単純明快な事件の一幕(スチーム×マギカ)

 投げられたつえがたなが男の側頭を目指す。黒いさや先がぶつかる寸前、じゅうこうが火をいた。

 下からのげに、杖刀はあっなくきりかくれた空へと空回っていく。その下では一人の少女が敵へと人差し指を向けていた。

 

「――火花の如くはじける石つぶて――」

 

 手の形だけでじゅうを模し、指先から赤ほうで作り上げた小石をつ。しかしねらいがあまい。男の足元、いしだたみに当たってくだけた。

 霧がうごき、だんがんどうえがく。少女のかたを狙って、二発の弾丸が撃たれた。蒸気かんじゅうではなく、火力を優先した鋼鉄銃。

 火薬のにおいが周囲にらされ、激しいれつおんまくふるわした。弾丸が服の表面を破るよりも先に、落ちてきた杖刀が勢いをつけて刀身を回転させる。

 

 二発の弾丸は弾き落とされた。石畳にまった鉄の弾丸をみにじり、手首を動かして杖刀をにぎりしめる。

 むらさきいろひとみぐに敵をにらみつける。煙草たばこけむりわずらわしいと言わんばかりに表情をゆがめ、白魔法で強化したきゃくりょくで一気にきょめた。

 銃を構えている男にどうようの色は見られない。むしろものが近付いたことをかんげいし、今度は心臓へと銃口を向ける。

 

「悪いな。らいぬしからは手加減するなと言われているんでな」

「ハンデをわたす手間が省けますわ」

 

 続けて三発。反動で狙いがブレるよりも速く、ほぼ一直線のだんどう

 見事なはやちを前に、少女が選んだ行動はちょうやく。まるで鳥が飛ぶように、あっという間に男の頭上へ。

 建物のれんへきり、街灯を足場に、橋のさくえて。

 

貴方あなたにも理由があったのでしょうが――」

 

 始まりは小さならいだれかの「助けて」に、人助けギルド【流星の旗】が応じただけ。

 人が集まる場所で起きたさつや、ちがい。あらゆる要因が、結果として対立を生んだ。

 誰もがじんに動くわけではなく、理由なく戦うのではない。正義と悪は立場を変えるだけでいっしゅんにして反転するように。

 

「わたくしは全力でたたせるだけです」

 

 弾丸をそうてんするのをあきらめ、小型ナイフを手に。だが男がその行動をせんたくした時には、頭上でろされる杖刀が視界の半分を埋めていた。

 

 こしかわベルトで杖刀を固定し、石畳の上にたおれた男を背に。少女は歩き出す。

 目指すは男が述べた『依頼主』がいる場所へ。とある事件の終着点に向かうのであった。

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