邪神に纏わるエトセトラ その三
一九一八年 一一月 宮森の自室
◇
講師を今日一郎から明日二郎へと引き継いで邪神学講義が再開された。
宮森は残りの疑問を
『そうそう明日二郎センセー。
幻夢界や魔空界の様子はどうなっているんですか?』
『ではミヤモリ君に教えて進ぜよう。
先ず幻夢界から。
幻夢界が
『ああ。
それも、魂魄の
『多くの場合、三次元である物質界と見た目はそれ程変わらん。
ただ幻夢界の持ち主、夢を見ている本人の状況に大きく影響される。
当たり前っちゃー当たり前の話だが、本人が物質界で平穏無事なら幻夢界も平穏無事。
理想的な世界に思える。
人間が夢想する天国の情景はここから来てるモンが大半だと思うぜ。
で、本人が物質界でヒデー目やエライ目に遭ってる時は幻夢界の方も緊急事態になっちまってる。
いよいよヤバくなって来ると、普段は奥に引っ込んでるバケモンなんかがそこらへんに這い出て来やがるからな』
『化け物?
邪神やその眷属の事なのか明日二郎?』
『ハイ、今センセーなし。
減点だぞミヤモリ君。
ここで言うバケモンの事を、魔術師達は【
コイツらは邪神や眷属達の本体じゃなくて、幻夢界の持ち主の邪念と魔空界に封印されてる邪神や眷属達の邪霊とがシンクロした姿の事だ』
『悪かったよ明日二郎センセー。
それでそのシンクロ……同調の事か、邪霊の定着とは又違うのか?』
『定着まではいってない、その手前。
この〈幻魔〉達は幻夢界の持ち主本人の不幸なんかを足掛かりに、魔空界と繋がってる幻夢界の奥底から這い出て来る。
狙いは幻夢界の持ち主の魄だ。
魄が〈幻魔〉に捕まって食われると邪霊の定着が少しづつ始まる。
物質界への影響としては、幻夢界の持ち主本人の雰囲気に
この時点で物質界での状況が好転すると、〈幻魔〉に捕まって定着を始めていた魄は、本人の聖霊である魂の助けで定着が解ける。
しかし、物質界での状況が好転せず悪化が進むと定着が益々激化。
物質界での人格に明らかな異常が出始める。
極度に塞ぎ込んだり些細な事で激昂したり、
『憑き物に憑かれる……かな?』
『中々ユウシュウではないかミヤモリ君、そうなのだよ。
そこまで定着が進行してしまうと完全に元の状態へと戻るのは難しい。
この場合も聖霊の調整が効かなくなると堕落が起き、本人に素質や自覚がなくても簡単な霊力操作、詰まり……魔術を本能的に使用出来る様になる』
『
本当に勉強になります、明日二郎センセー』
『ウム、素直でよい。
ユウシュウなミヤモリ君には、魔空界の事象も話してやらねばなるまいて』
『確かに一番気になる所だ。
全く想像が付かないので、明日二郎センセーお願いします』
『魔空界なんてのはな……ぶっちゃけヒデー所よ。
先ず風景が違う。
普通の感性の持ち主なら、綺麗だとか心が和むとか云う感想はお世辞にも出ねー。
そこに住んでる住人も漏れなくバケモンだ。
オイラもこんな見た目だから
当然、住んでる住人達みんな性格がねじ曲がってやがる。
まともな奴なんて一人もいねーんだわ』
『魔空界の住人は他にどんな特徴を持っているんだい、センセー?』
『どんな仕組みになってるのかは解らんが、魔空界の住人は老化しない。
だから奴らに寿命の心配はない。
寿命の心配はない訳だが、死はある。
邪念の枯渇だ。
邪念が枯渇しちまった個体は問答無用で魔空界から引き離される。
その後の行先は前にオニイチャンが話した五次元の幽界。
そこでキツ~イお仕置きを受けるみたいだな。
それが嫌なもんで、奴らは幻夢界を通じて物質界の人間から邪念を搾り取ってるって~寸法よ。
その上、物質界に復活! なんて夢見てるもんだから、必死で人間に干渉してせっせと邪念を稼いでおるのだ』
『なるほど、邪霊を含む魂魄を持つ人間は魔空界の住人にとって格好の標的と云う訳だ。
じゃあ、魔空界の社会構造はどうなってるんだセンセー?』
『
争いばかりだ。
それに魔空界では寿命の心配がないからな。
互いに争う事くらいしか楽しみがないのやも知れん。
なので、自軍の戦力増強と物質界への侵攻の為に邪神達同士で格付けし合っているのだろう』
『センセー、魔空界の邪神達同士で殺し合ったりは出来ないのか?』
『お、いい質問だなミヤモリ君。
出来るぞ。
けど普通はそこまでしないらしい。
奴らは魔空界の中でこそ争いに
下手に住人同士で殺し合いなんぞやると、魔空界全体の邪念を
争いに決着が着けば、処刑なんぞはせず自分の手下にするみたいだな。
んでもって、おもに幻夢界に邪霊を送り込み人間とシンクロさせるなりして、得られた邪念を貢がせると云う訳だ』
『なるほどね。
明日二郎センセー、もし知ってたらで構わないんだが、魔空界の勢力図を説明してくれないか?』
『ウム。
ミヤモリ君にはまだ邪神の真名を認識させられん。
従って大まかな説明しか出来んが了承するよーに』
『分かったよ明日二郎センセー』
◇
邪神に纏わるエトセトラ その三 了
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