第14話 経験


 なぜ3匹もライカンがいるんだ……またやられた。消炭すらないわけだ、倒したと見せかけて僕の方に誘導していたんだ。さすがだよ本当に、全く気がつかなかった。


 「頑張って〜アシエル 。期待しているぞ〜〜」


 いつもこうだよ、でもこれも強くなるためだ!そういえばこのライカン達いつも変身しないけどできないのか?

 あぁ今のはダメだ、これはよくある伏線てやつだ。ほらみろライカン達の体がゴリゴリしながら人型に変わってるじゃないか。気持ち悪いし、なんか体積も違う。明らかに大きくなっている。


 「君〜手伝おうか〜。ライカン達は興奮状態が続くと変身しちゃうんだよ。言ってなかったけ?」


 「聞いてませんよ、そんな大事なこと!!もしかして……強くなったりしないですよね?」


 「うん〜そうだね。ランクEからDに上がるって感じかな?」


 ランクまで上がるんかい!しかもDって僕のランクより高いじゃないか。うらやましいよ、そんな簡単にランクが上がって。でもこれも強くなるためだ!!ランクがなんだ僕はあのキマイラを倒したんだぞ!


 「とりあえず、僕に任してください!キマイラも倒せたんです、大丈夫ですよ!」


 「おぉ、かっこいいじゃないか。なら僕たちは見ているね」


 さぁ人型になってどれだけ強くなったのか……

 僕が人型になったライカン達を観察していると、1匹のライカンが急に突っ込んできた。流石に魔法を打つ準備をしていなかったので上に飛び避けた。しかし、もう1匹のライカンが僕の方へ飛び、右腕を振り下ろしてきた!すぐさま右手の銃をホルスターにしまい、佩剣で防ぐも後方に飛ばされてしまった。

 スピードにそこまで変化わないが、人型になった事により両腕が空き、そして考えて行動している。

 これはまずい。いつもあまり動かないし、警戒ばっかしているから、そこまで強敵じゃなかったけど、まさか人型になってここまで強くなるとは。これがランクDのモンスターか……飼い慣らされたキマイラさんより全然強い。


 「アハハ、君〜大丈夫〜?すごい、かっこいいこと言ってたのに、台無しだね」


 「毒!ビエラさん毒が漏れていますよ!!ちょっと、油断していただけですよ」

 

 まぁ、油断していたのは嘘じゃない。でもそれ以上に、統率が取れるだけでここまで劇的に変化するとは……

 すぐさま僕は、銃にエネルギーを込めていく。キマイラさんを倒した魔法で、広範囲に発動すれば連携はされないはず。しかしライカン達は見逃してはくれず、2匹のライカンが同時に走ってきた。

 これじゃあ、とてもじゃないけど発動することができない。何か考えなければ……


 「君〜せっかく二丁あるんだ、エネルギーを貯める方と牽制する方で分ければいいじゃないか」


 「そ、そんなことができるんですか!?」


 「さぁ〜?僕は使わないからわかんないよ〜」


 いや、でもこの方法は使える!なんで今まで気が付かなかったんだ。2丁あるから同時に使わないといけないと勝手に認識してしまっていた。それなら……


 「炎弾フラマ・バレット


 僕は左手の銃で2匹に、交互に打ち続けた。ライカン達には、あたらなかったが足止めはすることができた。

これで時間を稼ぐことができる。

 僕は右手の銃にエネルギーを貯めていく、もちろんその間も2匹のライカンへの威嚇射撃は怠らない。

 よし!いつもより時間がかかってしまったがこれで発動することができる。


 「雨音サナ・ブルビアム


 まずは右だ。1匹のライカンに、銃口を向け打ち続けた。ライカンは、避け切ることができず地面に血溜まりができていた。次は……!左にいたライカンがいない、一体どこへ。

 僕がライカンを探していると上空から影が、そして右手に持っている銃目掛けて腕を振り下ろしてきた。


 「チッしまった銃を狙ってきたか」


 僕の持っていた銃は、すぐに取りに行けないとこまで飛ばされてしまった。


 「あちゃ〜途中までは良かったんだけどね」


 「ビエル殿、そろそろ手助けをしてあげてはどうですか?」


 「ん〜そうだなぁ。アシエル〜手助けは必要かい?」 


 「いえ!必要ありません!!」


 「あぁ〜意固地になってるよ」


 あと少しだったのに、また油断してしまった。銃が1丁に、まだ使いこなせない佩剣。そしてライカンはまだ2匹。かなり厳しい状況だ。

 ライカン達もこの状況を見逃すはずもなく、また2匹同時に走ってきた。


 「く、そりゃ見逃すはずないよね炎弾フラマ・バレット


 左のライカンに向けて撃ち続けた、もちろん簡単に当たるはずがなく、ライカンを足止めできる程度だ。そして、右から来ていたライカンはもう目の前にいた。


 「は、早すぎるでしょ!クッこうなれば剣に纏えゲレ・グラディオ


 僕は佩剣に火の属性を纏わせ、ライカンが振り下ろしてきた右手をギリギリ止め、切断することができた。しかしライカンもこのチャンスを逃すまいと、すぐに左手を振り下ろそうとしてきた。


 「ハァ……ハァ……。こんなに近ければ素早くても関係ないよね炎弾フラマ・バレット


 僕は、ライカンの顔目掛けて何発も撃ち続けた。距離が近かったためか、顎から上が吹き飛ばされ燃えていた。もちろん生きているはずがなく、地面に平伏し痙攣していた。

 その光景を見ていた最後のライカンが、恐怖を感じたのか急いで逃げていった。


 「ハァ…ハァ…危なかった、死ぬかと思った」


 「よくやったよ〜、時々危うかったけどね。君は属性も多く持っていて、威力もある方だ。でも圧倒的に経験が足りなすぎるんだよ。だからこの経験はとても大きかったと思うよ」


 「ハハ、油断ばっかしていましたもんね」


 「本当にドキドキしながら見ていたよ、だから頑張ったご褒美だ」


 ビエルはそういって僕の頬に優しくキスをした。


 「エヘヘ!さぁ座ってないで早くいくぞ!」


 「ん〜青春ですな。さぁアシエル 殿、早く行かないと置いてかれてしまいますぞ」


 ビエルは夕日に頬を染め、笑顔で走っている。

 僕は初めての経験だった。こんなにも早く心臓は鼓動しているのに苦しくないなんて……

 

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