第16話 絆


 その後も、星を見ながらビエルとたわいもない話をした。なんと、驚く事に彼女はまだ17歳だった。とても落ち着いているから、20後半だと思っていたことを笑いながら伝えると、笑顔で平手を頂いた。女性の歳に触れるときは、とりあえず20代と答えるのが良いらしい。そういえば、僕は一体何歳なんだろう。天使の時は寿命がないため、数えることができないぐらい歳をとっているが。今は人間で、寿命もあるから無視できる問題ではない。


 「そうだな〜。君は顔もまだ若いし、僕と一緒で17歳!生まれた日がないと不便だから、誕生日を決めてあげるよ!そうだな〜。君は天使だから、10月4日生まれね。はい、決まり!」


 「アハハ、そうすると今日は8月10日だから後1ヶ月半か……僕、誕生日なんてなかったから不思議な感覚がします。こうやって、残りの日々を数えたこともなかったので」


 「ふ〜ん。なんか、天使ってつまんないね。何を楽しみに、毎日を過ごしていたんだい?」


 「ん〜、何を……僕は監視者だったから、毎日人間の発展を見守っていたよ。まぁ、確かにつまらないから、サボってばっかだったけどね」


 「天使なのに、頼りない理由が分かった気がする」


 「ちょっとビエルさん!また毒が漏れていますよ」


 「あ、そうだ僕のことはビエルでいいよ。歳も一緒なんだからさ!後、その敬語も直さないとね。仲間なんだからさ、もっとリラックスしておくれよ」


 「あ、うん……分かったよビエル」


 とても不思議な感覚がした。たった、これだけのことなのに、ビエルとの距離が近づいた気がした。また、鼓動が早い。でも、この苦しさがとても心地がいい。


 「さぁ、行こうか。ネウスも、心配しているといけないからさ」


 「うん、そうだね」



 宿に戻ると、青筋が浮き出たネウスがいた。これはただ事ではない、モンスターとの戦闘でも冷静な彼がここまで怒りに燃えているなんて。


 「アシエル 殿お早いお戻りで。して、その頬はなぜ赤いのですか」


 「え?結構、遅くなったと思ったんだけどな。これはビエルにされたんですよ、モンスターじゃないので安心してください」


 「ビエルだと……この数時間で、一体何があったんです?」


 「実は……アシエル に押し倒されて……」


 「ブチッ……このクソガキが!!ただ、探しに行って何をさらしてくれとるんじゃ!水牢ウォーターカルチアム


 「へ?ちょっとそれ死ぬ魔法!!ビエルも何言い出しているんだよ!」


 「アハハ!君が奪ったんだ!責任とってもらうよ」


 「奪っただと……貴様の命を奪ってやるアシエル よ!水槍アクア・ハスタ


 水槍ーー アクア・ハスタ  凝縮した水を、一気に対象に向けて撃つ魔法で、ランクは3である。ネウスが使える攻撃魔法の中で、一番威力があり仲間に向けて撃つ魔法ではない。


 「新技ーーーーー!!」


 こうして僕は、ネウスから2時間も逃げ回る事になった。僕をこんな目に合わせた張本人は、お腹を抱え笑っているだけだった。ビエルに近づきすぎると、危険なことが分かった……人型のライカンよりも。


 「すまんのアシエル 殿、私はてっきり」


 「もうそれ以上言わないでください。ちゃんと、分かっていますから。これもすべて、悪いのはビエルです」


 「まぁまぁ、いいじゃないか。僕はとても楽しかったぞ。さぁ!ではケルベロスを討伐しに行くぞ!」


 「おー」


 「なんだその気の抜けた返事は!もっと元気よく、おーー!!」


 「おーー!!」


 ハハ、こんな調子でケルベロスを倒せるのかな。

 僕たちはデピュタから更に西へ歩みを進めた。1時間ほど歩くと小さな洞窟の入り口を見つけた。


 「な〜な〜ネウス。この洞窟は、前回の時はなかったよな〜」


 「そうですな。以前も、この辺りはくまなく探索しましたからね」


 「む〜、とりあえず入ってみるか。アシエル 、洞窟の中はモンスターの住処になっていることが多いから、気をつけるんだぞ。ライカンの時みたい、に武器を手放せば命を失うこともあるからな」


 「うん……分かったよ」


 僕は、とても入りたく無い。僕たち天使は、基本的に洞窟には入らない。なぜなら、建物なら見通せるが地下や洞窟は見通すことができないからだ。だが今は人間で、これもハンターの仕事だ。僕は震える足を手で押さえ洞窟に入る決意をした。


 「だいぶ、暗くなってきたね、照火イルミノ・イグニス


 照火ーー イルミノ・イグニス  道を照らすことができる火でランクは1だ。この魔法はほとんどエネルギーを使うことがなく、中断魔法(プロベーレ)を唱えるか使用者が不能になるまで燃え続ける。


 ビエルが魔法を唱えると、小さな火の玉はふわふわと上昇し、2m程の高さを維持しながらビエルを追いかけるようについて行ってる。


 「なんか妖精みたいな魔法だね。僕にも使えるかな」


 「うん!きっと、使えると思うよ簡単な魔法だし。ここを出たら教えてあげるね」


 「ありがとう!なら早く探索して、こんなとこすぐ出よう。ジメジメして気持ち悪いし、何やら唸り声も聞こえるし」


 「アシエル 殿、洞窟は苦手ですか?」


 「はい、あまり狭いとこは……」


 「そうでしたか。ですが、ここを抜けて奥まで行けば、少しは洞窟も好きになると思いますよ」


 「あ!ネウス、それ以上は言ったらダメだぞ!」


 「え、一体何があるんだよ!」


 ビエルがすごく笑顔だ……嫌な予感がする。僕はまた血をみる事になるのか。

 

 



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