第77話 騎士団長の息子は毒使いを仲間にする

「エクス。これはまた凄いね」


全員きっちりと列になって並んでいるのを見てから、次に俺の隣でむくれているリーダーだった女を見てから聞いてくる。


「その女の子が盗賊のリーダー?」

「ああ。そうだ。そして今日から俺の部下になった」

「部下?盗賊を?」

「アタイだってゴメンだよ!ちくしょう、なんなんだのこの化け物はお前のか!?」

「いや、ミスティ嬢のものかな?」

「その通り。俺はアリスのものでありアリスは俺のものだ」

「だから……アリスって誰だよ!?」


そう叫ぶリーダーを痛ましそうに見る部下達に俺は視線を向けるととりあえず説明することにした。


「さて、とりあえずはここは俺らのものになった。賊であるお前達を排除するのは容易だが……」


その言葉に部下の男達が怯えるのがわかった。まあ、俺一人に負けたような連中だからね。それも当然か。俺はその後に続けて言った。


「どうせならこれまでの悪行を帳消しにするくらいここで働いてくれ。そこのお前」

「は、はい!」

「今日からお前がリーダーだ。その上にもう一人……ルーテルくん。君にもここの長を任せたい」

「え?」


驚くルーテルくん。俺はその彼に聞いてみた。


「お兄さんから聞いたけど、そろそろ独立したいんだよね?だったら折角だから幼なじみとこっちに引っ越してきなよ」

「ぼ、僕がここの管理人になるのですか?」

「そう、街道近くに店を作るのもいいね。そこで二人で暮らしつつたまに様子を見に来ればいいから」

「で、でも彼らは盗賊ですよね?信用していいんですか?」

「まあ、ルーテルくんが信用できないなら無理にとは言わないよ。その場合は殺すから」

「お、おい!それは約束が違うんじゃ……」


そう言ったリーダーだった女をリンスが止めてくれたので俺は怯える盗賊達に続けて言った。


「じゃあ、聞くけどここで一生懸命働くのと、この場で死ぬのどっちがいい?」

「せ、精一杯働かせていただきます!」

「ならよし。あ、言っておくけど少しでも怪しい動きがあれば本気で死ぬからね。俺がいなくなってルーテルくんにもしものことがあればどうなるか覚悟すること。それに人質としてリーダーは貰っていくからリーダーも死ぬことになる。わかった?」

「は、はい!」


びっしりと並んで頭を下げるその光景に複雑そうな表情のリーダーだった女。やがて細かい調整と、ルーテルくんへのダイヤモンドの鉱石の目利きをお願いしていると、リーダーの女は不機嫌そうに聞いてきた。


「お前、一体何者なんだ?」

「俺はただの騎士団長の息子だよ」

「嘘つくな!あの力どう考えても騎士団長なんて可愛いレベルじゃない。あれは魔王のような力だ!」

「魔王なんて小物と一緒にしないでよ。少なくともアイツよりは強いから」


その言葉にリーダーだった女は、ぽかんとしてか聞いてきた。


「か、勝ったのか?魔王に!?」

「圧勝だよ。ただのハーレムチート野郎に負けるわけないでしょ」


ラノベ主人公みたいな小物のオタク転生者に敗けるほど落ちてはいない。ヒロイン以外に会った転生者の一人だったけど、完全にこの世界を舐めていて、ハーレムでやれやれとしている頭にくる奴だった。まあ、俺も似ていると言われば否定はしないけど、少なくとも女を囲ってわーきゃーやるような奴とは違う。きちんとアリスラブの正常な人間なのだ。そもそもアリスという可愛い天使がいるのにハーレムとか作れるわけがない。まあ、そもそもそこまでモテないしね。うん、でもアリスにさえモテればいいや。他の女からの好意なんて貰ってもねぇ……


「というか、お前」

「お前って言うな!アタイにはタリアンって名前があるんだ!」

「そうかい。それで、タリアンお前はあのメンバーの中に深い関係の奴はいるか?」

「いないけど……だったらなんだよ」

「そうか。いや、男がいるなら楽でいいと思っただけだ。盗賊だしいっそ体の関係くらいは持ってるかと思ったが……その様子だとなさそうだな」


恥ずかしそうにしているので普通に生娘なのがわかった。まあ、こいつの魔法を考えればよる男は少ないか。なら誰かとくっ付けて扱いやすくしたいが……誰がいいか。俺の手札で有効なのは乙女ゲーム関連で調教した商人の息子以外の3人だが、貴族なので少しだけ扱いが面倒だな。まあ、相性良さそうなのがいたらくっ付ければいいか。


「エクス、随分と面白い人材を発掘したみたいだね」

「そもそもお前はなんなんだ?さっきから偉そうに、こいつの仲間か?」

「なに、ただの友人だよ」

「不敬だぞー。そいつ王子だからなー」

「ふふ、君が不敬って言うのは少しだけ面白いね」

「まあ、公の場では変えるからいいだろ?」

「まあね。君くらいだからね。僕のことを気安く呼んでくれるのは」


まあ、打算があるからこその付き合いだしな。リンスもそれをわかっているから遠慮はしないのだろう。やがてルーテルくんの目利きが終わったので俺達はいくつかの候補を馬車に乗せてから新しい部下のタリアンを連れて戻るのだった。






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