第104話
「ヌンッ!!」
魔力を操作し、カルミネは無数の水の玉を生み出す。
そして、それを自分の周りへと浮き上がらせた。
「その数……、魔術の方が得意というのは嘘ではなかったようだな」
あれだけの水の玉を作り出し、コントロールする技術。
先程カルミネが言った、接近戦より魔術の方が得意だという言葉は、それを見る限り本当だったようだ。
「ハッ!!」
カルミネが手を向けることで、サッカーボールほどの大きさをした無数の水の玉が、康義へと殺到する。
「くっ!!」
殺到する水の玉に対し、康義は移動と迎撃の選択をとる。
的を絞らせないように動き回りつつ、躱せそうにない場合は魔力を纏った刀で斬って魔力を霧散させる。
「フゥ~……」
「おぉ! すごいすごい……」
少しして水の玉の攻撃が治まる。
カルミネが作り出した水の玉を、康義は全て防ぎきったのだ。
動き回ったことによる体力の消失に、康義は息を深く吐いた。
そんな康義のことを、敵であるはずのカルミネは拍手をして褒める。
「じゃあ、次はこれだ」
「っ!!」
水の玉を防いだ康義に対し、カルミネはまたも魔術を発動させる。
先程の水の玉と同等のサイズの火の玉を作り出した。
「ホイッ!!」
「グオッ!!」
攻撃が迫るが、水から火に代わっただけ。
康義は先程と同じように、移動と迎撃をおこなって火の玉を防ぐ。
「ハイ! 次!」
「くっ!!」
火の玉を防ぐと、カルミネは次に石弾による攻撃を放ってくる。
康義はそれも同じように防ぐ。
「ハァ、ハァ、無駄なことをいつまで続けるつもりだ!?」
たしかに今の所防戦一方だ。
しかし、このような攻撃が続いたところで、魔力の無駄をしているに過ぎない。
自分音体力が続くか、それとも魔力が尽きるかの戦いをカルミネはするつもりなのだらろうか。
「……無駄じゃないさ」
「っ!?」
康義の質問に答えると、カルミネは先程の石弾の魔術を発動する。
無駄だと言っているのに、同じ攻撃をしてくるつもりのカルミネに、康義は首を傾げる。
「ハッ!!」
「フンッ!!」
これまでと同じく、康義は回避と迎撃を繰り返す。
違うのは、カルミネが防がれても魔術を発動し続けていることだ。
攻撃が止まないからといって、康義は驚かない。
何かカルミネには企みがあるのだろうと、警戒しつつ冷静に対処した。
「ツッ!」
「やっぱりな。弾いて割れた小さい石は当たる」
迫り来る石弾を弾くと、割れた細かい石が体に当たり、康義は僅かに表情を歪める。
それを見て、カルミネは笑みを浮かべ、石弾を放ったことが間違いなかったのだと確信した。
カルミネの放つ石弾は、地面の土を固めて使用しているため、魔力を変化させて放っている火や水とは違い実態がある。
その石弾を弾けば直撃は受けなくても、割れた石まで防ぎきることなどできない。
「……この程度の小石、たいしたことではない!」
「そうか。じゃあ、どれだけ我慢できるか見せてもらおう」
小石といっても、高速で飛んできている。
それが当たるのだからかなりの痛みを生じるが、それをわざわざ敵に言うわけがない。
そのため、康義は再度カルミネの攻撃が無意味だと伝える。
それが康義の強がりだと読み取ったカルミネは、またも大量の石弾を作り出し、康義へ向けて発射させた。
「ハアァーー!!」
最初のうちは回避と防御をしていた康義だが、段々と回避よりも防御一辺倒になっていく。
そして、とうとう足を止め、飛んでくる石弾を刀で防ぐことに専念するようになった。
カルミネが石弾の数を増やしているからだ。
直撃は大ダメージになると容易に想像できるため、康義は必死に石弾を弾く。
しかし、弾くと石は割れ、割れた小石が康義の体の一部に当たり痛みを与える。
それがカルミネが魔術を放つのをやめるまでずっと続いた。
「フゥ~……、これだけの数を防ぎきるなんてすごいな」
「ハァ、ハァ……」
ようやく石弾が収まると、カルミネは感心したように呟く。
その表情は、魔力消費による疲労がにじみ出ている。
それに対し、康義は肩で息をする。
60を超えた年齢からか、昔ほど体力が続かない。
しかし、体力よりも問題なのは、カルミネの狙い通りに進んでいることだ。
たしかに石弾を防ぎきってはいるが、防いで当たる小石が馬鹿にできない。
塵も積もれば山になるではないが、康義の体中に痣ができていることだろう。
ただの魔力の無駄遣いだと思わせるためにも、康義は痛みを顔に出さない。
「人間でおかわりしたのは初めてだ……」
「っ!!」
感心したようにン呟くと、カルミネはこれまで以上の数の石弾を作り上げる。
どうやら、康義の体に小石のダメージが蓄積されていることを理解しているようだ。
このままジワジワと康義を動けなくしていくつもりなのだろう。
「ハッ!!」
「くっ!!」
またも石弾の攻撃が開始され、康義は防御に入る。
『くそっ! 少しでも間があれば……』
迫り来る石弾を弾きつつ、康義は歯噛みする。
このまま弾いた小石を被弾し続ければ、いつか自分は動けなくなる。
そうなる前にカルミネに一撃を見舞いたいのだが、これでは反撃の糸口すらない。
石弾の被弾を覚悟に突っ込むという手もないわけではないが、全力で強化した肉体が何回耐えられるか分からない。
博打に出るか否かを、康義は悩んでいた。
「ハハハッ! このままジワジワ弱っていくのは見ものだな」
康義が反撃に出るか考えているなか、カルミネは愉悦の表情へ変わる。
現状康義は弱っていくばかり、それが楽しくて仕方がないようだ。
「っ!? がっ!!」
このまま時間をかけて弱らせていくつもりでいたカルミネに、突如石弾が飛んでくる。
石弾だったために、気付くのが遅れた。
飛んできた石弾は、カルミネの横っ面に直撃した。
「っ!! あの野郎!!」
同じ石弾の魔術を使うことで警戒が鈍った。
直撃を受けて口から血を流したカルミネは、石弾を飛ばした人間を睨みつける。
睨みつけた先には、鷹藤康義の息子である康則が立っていた。
「よくやった。康則……」
「っっっ!!」
カルミネの懐に入り、康義は息子を褒める言葉を小さく呟く。
戦闘に巻き込まないために離れているように言ったが、その康則に助けられた。
顔面に攻撃を受けたことにより、自分への攻撃の手が鈍った。
その瞬間を見逃す訳もなく、康義はカルミネ距離を一気に縮めたのだ。
「ハアァーー!!」
「っ!!」
距離を一気に縮めた康義は、カルミネに対して全力で刀を振り下ろした。
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