第5話 消えていく光


 これで終わった……。でも、これで彼女達は救われるだろうか、僕がしたことは正しかったのか。今になって、不安や後悔が押し寄せてくる。結局僕は、誰かを救えたんだろうか。ローズよ、お願いだ教えてくれよ……。僕は正しかったのか。

 とりあえず、彼女を救わければ。彼女の魂は今も酷い身体にいる……早く出して楽にさせなくちゃ。


 「魂の導きアニマ・ドクス


 ローズの身体から、淡く光り輝く魂ができた。


 「ごめんよ、間に合う事ができずに……。僕が、自分を信じて行動していればこんな目に遭うこともなかったのに。何が天使だ、何が人類の守り手だ……。1人の少女も救えない天使なんて。本当にごめんよローズ」


 僕は、ただ泣いていた。本来、出ることすらおかしい涙を、目の前が見えなくなるほど流し、呼吸が止まりそうになりながら、謝り続けていた。しかし、彼女の魂はその場を離れず、ただ光り輝いている。

 次第に、彼女の輝きが弱くなっていることに気づいた。本来、この魔法で出された魂は、善悪関係なく天界に導かれる魔法だ。止まっていることの方がおかしい。


 「どうしたんだい、早く行かないと。魂の輝きを失えば、この世界に永遠に留まることになるんだよ。こんな、醜い世界に……」


 僕は、彼女の魂にずっと語りかけた……昔の僕の話やザフキエル、ゼルクのこと。なんでこんなことを話したのかわかんない。きっと、意識していなかったけど多分僕もここで死ぬんだと思う。気がつけば、僕の羽は黒く焼け焦げ、血に映る僕の瞳は輝きを失い、黒に染まっていた。


 「アハハ、ごめんね。僕の、昔話ばっかしちゃって。君のお話も聞きたいんだけど、僕はそろそろ限界が来たみたいだ、とても眠たくなってきたよ。君の輝きは、もう僕の瞳に映るほどしか……」


 僕は、今にも消え入りそうな彼女の魂をそっと掴み、僕の胸に注ぐように優しく入れた。


 「これで、少しでも長く君を、この世界に取り込まれないように守ってあげられる。少しでも……こんな醜い世界に、飲まれないように……」  


 魂が入ると、僕は闇に堕ちていくときとは違う、とても心地がいい光に包まれた。

 

 こうして僕は、血に染まった部屋で深い眠りに堕ちていくのであった。

 


 ーーアシエルが天界を降りた日から2日が経っていた。天界では風を切る音が響き、叫び声が木魂していた。声の主はザフキエル、アシエルの上官天使である。彼はアシエルの居場所を突き止めんとラグエルに拷問されていたのだ。


 

 「さぁ!ザフキエル早く答えるが良い。お前も、もう耐えられないであろう。この私に、2日も拷問されているんだぞ」


 「はぁ……はぁ……私は、彼の居場所は知りません。彼が下界に降りた時私は、ラグエル様と一緒にいたでは無いですか」


 「あぁ、なぜ救済を送らぬのかと私に楯突いていたな。また私に拷問されると分かっていてもな……。なぜあいつに、そこまでこだわるのかがわからんな、特別な感情でも抱いているのか?」


 「彼は、私の大切な部下です。部下を守る事が上官の仕事だからです」


 「フハハ!笑わせるな。まぁ良いこのまま拷問していても、お前は口を破らぬだろう。やり方を変えようでは無いか、まず教えてやろうアシエルは人間の魂を破壊した。この意味がわかるよな」


 「な、そんなことはあり得ません。魂の破壊など我々の力でもできるはずがありません!」


 「そうだ、本来であれば不可能だ。だがあいつはそれを5個も破壊したのだ。そしてあいつが向かったと思われる孤児院には、何もなかったんだ!あいつの痕跡どころか、人間の痕跡もな!明らかに誰かの手が加えられていたんだ。これを、我々が見逃したと知られればどうなると思う?はっきり言おう、お前じゃ無いと困るんだよ。もし違えば監視者全員に責任を取らせ、処罰しなければなくなるんだよ」


 「な!そんなんこと神が、許すはずがありません!」


 「神はもういない!数千年前に我々も見捨て消えてしまったでは無いか、それはお前も知っているだろ。まぁいい、明日ラファエル様が事実を解明に来てくださる。この意味が、わかっているだろうな?お前がその場で否定すれば、監視者全員、ラファエル様の手によって裁かれることになるぞ。いい返事を期待しているよ」


 「クッ……」




  あぁ……アシエルよ、無事なのか、生きているのか?私は明日、死ぬことになるだろう。お前が、馬鹿なことをしたせいでな。全く世話のかかる奴だよ。思えば、お前が生まれてから、数千年間見守ってきたが、世話ばっかかけよって。何度言っても人間を助けようとして、その度にラグエル様に盾付き私は何度も拷問されてきた。だが、お前の気持ちを踏みにじることは、したくなかったんだ。お前の笑顔を見るためだったら、あんな奴の拷問へでも無いわ。だが、お主を守ってやれるのもこれで最後だ……必ず生き延びるんだぞ、アシエルよ。




 ーーこうしてザフキエルは、アシエルと自分の愛すべき部下全員を守るために、命を投げ出すことを決意するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る