第35話バニーガール

 とうとう、言ってやった!

 ハーレム宣言。


 最低!と罵られて、この関係が終わってしまうかもしれない。

 だが、一緒にいる間もなんか隠し事をしてる気になって、モヤモヤと気持ち悪かった。


 隠す必要なんて無い。

 俺はこの世界に舞い込んだイレギュラーな存在。

 まだ三日しかこの世界にいない俺に、安定などない。

 俺はもっとこの世界を知りたい。

 自由に生きたいんだ。


 そして、こいつには英雄としての役目がある。

【魅了】を掛けてまで食い止めたりしない。


 リリィは何度か逡巡しゆっくりと考えた後、コクリと頷き、身体を隠しもせず真っ直ぐ俺を見据える。


「私、ハーレムとかよく分からないけど、テツオと一緒にいたいだけ。

 もう、テツオ無しの人生考えられない」


 ああ……


「ハーレムってのは、大勢の女性と共に過ごすって事だ。

 決して王族がする事じゃない」


 やっぱりお前は……


「それでも、テツオとずっと居られるなら、テツオの言う事全て受け入れるし、王族も英雄も捨ててもいい」


 そう言うと思ったよ。


「そうか……それがお前の覚悟だな。

 分かった。

 お前の事は俺が絶対に守る」


 そう言って、リリィを抱きしめた。


「ああ、テツオ。

 私はずっと貴方のモノよ」


 なんだこの台詞の重量感は?


【魅了】も掛けてない女性から、彼女いない歴イコール人生の俺なんかがこんな台詞を言ってもらえる時がまさか来るだなんて。

 なんか、男としての自信がついてきた気がする。


 リリィを抱き締め、デカスのテツオホーム四階浴室にある【転移】でしか入れないプライベートスパへ直行。

 二人っきりで落ち着いて風呂に入る際はこちらを使う。

 露天なので外の景色が一望でき、非日常感を演出している。


 後ろから俺にもたれかかるリリィの腕に手を回し、魔石時計を調整してやる。

 手からピリピリと魔力を放出させながら、リリィの耳元で話し掛ける。


「お前が睡眠や気絶とかの状態異常になった時でも、瞬時に俺にアラームが鳴る様にしとくな」


「ありがとう。私は常にテツオに守られてるのね」


 リリィが俺の頬にキスしながら礼を言う。

 その後、リリィは言葉を続ける。


「私ね、もっと強くなりたいから、エルフの戦士長アムロド様に稽古つけてもらう事にしたの。

 いつでも来ていいって言われたわ。

 だから、エルフの国に行ける宝玉しばらく借りるわね」


 自分なりに力不足を感じていたのか、やはりここは意見を尊重するべきだろう。


「ああ、もちろんだ」


「テツオはこれからクランや悪魔討伐の仕事が増えて忙しくなると思うわ。

 テツオに予定がある時にエルフの国に行くから、私と稽古したい時や一緒に居てくれる時は教えてね」


 ここまで考えていてくれてたとは。

 しかし、アムロドは無愛想だが超絶イケメンだ。

 人間ならすぐ惚れてしまう可能性もなきにしもあらず。


「アムロドに惚れるなよ?」


 リリィは俺の顔をジーっと見た後、急にフルフルと震えた堪らない顔になっている。


「ああ、テツオ!

 ヤキモチ焼いてくれるの?

 私はこんなにテツオが好きなのに!

 もう、好き!好き!大好き!」


 湯を波立たせながら俺に跨り、軽い興奮状態で好きを連呼しながらキスの嵐を見舞う。

 突如アラームを鳴り、ビクッとなる。


 俺の魔石時計に、リリィの異常をお知らせします、と表示された。


 え?この興奮状態で鳴るの?

 感度調整難しいな。


「ちょっと落ち着け!」


 湯の中で長針を時計に差し込む。


「はあぁん!」


 その体勢のまま宙に浮き、【風魔法】で瞬時に身体を乾かし、そのままサルサーレ宿屋のベッドへ【転移】して戻る。

 とどめと言わんばかりの激しい怒涛のマッサージに何度も限界を迎え、疲れ果てたリリィはそのまま熟睡した。


 リリィの頬にキスをし、シーツを掛けて宿屋を後にする。


 ソニア、リリィと二連チャンマッサージは流石に気疲れした。

 エルメスというご褒美を貰うには、万全の精神状態で迎えたい。

 ひとまず、一仕事をしにデカスへ戻ろう。


【転移】


 ——デカスドーム・テツオホーム


 三階プライベートルーム


 まずは、メルロスをチェックしよう。


 目に自分の魔石眼鏡を装着する。

 これは俺の魔法程の効果は無いが、自動的に【解析】【探知】することが出来る魔法の眼鏡。

連結リンク】効果により、別の眼鏡に映っている映像を観る事が可能だ。

 つまり、メルロスが掛けている眼鏡を通して、俺もメルロスの見ている視界を共有する事が出来る。

 一応、俺の操作により、今は俺が一方的に覗き見するだけだが。


 そして、テツオホーム各階全フロアには魔石レンズが余すとこなく取り付けられている。

 もちろん、その映像もこの眼鏡で見れるが、この私室に何枚も設置された何インチにでも調整可能な大画面魔水晶モニターでチェック可能になっている。

 ちなみに記憶媒体型魔石ディスク一枚で数週間分の映像を記録しておける。

 あくまで、彼女達の治療や、安全を熟考した末の装置なのであります!

 決して、盗撮用ではございません。


 ——メルロス視点


 メルロスの目の前には、下着姿をした女性達が一同に並び、何やらチェックをしている。

 何を見ているんだ?


 どうやら眼鏡の【解析】機能を利用して、身長、体重、スリーサイズまで測定しているようだ。

 俺の眼鏡に次々と数値が映し出されていく。

 なんていい機能なんだコレは。


 終わった者から指示を受けストレッチを始め出した。

 いやいや、ゆっくり休ませろって言ったのに。

 いや、待てよ。

 就寝前のストレッチは熟睡できると聞いた事があるぞ?

 まぁ、任せたからにはしばらく様子を見よう。


【転移】


 ——デカスドーム・デカスファーム


 二メートルを少し超えるくらいの全身ガルヴォルン鉱石で出来た、人間に近いフォルムをした細身のゴーレム達が、各作業を黙々とこなしている。

 目には魔石が嵌め込まれ、青い光が正常に動作している事を示している。

 緊急時、戦闘時は赤く光る。


 デカス山頂の祠に居た奴より遥かに強く頑丈だ。

 参考レベルはネット値でレベル60。

 サルサーレの街なら数体で滅ぼせる力があるかもしれない。


 そんな驚異的な戦闘力を持った巨人兵達が、テツオファームに張り巡らされた用水路の水流、水質をチェックしたり、畑を耕したりする光景は異様の一言である。


 一夜漬けで作った割にはしっかり動作している様で安心した。

 無論、このゴーレムが見る映像も自由に見る事が出来る。

 抜かりなしだ。


 リリィがもしピンチの際には、これと同じモデルのガルヴォルンゴーレムが瞬時に召喚されるので、アムロドとの訓練時には遠隔操作でオフにしておく必要があるな。


 ふと、メルロスが気になり、視点を切り替える。


 ——メルロス視点


 夜十一時を過ぎたにも関わらず、まだ全員が下着姿で列を作って歩いている。

 ウォーキングのチェック?

 え?何をやってんだよ、メルロスは。

 音声を繋いで話しかける。


「メルロス、何やってんの?」


「え?あれ?ご主人様?」


 メルロスは周りをキョロキョロして、俺の姿を探している。


「眼鏡を通じて、俺の声が直接お前の頭の中に流れてるんだよ。

 とりあえず、今日はもうみんなを寝かせなさい」


「あ、はい。

 いえ、畏まりました」


 その後、様子を見てたが、言い付け通りちゃんと寝たようだ。

 メルロスは根が真面目な分、言う事は素直に聞くみたいだ。

 真面目なのに、何でエルフの国を出たのだろうか?

 まぁ、深い事情があるだろうし、機会があればいつか聞いてみよう。


 あ、なんか、下着姿の美女達を見てたら、ムラムラしてきたなぁ。


 今からエルメス様に会いに行こうかな!


 よし、君に決めた!


【転移】



 ——エルフの国・長老の部屋


 扉をノックして部屋に入る。

 中にいるのは分かっているんだ。

 スタンバイ……スタンバイ……

 突入ゴー


「こんばんは」


「ああ、こんばんはテツオ。

 エルフの国には夜など無いがな、フフフ」


 エルメスが微笑を称えたまま椅子に座っている。


「や、約束通り褒美を貰いに来ました」


 やはりこれだけの超絶美女を前にすると、緊張してしまうな。

 これが庶民に刷り込まれた意識かもしれない。

 だが、俺の土俵に引き摺り込んでやる。


「以前、勇者から服を貰ったと言ってましたね?」


 エルメスはコクリと頷いた。

 今は、エルフ族特有の柔らかい生地のローブを何枚も重ねて纏っている。

 エロさは皆無だ。


「私からはこれを差し上げます」


 エルメスに予め用意しておいた服一式を渡す。


「これは私が以前いた世界で日頃食べている動物に感謝する為の礼服です。

 是非着て貰えますか?」


「なんと!それはありがたい。

 是非着てみる事にしよう。

 暫し外で待て」


 言われた通り、部屋から出て待つ。

 ああ、エルメス様がアレを着てくれると想像するだけで興奮する。

 見ただけでフィニッシュする危険性もはらむぞ?

 案外この待つというのは、大事な時間の使い方かも知れないな。


 耳を澄ますと、うーむうーむと悩んでる声がする。

 ちゃんと着方を教えてから出たんだが。


「入ってよいぞ」


 一人で焦らされた気持ちになって入室し、エルメスを一目見る。


 うおおおおおおおおおおおおおおおお!


 少し恥じらいながら内股で立つエルメス様!

 その格好はバニーガール。

 頭にうさ耳の飾りを付け、首と手首には輪っかの様な襟と袖があり、体はギッチギチに締め付けた胸が溢れんばかりのハイレグバニースーツ。

 足は黒の網タイツに赤いピンヒール。


「これで、ちゃんと着れているのか?」


 眼鏡を掛けて、この映像を焼き付ける。


「似合ってますよ、とても」


 可愛い、可愛いよ、バニーちゃん!


「さ、俺の上に座って下さい」


 バニー姿のエルメスがコツコツと近付き、俺の右脚に座る。

 柔らかさ、重さ、暖かさを全神経を集中させて堪能する。

 次に完璧な腰のくびれを摩る。

 くびれをマッサージするだけで時間を忘れて酒が飲めそうだ。

 エルメスが俺をギュッと抱きしめるまで夢中だったようだ。

 なんて完璧なんだってばよ。


 エルメスは感じているのか、足が少し震えている。

 俺がハイエルフの高みに通用している証拠だ。

 美女の綺麗な目と見つめ合いながら、征服感にクラクラする。


 しっかりしろ、テツオ。

 ゴールはもう少しだ。


「エルメス様、壁に手をついて」


 エルメスを立たせ、壁に手をつかせる。

 後ろ姿も素晴らしい。

 なんだこの芸術品は。


「これでいいのか?」


 俺に振り返り、心配そうに見つめてくる。

 突き出した尻と腰の剃りと顔の角度が黄金比を形成している。

 これは、保存だ。

 エルメスは自分がどう見えてるかとか全く計算してないから凶悪だ。


「緊張してます?」


「ああ、初めてだから……な」


 二千年寝かしたという患部をマッサージしていく。

 腰をがっちり掴みエルメスの患部までノンストップで到着する。

 ああっ!これがハイエルフの抱擁!


 あ、もう我慢できないっ!


時間遡行クロノススフィア


 思わず時間を戻してしまった!

 こんなにあっさり誓いを破るだなんて。

 でも、これは不可抗力だ。

 フィニッシュする直前で時間を戻しているっ!

 つまり、不成立っ!

 ノーカウントっ!

 この勝負はっ!


 こんな完璧超人だとは、誰が分かった?


 気を取り直し、【水魔法】で作り出した硬質ゲル状ウォーターベッドでバニーエルメスを寝かせ、改めてマッサージをする。

 やはり、明らかに人間とマッサージ器の作りが違う。

 だからといって淫魔程エゲツない作りではない。

 とはいえ、マッサージ器の内部はただでさえキツキツなのに、無数のイボイボな突起物が、膨らんだり縮んだり、吸い付いたり、締め付けたり、波打ったりしてくるので、入れているだけでも、途轍もなく気持ちいい。

 高性能なマッサージ器だ。


「エルメス様、それちょっと刺激強いです。

 もうちょっとゆっくり出来ます?」


 情けないが降伏だ。


「ゆっくり?なんの事だ?」


 !!


 エルメスは上気した淡いピンクの頬で、気持ち良さに身を委ねている。

 まさかの無意識!

 オート機能でこの動きが出来るのか!?

 ハイエルフげに恐ろしき。




 ——長い夜になりそうだ。

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