第3話

軽く準備運動。手と足をグッと伸ばす。これをしないからといって怪我をするわけではないが、ルーティーンとしてやっている。よし、準備おっけーだ。


「『ウィンド』」


木に手をかざし詠唱。手のひらから強めの風が吹く。風により木の葉がゆっくりと落ちてくる。


「『スト・ウィンド』」


今度は先ほどよりも強く、かまいたちのように鋭い風を創り出す。狙いを定め放ったそれは落ちていく木の葉一つ一つを鋭く二つに切断する。


「っし、いい感じ。『リプレイス・ファイア』」


ステータスが更新される。


『中山大志 男性 16歳 

      属性魔法 炎

MP 24/100

HP 100/100

状態異常 なし

身体の損傷 なし』     


先ほどの詠唱は属性を変更するときのものだ。これは大量のMPを消費するため、実際の戦闘ではほとんど使用されない。ちなみに、MPはHPと違い、時間経過で回復していくため、完全にMPが枯れることはない。しかし、魔法の使い過ぎには注意だ。


「まぁ、今日は試合ってわけじゃないから大量に使うけどね!『MP補充』からの『ファイア』!」


実際の試合では使えない、いわゆるチート技であるMPの補充をし、なおもひらひらと舞っている木の葉を焼き尽くす。しかし、魔法の勢いが強かったのか、炎は木から木へと移って広がっていく。このままでは大火事だ。


仮想空間とはいえ山火事を起こすわけにはいかない。


「やばい!?『MP補充』!『リプレイス・アイス』!そして『スト・アイス』!」


属性を氷に変更し、広範囲にわたって氷魔法を唱える。一瞬で冷気が立ち上り、広がった炎をも覆い尽くす1つの氷山が出来上がる。なんとか大惨事は避けられた。ほっと一息。


「『リプレイス・サンダー』」


属性を雷に変え、氷山から少し遠ざかる。さらにMPを全快させる。


「最大火力だっ。『スト・サンダー』!」


バチバチと音を立てながら目にも止まらない速さで雷が駆け巡る。雷は氷山を貫通し、氷山にはポッカリと大きな穴が空いた。


「ふぅ、やっぱ属性間の相性って大きいよなぁ。」


VMWは炎、風、雷、氷の四つの属性を扱うことができるが、それぞれ相性の良い属性、相性の悪い属性がある。


炎は風に強く、風は雷に強く、雷は氷に強く、氷は炎に強い、4すくみとなっている。


「ふふふ、ここまで完璧に魔法を使えるとは、やっぱり僕は最強だ!あっはっは!はーっはっは…虚しい。」


結局、今日も一人でVMW。いや、楽しいよ?楽しいんだけど、やっぱり1人は虚しい。


柊星高校VMW部。未だに公式戦はおろか、練習試合すら未経験。そんな事実から目を背けるように、今日も僕は1人悲しく仮想世界を堪能する。

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