邪神復活阻止計画 後編 その二
一九一八年 一一月 宮森の自室
◇
宮森に効率よく指導する明日二郎の姿は、まるで今をときめくカリスマ講師である。
『いいかミヤモリ、大事なのは授精させてからなんだぜ。
考えてもみろ、産まれた子がもしお前さんに似ていたら…………アウトだ』
『そうだった~。
産まれた子が自分に似ていたら、確実にこ、殺される!
一体どうしたらいいんだ~』
恐慌状態になった宮森を明日二郎があやす。
『まあ落ち着け、ちゃんと手はある。
人体の妊娠過程をインストールしてやったろ、ソレを思い出せ。
そうそう……受精卵のトコだ。
あとセンセー付けろ』
『受精卵……確かこの段階で遺伝子の選定がなされるんだよな』
『そう、そこでオイラの出番だ。
〈
『そ、そんな事が出来るのか⁉
明日二郎、センセー』
『センセーつけるの遅れてたが、まあいい。
研究自体は遺伝病克服を目指し世界中で行われてる。
遺伝病克服と云うのは建て前だがな。
遺伝子を
『まさに神をも恐れぬ所業だな。
君達は
『オイラ達を誰だと思っていやがる。
世紀の天才魔術師スーパー比星ブラザーズだぞ。
お前さんが九頭竜会に入会してこの方、オイラ達だって遊んでた訳じゃあねーんだぜ。
オニイチャンは医者や学者から理論を学び(盗んで)オイラに伝授。
オイラはひたすら実践あるのみ。
幻夢界なら実験台には困らねーし練習し放題だからな。
優雅に湖を泳ぐ白鳥も水面下では必死に足を漕いでるんだぜ……』
『今日までにそんな事が……。
明日二郎センセーも涙ぐましい努力を重ねていたんですね、自分は感動しました!
でもセンセー、白鳥は水面下で必死に足を漕いでいると云うのは嘘みたいですよ。
何でも、白鳥を含む水鳥には尻に
又、それによって羽毛の間に空気を溜められる様になり、それが浮き袋の役目を果たしているとか。
水面下で必死に足を漕いでるのは
〖鴨の
『ガーン⁉ 白鳥のアレ、ウソだったのか。
しかもコイツ急に博識ぶりやがって、チョットムカつく……』
『おや? 明日二郎センセーなんか言いました?』
『何でもねーよ。
じゃ、講義の続き。
んで〈
『じゃあ、産まれて来る子の容姿問題は解決しますね。
その後はどうするんです、明日二郎センセー?』
カリスマ講師が今日一郎へと切り替わる。
『次は僕から説明するよ。
明日二郎による遺伝子操作が上手くいった授精卵はそのまま次元牢で成育させる。
そうする事によって予備の授精卵も造れる』
『中々手の込んだ計画だな今日一郎。
最後は着床と胚盤胞への邪霊定着の儀式の際、次元牢内で無事に成育させた授精卵を〈
つまりは、
『御明察だ宮森さん。
擦り替え作業は一連の儀式の為に呼び出しておいた父親の力を借りて行う。
その作業を神官達と瑠璃家宮一味に気付かれないよう、後催眠暗示は儀式ごとに重ね掛けしなければならない』
『全く、七面倒臭い手順だね。
そういや、儀式に参加する上級会員達にもなるべく接触しろと言ってたけど、それは何の為にだ?』
『僕達の帝都脱出と、その後の生活を援助してくれる
後々の事まで考えておかないとね。
宮森さんが
『意地悪を言ってくれるなよ~。
自分は肉体労働には向いてない、断言する!
だけど、九頭竜会の会員に援助を求めるって、
『それがそうでもない。
九頭竜会も競争社会だ。
落ちぶれる者が出る。
と云うより、落ちぶれさせられる者が必ず出て来る』
『もっと具体的に頼むよ今日一郎』
『九頭竜会の目的は邪神の復活だ。
詰まる所、上級会員達はその為の
社会的地位、権力、背徳的な遊びを結社が提供し、会員達はその見返りを支払う。
組織が小規模のうちはいいが、規模が大きくなるにつれ会員達の利害が噛み合わなくなる。
そこで会員達の中から生贄を選定し、その生贄が築いてきた財産を
その恨みの念でさえも邪神の糧となる。
結社にとってはまさに一石二鳥だ』
『なるほど、読めたぞ。
明日の儀式でその、落ち目の会員を探すって訳だな。
その会員を
『宮森さん正解。
会員達の脳内を明日二郎に探って貰って、次に追い落とされる予定の会員を見付け出す』
最期は明日二郎が締めた。
『以上が邪神復活阻止計画の全貌である。
ミヤモリ リョウイチ殿、貴殿の健闘を期待する!』
◆
邪神復活阻止計画 後編 その二 了
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