僕の体を抱きしめた。彼女の手は小刻みに震えていた。


 「本当にごめん……」  


 「そうですよ、アシエル 殿。誰かを守ると決めたのなら命をかけて守り、そして絶対に死んではいけませんぞ。あなたが死んでしまっては、その後誰が守ってくれるんです。どんなに無様な生き方をしたって、大いに結構ではないですか。大切な人を守ることができるのなら」




 僕は、守ると言う意味を履き違えてたみたいだ。彼らのおかげで、守ると言う本当の意味を理解できた気がした。

 昔、ザフキエル様にも言われたっけな。『人間は死者を弔うが、本当に弔うべきは、生きて残された人間達だ。死者の悲しみよりも、残されたもの達の悲しみの方が強いからな』昔は、この意味が理解ができなかった。でも、今は理解することができるよ。もっと、ザフキエル様の話を聞いておくんだったよ……

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