第40話 再開
不倫相手と再婚し、離婚し、元妻とよりを戻そうとしたら、息子に殴られ、数日後に、元妻から「あなたとは再婚しません」と電話があった。
全部、自分が招いた結果だと、佐藤カツヤは借りたアパートの薄汚れた天井を見ながら思った。
息子のミタカに殴られた事は、痛くはなかった。なぜなら殴ったミタカが泣きながらヒカルを睨み付けていたからだ。
必死に母親をかばい、守りながら。
それを見た時、自分は父親としては戻れない事を悟った。
佐藤カツヤは、子供の頃から「お前はダメな子供だ」と言われて殴られてきた。
だから、自分を認めてくれる自分よりも強い人間に惹かれ、すがった。
しかし、自分の息子のミタカは、違った。
父親が不倫の果て、母親を重度のうつ病にさせ、ミタカまで母親から奪い辛い人生を送らせたのに、ミタカは、血の繋がらないさやかちゃんを、ミタカなりに守っている。
いくら後悔しようが、力ずくで奪ったミタカも何もかも、もう戻らない。
ぼんやりと薄汚れた天井を見ていたら、ミタカの離婚した妻のエリからLINEがあった。
ミタカさんと正式に離婚しました。今までお世話になりました。短い間でしたが、ミタカさんとは、素敵な結婚生活をおくれました。カツヤさんがお義父さんで良かったです。 エリ
既読にしたまま、返信はしなかった。
エリのLINEに、カツヤは大声をあげて泣いていたからだ。
こんな酷い自分でも、良かったといってくれる人間がいた事に、それも酷い仕打ちをした息子の妻からの言葉に、カツヤは情けなさと、感謝で涙かあふれた。
これからは、ミタカや別れた妻達、さやかちゃんやエリさんが、どうしようもなく困った時に、頼れる父親になろう、頼れる親戚になろう。
贖罪を償えるのは、いつになるかは分からない、でも頼られた時に頼れる人間になろう。
佐藤カツヤは、やっと自分と人生を受け入れる事が出来た。
長い長い時間をかけての、贖罪の始まりでもあり、佐藤カツヤの本当の人生の再開でもあった。
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