5-36 迷宮探索➇ 戦闘 ギルマス~フフル&フェルト
5-36 迷宮探索➇ 戦闘 ギルマス~フフル&フェルト
ばあちゃんの方はもうほとんど心配はない。
敵➆の動きが鈍ったことでほぼ完封だった。
モース君に突っ込みを入れたり、クレオを観察する余裕すらあった。
はあちゃんのふるう刀は幅広の曲刀で、日本刀のような構造をしている。
片刃で反りがあり、しのぎの形も峰も刀に似ている。
柄も刀剣とは違うが巻き紐がなされなんとなく刀剣っぽい見た目だ。
ただ大きさは違う。
刀身の幅は10センチほどもあり、長さは1メートルをゆうに超える。
ばあちゃんは鬼娘で身体能力が極端に高い種族だ。
普通なら重たいだろうこんな刀を片手でぶんぶん振り回せるのだからすごい。
まあ、敵➆もそのばあちゃんと、打ちあえていたんだから大したものだ。
たとえ悪霊にブーストされていたとしても。
敵⑦は斧使いだった。短い柄のバトルアックスを両手で持ってブイブイ攻めていた。
ばあちゃんの斬撃だって受け止めていた。
さっきまでは。
だが今はパワーダウンしてしまって一撃ずつ押し込まれている。
それどころか自分の斧自体ノ重さを持て余しているように見える。
ふらふらだ。
ここまでくれば決着はすぐだった。
地面を擦るように繰り出された鬼の大剣が跳ね上がり、斧使いの腕をはねた。
血の糸を引きながら飛んでいく左手。
返す刀で踏み出していた右足がはねられた。
それなりの切れ味はあるようだが俺の作った剣ほどではなく、抵抗があるようで敵⑦は振り回されるように倒れた。
「さて、こんなもんかね。おーい。こいつを縛り上げて…」
ばあちゃんは最初からこいつを殺す気はなかったようだ。
後ろに控えていたギルドの職員を呼び拘束しようと指示を出す。
だがそれがうまくいかないことは明白だった。
なぜなら邪壊思念を受け入れた段階でもうこいつらは死んだも同然だから。
倒れた男は手足を失ってもがいている。だがそれだけじゃない。もがき方がホラーだ。
ぶら下がった手足を振り回す魚のようなビチビチとした暴れ方。
その途中であおむけになったかと思ったら…
グゲエ…ゲゲェ……
胸のところがボコンと膨らんで、次の瞬間中心が裂けて中から黒い霧が吹きだした。
その黒い霧は徐々に勢いを増し、それにつれて男の胸が噴火でもするかのようにメリメリと開いていく。
「何だいこりゃ!」
さすがのばあちゃんもドン引きである。だが現象として起きたのはこれまで。
後には邪懐思念が抜けた男のただの死体が転がるのみだ。
かなり怪奇ちっく。
俺は魂の回収を試みたが当然のように失敗。魂なんか残っていなかった…
◆・◆・◆
「それそれなの~」
「ぴゅるるるるるるっ」
フフルとフェルトのコンビは絶好調だった。
もともと接近戦などしない二人だ。
相手になったのは敵⑧、こちらは魔法使いだった。
これに対して二人の戦術は上空からの魔法の撃ちおろし。
まあ、普通に剣の届かない場所にいるんだ、魔法使いが出てくるしかないだろう。
しかも移動はフェルト。攻撃はフフルと基本的に役割が分かれているのでその攻撃はよどみがない。
フェルトが上空を飛び回り、フフルが魔法を撃ちおろす。
キャノンオウルのフェルトは極めて優秀な空のハンターで、下から飛んでくる攻撃など物の数でもない。
そして旅猫族は触媒なしで魔法が使える種族だ。それは魔力の直接制御ができるという意味でエルフたちと同じである。
それは魔法に対する理解が進むことで魔法の威力が上がり、さらに効率が良くなるという意味を持っている。
そしてフフルは俺の家族だ。
ルトナにくっついて旅に出たので最近は会っていなかったが、それまでの間勉強を教える時間はたっぷりあった。
さて昔は『世界は四大元素でできている』などと考えられていた。科学が進んで『んなわけないじゃん』という認識が広がったが、さらに科学が進むとやっぱり正しいのでは? という話に戻ってきたりする。
つまり世界は『気体』『液体』『個体』でできている。
これは分子運動の状態によって区別される。
分子運動が最も低い状態が個体であり、運動が活発になるにしたがって液体、気体と変化する。そして最後が『プラズマ』だ。
火というのは何か。それは幻である。
火という実態がこの世に存在するわけではない。火というのは物質が燃焼するとき発生するエフェクトなのだ。
だから火というものが目に見えなくてもエレメントとしての火は存在できる。プラズマとして。
そして普通にものが燃えるときに発生する熱量は千度前後だがプラズマとして考えれば火属性の攻撃力は数千度。下手をすると数万度まで可能になる。
とそんな理屈を教えてしまったのだ。
さらに旅に出るときに魔法の杖も渡しておいた。
別に直接魔法が使えるからと言って触媒を使ってはいけないという法はない。
一度に送信できるデーター量が増えたり、制御が上がってもだれも困りはしないのだ。
いや、敵の人は除いてね。
フェルトの長い杖の先に小さな、そして白く輝く光球が生まれくるくる回る。
その球は小さいが攻撃力は下にいる魔法使いの作る火球の比ではない。
魔法使いも能力がブーストされているせいですさまじい大きさの火球を作り出している。赤く燃える2メートルにも及ぶ火の玉。これがファイアーボールだというのだからすごい。
そして当然のように魔法の打ち合いになった。
「ふへへへっ、そんなちっこいライトボールで俺様のファイアーボールに対抗しようってか? バカじゃねえのか? ぎぁはははっ」
魔法使いかなり切れてます。
そして互いの魔法が発射される。
2メートルの火球が空に浮か二人のもとに向かっていく。迎え撃つのは五センチほどの小さな白い光球。
ゲラゲラ笑う魔法使いだが次の瞬間盛大に漏らした。
敵⑧の放った2メートルにも及ぶ火球がわずか5センチの火球に粉砕されたからだ。
白い火球は少しだけ軌道をそらし、敵⑧をかすめるように直進。さらに彼の張った防御障壁をたやすく打ち破り、その髪の毛を一瞬でパンチに変身させた。
いや、アフロか。
よほど怖い思いをしたようだ。
「とってもよわいの~、ダメダメなのー」
フフルの杖の周りで火球が回転している。
俺のガトリング砲を参考に改良させた連射火球の魔法だ。
杖の先端でらせん状に動く火球は一発が発射されると次の一発が生まれ、先行する火球が順次打ち出され、順番が回ってくる頃には正しい攻撃性能を持った火球へと成長している。
名付けて
次々と打ち出される白い火球。敵⑧にはすでに対抗手段などなかった。
しゅぱぱぱっと一連の連射音が終わったとき、そこには何かの燃えさしがわずかに残っているだけだった。
「こいつらがいちばんようしゃねえ…」
「ぴ~ぴよぴよ~(出番がなかったー)」
フェルトが不満げに鳴いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます