第15話 そんな事、考えなくていいよ
「……」
「……」
ツーショットがこんなに心をくすぐるとは思わなかった。
見ているだけで心が跳ねそうなのに、俺も結夢も液晶に映った一枚の画像から目が離せなかった。
なんだこの画像に映っている二人は。
目前の勉強さえ手に着かないような、新鮮な恋人同士じゃないか。
「……ちゃんと、他の人には見せない様に、しますから」
「えっ……まぁ」
結夢はそう言って、その画像を閉じた。
削除するでもなく、スマホをポケットに閉じ込めた。
「……」
「……」
ああ、青空が綺麗だ。
青空が綺麗だ。青空が綺麗だ。青空が綺麗だ。青空が綺麗だ。
青空が綺麗だ。青空が綺麗だ。青空が綺麗だ。青空が綺麗だ。
青空が綺麗だ。青空が綺麗だ。青空が綺麗だ。青空が綺麗だ。
……よく見たら何か曇りそうだし!
秘密基地行く頃には寒い曇り空を眺めながら弁当食べる事になりそうだなぁ。
ごめんなさい、こうやって誤魔化してないとおかしくなりそうなんです。
結夢も隣に座ったベンチの上で、興奮冷めやらぬ様子で視線が行ったり来たりしてる。
下手すりゃ不審者のレベルなんですが。
「えっとさ」
「あのっ」
そしてこういうタイミングで大体被る。
そして俺達二人とも、せっかくのチャンスを棒に振って言葉を失う。
……しかし結夢はともかく、俺はなんでこんなにドギマギしてるんだろう。
結夢もそもそも、何でここまで色々俺を勘違いさせるよな言動なんだろう。
少なくとも三年前までは、こんな風じゃなかったんだけどな。
「……結夢。一応聞いときたい」
「は、はい……」
「嬉しかったか? 俺たち二人で写真を撮れて」
「……本当は、菜々緒ちゃんと三人で撮りたかったです……」
「瞬き二回」
「あっ」
ごまかしている。
きっと菜々緒と来たかったのも嘘ではあるまいが、ごまかす程にモヤモヤしているのも確かの様だ。
「俺は……正直、何故か嬉しい」
「そう、なんですか……?」
「なんで意外そうな顔をするんだ」
「だ、だって……塾講師として、二人写ってる画像が見られたら……先生、辛くなるかなって……」
「まあ、そりゃそうだ」
そんな画像が広まったら、大クレーム。そしてクビだ。
塾講師だからまだいい。解雇程度だから。
教師だったら、もしかしたらニュースになっていたかもしれない。
教師と生徒がイチャイチャできるラブコメなんて、残念な事に創作の世界でしかあり得ない。
「でも……嬉しいんだから仕方ないだろ」
「……」
結夢の頬が真っ赤になるのも分かってたから突っ込まない。
「もし三年前だったら、俺はきっと普通に撮って、思い出の1ページとして普通に忘れていたような気がする」
「……私は、きっとずっと大事にしていたと思います……」
多分これ、結夢の心の声。
「でも、今の俺はそれが出来なくなってる。それは認めざるを得ない、事実だ」
「……!」
「もし君がさっき写真撮ったのを後ろめたく思ってるなら、それはいらない。俺はさっき君とツーショットを撮れた事を後悔してないから」
「ほ、ほ、そんな、あの、私への気遣いなら……」
「さっき君と手を繋いだことも、俺の意志だ。だから結夢は何にも考えなくていいんだよ」
思わず顔を逸らしちまったよ。
暫くして、俺達は秘密基地に歩き始めた。
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