第22話 約束とプレゼント
蓮夜は美里がココアを飲み終わり、置いていた着替えを普段泊っている部屋に取りに行ったのを確認してリビングから出た。
リビングを出た後蓮夜は、寝室の隣の天然石を置いている部屋に入った。
「あれはどこにしまったんだったかなー」
蓮夜は頭をかきながら壁際に置かれた棚の引き出しを開いたり閉じたりしながら目的の物を探し始めた。
少しの間引き出しを開いていると、蓮夜は目的の物を見つけて引き出しから取り出して部屋を出た。
リビングに戻った蓮夜は持って来た物が入った箱を机の上に置き、コーヒーを入れて美里が風呂から上がって来るのを待った。
「上がったよ」
美里は濡れた髪をタオルで拭きながらリビングに戻って来た。
普段頭の後ろで髪の一部を結んでいた白いリボンは左腕に軽く結びつけられていた。
「美里、取り合えず、座れ」
「ん?どうしたの?」
蓮夜の言葉に美里は不思議そうに首を傾げて蓮夜の隣に座った。
美里が座ったのを確認して蓮夜は先ほど持って来た物の入った箱を美里の前に置いた。
「プレゼントだ」
「え!?ありがとう」
テーブルの上に置かれた箱を取り、美里が嬉しそうに箱を開けるとそこには深い青緑の綺麗な宝石がついたペンダントが入っていた。
美里は嬉しそうに微笑みながら箱からペンダントを取り出して首にかけ、宝石を手に取り見つめながら蓮夜に問いかけた。
「綺麗、この石ってなんなの?」
「アレキサンドライト、今のお前にはピッタリな宝石だろうさ」
「そうなの?」
「周囲に振り回されず、自分らしく生きるための力を与えてくれるパワーストーンだ。今日みたいなことがまた会ったら俺はもう知らないからな」
「ん、分かった。もう今日みたいなことは二度ないように頑張る」
美里はペンダントに着いたアレキサンドライトを大切そうに握りしめて蓮夜の肩に頭を乗せるように寄り掛かった。
蓮夜は鬱陶しそうに美里の頭を手で押しソファーの背もたれに縋らせた。
「けど、こんなペンダント持ってたの?」
「貴重な宝石だから二、三個は持ってただけだ」
「貰っていいの?」
「ああ、アレキサンドライトは気に入った原石が手に入ったからな」
「じゃあ、遠慮なく」
美里はペンダントを首にかけたままタオルで髪を丁寧に拭き直し、髪が乾いたのを確認して白いリボンで髪を結んだ。
「後は寝るだけか」
「そうね」
「そういえば、明日学校はどうするんだ?」
「んー、一週間は休もうかな」
「そうか。じゃあ、悠斗に一週間休むって連絡しておくぞ」
「ありがとう」
蓮夜はコーヒーをゆっくりと飲みながら美里と一緒に雑談をして過ごし、十二時を少し過ぎた頃に蓮夜が隣に座って本を読んでいた美里を見ると、少し眠そうにしていた。
「そろそろ寝るか?」
「ん」
美里は小さく欠伸をして目をこすりながら蓮夜の問いに頷いて返した。
蓮夜がソファーから立ち上がると、美里も立ち上がり美里がリビングから出たのを確認して蓮夜はリビングの電気を消して二階に移動した。
蓮夜が寝室に入ると美里も蓮夜と同じ寝室に入って来た。
「ん?どうしたんだ?」
「どうしたって、一緒に寝るって約束したじゃない」
寝室に入って来た美里に蓮夜が不思議そうに問いかけると、美里も首を傾げながら超えた。
美里の言葉に蓮夜は思い出したような顔をして小さくため息をついてベッドに座った。
「そうだったな」
「じゃあ、早く寝よ」
美里はベッドに入り白いリボンとペンダントを外してベッドの傍に置いてあった机の上に置いて横になった。
ベッドはキングサイズのため二人が寝てもかなりスペースに余裕があるため、蓮夜は美里から少し離れた位置で横になる。
蓮夜が寝ようとすると美里は近づいて来て蓮夜の左腕に抱き着いた。
「どうしたんだ?」
「いいでしょ、これくらい」
「はあ、早く寝ろ」
腕に抱き着いた美里をそのままにして蓮夜はため息をついて寝ようとすると、美里が声をかけた。
「ねえ、さっきみたいに頭撫でてくれない?」
「……はあ、撫でてやるから寝ろよ」
「ん、分かってる」
蓮夜は左腕を美里に抱き着かれたまま体を美里の方に向けて右手で美里の頭を軽く撫でた。
少しの間撫でていると、美里はすぐに眠ってしまった。
美里が眠ったのを見て蓮夜は少し自嘲気味に笑い、暗い顔で呟いた。
「あいつらが見たらなんていうんだろうな……」
蓮夜は美里を撫でるのをやめて仰向けになり、右腕で目を覆い小さくため息をついた。
「今度会ったら少し我が儘聞いてやるか……」
蓮夜は独り言を終えて少し経つと眠りについた。
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