第15話 天使の告白
日が沈んできた、夜道は危険なためボクらは夜営をすることにした。場所は、いつも感が鋭いビエルが決めてくれる。
「もう日が暮れてきたし、今日はここで夜営を使用しよっか」
ビエルが指差した場所は、人が3人入るスペースしかない、瓦礫の洞窟だった。
ボクらが、その洞窟へ入るとネウスが魔法を唱え始めた。
「そうですな
水家ーー アクア・ドムス 対象の周りに、薄い水の膜を貼る魔法で、ランクは1だ。防御力はないが、光を屈折させる事により外からは認識できなくなる。
ネウスの魔法が、円を描くように僕たちを囲んでいく。
とても綺麗な魔法で、徐々に外の景色が見えなくなり、水しか目視できなくなっていた。
僕が、ネウスの魔法に感動していると、ビエルがどっこいしょと、言わんばかりの勢いで座った。
「ふぅ〜疲れた〜。そういえば君、武器は大丈夫だった?ライカンに結構飛ばされていたけど」
「はい、なんとか。グリップに掻き傷ができた程度で使う分には支障はありません」
「それは良かったですな。武器を無くせば我々人間はモンスターに無力です。力は使えどコントロールすることはできないでしょうな」
「それで武器を持たずに魔法を使っている人がいないんですね」
「そうだぞ、アシエル!それでどんな時でも対応できるように、武器は2種類持っているんだ」
「私は、サポートがメインですので、2つ武器は持ってはいません。まぁ私からしたら、ビエルが武器のようなものですね。ですので、もしビエルが負傷すれば、私は武器を持っていないも同じになってしまいます。なので、アシエル 殿がいてとても安心していますよ。ビエル1人ですと、勝手にどっかに行ってしまうので……」
ネウスは、話を聞かずに寝てしまったビエルを、子供を見るように見ている。
僕は、ネウスとたわいも無い会話をして、次の日を迎えた。
「ウッ!!」
僕が寝ていると、急に腹部に重さを感じた。目を開けると、笑顔のビエルが乗っていた。
「さぁ!起きるんだアシエル !いつまでも寝てないで早く出発するぞ!」
「ふぁ〜ビエルさん、おはようございます」
「おはよう!さぁさぁ!早く起きるんだ!」
ネウスも、もうすでに準備ができてる。僕は、結構寝てしまっていたみたいだ。
「おはようございます、アシエル 殿。昨日は、よく寝られていましたね」
「はい、昨日の疲れが溜まっていたみたいです」
僕がナヨナヨしてると、ビエルに頭を指先で押された。
「君〜。そんなんじゃケルベロスには勝てないぞ!ま、今日からは僕たちも一緒に戦うよ。そろそろ連携しながら戦うトレーニングをしよっか」
「ほんとですか!?わかりました!!」
次の日も僕たちは、デピュタへ向かうために西へ歩みを進めていく。
8時間ほど歩くと、僕は3人の死骸が落ちているのを見つける。
「こ、これは……」
ビエルも遺体に気づき、近寄っていく。
「これは、他のハンター達の死骸だ。だけど、こんな切り口は見たことがないよ。とりあえず、このままだとかわいそうだから弔ってあげようか。
聖火ーー サンク・イグニス 別名弔いの火とも呼ばれる魔法で、対象者をゆっくりと燃やす。
ビエルが魔法を唱えると、綺麗な青の炎が遺体を包んでいく。
「とても綺麗な魔法ですね、きっと彼らの魂も救われると思いますよ」
「どうかな……君は、人や生き物が死ぬとどこにいくと思う?人間を見放した天使達のとこ?それとも、行き場がなくなり地獄へ落ちるの?本当に死んで魂になれば、救われるのかな……」
「それは……」
「アハハ、ごめんね変なこと言って。もうすぐでデピュタに着くから、気持ちを切り替えて進もうか!」
僕は理解していなかった、天使が敵になったことを……彼ら人間の魂は一体どこへ向かうのか。
みんなが無言で歩いていると、小さなまちが見えてきた。この世界に来てからまだ10日かしか立っていないのに懐かしく感じる。
「ようやく着いたな!アシエルに、ネウスも元気がないぞ、もう疲れちゃったの?僕は武器の整備をしてくるから2人は先に宿で休んでて」
「あ、はい。わかりました」
ビエルの空元気を見るのはとても辛い。言葉をかけたいけど、僕は憎き天使だったんだ……一体何を言えばいい。
僕らが宿に着いて1時間程たったが、まだビエルは戻ってこない。もう外は、日が沈んできてるのに何をしているんだろう……
「アシエル 殿、申し訳ないのですがビエルを探しに行ってはもらえないだろうか。きっとどこかで座り込んでいると思うので」
「僕がですか……僕に何かできるとは思わないですが……」
「大丈夫ですよ、きっとビエルも話したいことがあると思いますので。さぁ早く行かないとまた1人でどこかに行ってしまいますよ」
「わかりました……」
僕はビエルを探しに街を歩いていると、夕陽に照らされオレンジ色になった川の木蔭に、ビエルが座っているのを見つけた。
「ようやく見つけたよビエルさん、もうすぐ夕食ですよ?」
「君か、ネウスに探して来いって言われたんでしょ?」
「アハハ、バレちゃいました?」
「そりゃわかるさ、もう何年も一緒にいるんだから。ネウスはね、僕の街や家族が天使に吹き飛ばされた時に、助けてくれたんだ。他人の僕を必死に抱き抱えて、天使の魔法から守ってくれたんだよ。でもその時に追った怪我のせいで身体に麻痺が残ってしまってね」
「もしかして、武器が持てないっていうのは」
「そう、その傷が原因なんだ。本来は、ハンターになることなんてできないのに。僕が復讐をするためにハンターになると、ネウスも必死に傷を隠しながらハンターになったんだよ。だから僕は、毎日怖くて仕方ないんだ。いつか彼は、僕のせいで死んでしまうんじゃないかって。誰かの死を見ると、ネウスの死が重なるんだ……それが怖くて、いつも彼から逃げ出してしまうんだ」
「……」
「ごめんね、こんなこと君に言っても仕方ないのにね」
「ビエルさん……僕と初めて会ったときのこと覚えていますか?」
「僕は、天使なんだ〜て言ってた時のことでしょ。忘れるわけないじゃないか」
「そう……それです……。あのね……僕は本当に、天使なんです。ただ、僕が天使だったのは今から600年も前で、気付いたらこの世界で人間になっていました。そこでビエルさん達と会い、この世界の事を学びました。そして、僕たち天使がした誤ちも知りました。だから、なんで今こんなことを打ち明けたのかはわからない……言えば一緒にいることができなくなるのは、わかっているのに。でも、ビエルさんに嘘をついたまま一緒にいるのは、とても辛くて……同じ憎き天使なのに。」
「アハハ。そんなこと、すぐにわかっていたさ。君は異質だし、何より嘘がつくのが下手だったからね。君は、僕が知っている天使とは違う。人間だって一緒さ、良い人もいれば悪い人もいる。すべてを一緒だとは思っていないよ。だから僕は、君のことを恨んだりはしていないよ」
僕はなぜか、涙が止まらなかった。彼女を励ましに来たはずなのに、いつの間にか彼女に救われていた。こんなに非力で、彼女を守ることすらできない天使なのに。
「僕がケルベロスに襲われた時、君が言ったこと覚えている?」
「え?僕が言ったことですか」
「そう、君が言ったことだよ。僕が傷つき、君を逃がそうとした時さ」
「……君は、僕が必ず守ってみせる」
「ちゃんと覚えていたんだね。なら守っておくれよ、これからも僕のことを……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます