022_重要書エリア

 


 重要書の閲覧許可が下りたので、早速、大図書館に向かった。


「司書長、許可証だ」

「おお、よかったですな。君、重要書エリアの鍵を」


 若い司書が奥から鍵を持ってきて司書長に手渡すと、「向かいましょうか」と言って司書長は大図書館の奥へ歩き出した。


「失礼ながら、この許可証は殿下のみの入室を許可されております。サキノ殿たちはこちらでお待ちを」


 重要書を保管しているエリアの入り口の前で、司書長は俺以外の立ち入りを止めた。


「しかし―――」


 俺はサキノを手で制した。

 許可証には俺だけの許可と記載があるので、押し問答をしても入室は認められないのは分かり切っている。

 それにサキノたちが無理に入ってはサキノたち護衛だけではなく、司書長まで処罰されてしまう。


「ここで待て」

「……分かりました」


 俺は司書長に続いて重要書エリアに入っていく。


「たしかここら辺に……おお、ありましたぞ。これです」


 八歳なので背もそれなりに高くはなっているが、俺の背では届かない場所に本が納められていた。

 司書長が目的の本を取ってくれた。分厚い藍色のカバーの大きな本を受け取る。

 その本は体を鍛えている俺でも重いと感じるほどの重量で、すぐに体中に魔力を纏わせて身体能力を上げた。


「他にもお持ちしますので、そこの机でお待ちください」

「うむ、頼んだぞ」


 俺は机の上にドサッと重たい本を置き、椅子に座った。

 重厚な表紙を開け羊皮紙をめくっていく。

 この本は呪い系魔法とその解除方法がまとめられたものだった。

 その中で、呪いの詳細を確認するための魔法があるのが目についた。


 魔法は詠唱すると行使できるものと、詠唱の他に触媒が必要なものがある。そして、呪いを確認する魔法には、触媒が必要になる。

 しかも、光属性と闇属性の適性がそれぞれ王級に達していないと、魔法を行使することができないと書いてあった。

 つまり、呪いを確認する魔法は二属性が必要だというのが分かったのだ。

 まさか、複数の属性が必要な魔法があるとは思ってもいなかった。

 これは大きな一歩だ。毒サーチの魔法も複数の属性が必要なのかもしれない。


「こちらも役に立つかもしれませんぞ」


 俺が呪いを解除する魔法について読み進めていると、司書長が別の本を持ってきて、また本棚の列の中に消えていった。

 司書長でもこの重要書エリアには週に一回のチェック時にしか入れないそうだから、イレギュラーで入れるのが嬉しいようだ。

 ちなみに、禁書になると年に四回しか入れないそうだ。


 次の本は真っ青なカバーのもので、これは水魔法の伝説級魔法の魔導書だ。

 目に水の魔力を纏わせて対象を見ると、その者が持つ魔力量や属性が分かるというものがあった。

 なるほど、魔力を毒に置き換えることができれば、毒を見つける魔法になるかもしれないな。

 司書長が集めてくれた本を読みふけっていると、一般書エリアとの仕切りである扉がノックされた。


「なんじゃ、邪魔しおってからに」


 司書長も重要書に囲まれて嬉しいようだから、ノックをしている人物が邪魔者にしか思えないのだろう。


「今は忙しいのだ」

「すでに日も暮れている。殿下を開放しろ!」


 司書長とサキノの押し問答が聞こえてきた。

 そうか、もう夜になっていたのか。本を読むのに夢中で時間を忘れていたぞ。

 この重要書エリアは窓がなく、魔法アイテムによって淡い光で照らされているので、時間の経過がわからないのだ。


「司書長、明日もくる」

「む、そうですか……」


 そんなに残念そうにしなくてもいいだろうに。


「明日も頼むぞ」

「分かりました」


 毒サーチの魔法研究は始まったばかりだから、急ぐ必要はない。


 

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