第10話 新しい武器

 

 まず初めに言っておこう。僕は元々監視者の下級天使で、本来、戦闘することなく、ただ世界を傍観しているだけだ。過去に、人間を相手にした時は、圧倒的な力で無傷で勝った。しかし、それは僕が天使で相手が間抜けな人間だったからだ。だが、僕は人間でましてや相手にしているのは、モンスターと呼ばれている魔獣達だ。ま、結果はどうなるか、言わなくてもわかるよね。


 クタクタになり、地に寝そべっている僕にビエルが近づいてきた。


 「君〜、大丈夫〜?せっかくの防具も、ボロボロだよ」


 「はぁ……はぁ……。さすがに、1人じゃきついです。しかも、まさか全力で身体を動くことが、こんなにもきついものだとわ……」


 「ビエルよ、さすがに厳しすぎるんでわ?」


 「何言ってるのネウス!このままだと、試験に合格するのは難しいよ!」


 「そうですが、この武器自体、合わないのでわ?」


 「そ、それは僕も思う……。よし!少し道が逸れるけど、今からカストラに行こう。あそこなら、合う武器が見つかるはずだよ」



 こうして僕たちは、今いるところから南下し、カストラへ向かった。もちろん、向かいながらもスパルタは続いた。僕のゴテゴテだった防具は原型を留めていなかった。


 数時間歩くと、なにやら大きな工房の形をした街に着いた。

 ビエルは、満面の笑みで僕の方に振り向いた。


 「さぁ〜着いたよ。ここが、カストラ!武器の街さ見ているとワクワクしてくるでしょ」


 ビエルの言うように男心が燻られる。どこを見渡しても工房しか無くて、店の前にはありとあらゆる武器と、防具が並べられていた。


 「さぁ、好きな武器を選んでいいよ!もちろん、代金は後で返してもらうけどね。ま、君がハンターになればすぐに返せるから安心して」


 僕は、店の前にずらりと並んでいる武器を一瞥した。


 「なら、これとこれにします」


 「ん〜、本当にこれでいいの?これとか、すごいかっこいいよ!後これは?」


 「うっ、ビエルさん、推しがすごいです」

  

 興奮するビエルを、ネウスが止めに入ってきてくれた。


 「まぁ、ビエルよ落ち着きなさい。しかし、アシエル殿が選んだ武器は、皆さん使いたがらない武器です。それでも、その武器を選びますか??」


 「はい!僕はこの武器にします!」


 こうして僕は、2丁の拳銃を両足のホルスターにしまい、佩剣をつけた。防具は、なるべく軽量にして鎖帷子の上に白のワイシャツに、ズボンは黒のスーツ。渾身の出来栄えである。まるで、昔の俳優のように、金色の髪、漆黒の瞳が引き立っている。ビエルは、ダサいと言っていたが獣の皮をつけるより、絶対にかっこいい。

 ちなみに拳銃は、デザートイーグルと呼ばれる昔ながらのハンドガンだ。装填する必要はないらしい。自分のエネルギーがある限りは、銃に力を込めれば永遠に撃ち続けることができるそうだ。


 ビエルは、まだブーブー言っている。本当は、僕に剣を選んで欲しかったらしい。そおすると、パーティーのバランスが良くなるんだって。でも僕は、バランスよりかっこいい方を選んだ。だって、つまらないじゃん天使が剣とか、普通じゃないか!ミカエルだって、かっこいい剣を持ちながら描かれているし。銃を持った天使がいたら、もっと最高じゃないか!


 「あ〜あ。もっといい武器が、あったじゃないか〜拳銃なんて音は大きいし、威力はあるけどすぐ疲れちゃうよ?まぁ〜、君がいいならいいけどさ〜」


 「うん、僕はこれでいいんだ!早く使うのが楽しみだよ」


 僕は、新しく手に入れた武器を持ちセントラルがある東へ歩みを進めた……。もちろん、スパルタが終わることはなかった。

 2日程歩き、ようやく僕たちはセントラルについた。見た目は、とても大きなドームでその中に2つの街が入っているそうだ。

 

 「大きいですね。ここに、クストスがあるんですか?」


 「うん!そうだよ。でも、君はまだハンターでもなければ、身分すら証明できないから、入る前に試験を受けてもらうよ」


 「え?もう受けるんですか……緊張してきました。そういえばどんな試験なんですか?」


 「ムフフ〜。行けばわかるさ〜」


 ビエルは、満面の笑みで歩みを進めている。これはきっと、良く無いことが起きる。一緒にいて分かったが、ビエルはドSと言われる人間のタイプだ。僕が、ドラキュラに襲われ血を吸われているのに、彼女は頬を赤くし見ていただけだった。彼女が、あそこまで笑顔になると言うことは間違いなく痛めつけられる。そして、血が流れると言うことだ。

 ビエルに怯えながら歩いていると、1人の大男に声をかけられた。


 「久しぶりだな、ビエルにネウスさんよ。こいつが手紙に書いてあった、記憶喪失のアシエルか。お前、なんでこんな得体の知れないものを捕まえてきたんだよ」


 「な、そんな言い方ないでしょ!僕は、アシエルのおかげで命を救われたんだよ!」


 「まぁ、なんでもいい。おいお前、試験を受けたいんだろ、こっちだついて来い」


 大男についていくと、そこには闘技場があった。中からは歓声と、時々悲鳴が聞こえてくる。


 「よし、いいか。お前は、今からこの中に入り力を示すんだ。後は、中にいる観客と爺さんどもが審査して、お前の評価をするってわけだ。ふざけているように思えるかも知れないが、うちもやっていくためだ。まぁ詳しい話は、ここから生きてでられたら教えてやるよ。じゃ、頑張んな」


 え、なにこの急展開。僕が思っていたのは、試験管に魔法を見せたり、戦闘はするのだと思っていたけど。

これ、試験じゃなくて死闘じゃん……は!?だからビエルはスパルタだったのか!

 まぁ、でも仕方ない。これも、情報を集めるためだ。いくら相手が強くても人間だ、殺されることはないだろ。

 

 僕は、闘技場の中に入ると、大きな扉の前に案内された。扉の奥からは、鳴り止まない観客の声が聞こえて来る。

 あぁ……今、すぐに帰りたい。

 しばらく待っていると、急にアナウンスがかかった。


 「さぁ〜、皆様!今日、最後の挑戦者は!記憶をなくしてしまったアシエル君!!己を見つけるために、ハンターになりたいそうだ!!……だが、しかし!!このモンスターに、そんなことは関係ない!!どんな挑戦者も、その爪で切り裂いてきた……我が闘技場一番人気キマイラだーーー!」


 ……え?



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