3-12 ドカーンとドワーフ大登場

3-12 ドカーンとドワーフ大登場。



 お肌すべすべ、オッパイもお尻もツルテカや!

 良い夢見させてもらいました。


 お風呂でした。


 その後、夜間脱出を企てたが失敗した。

 獣人の人って夜はみんなで団子になって眠るんだよね。

 俺は女性陣二人の抱き枕。


 できればエルメアさんにはシャイガさんに抱きついて寝てほしい。


「あらあら、良いのよ、それはまた別の話だから」

「べつって?」

「あら。ルーには教えたでしょ?」

「おーっ」


 なにがじゃ!


 よし、明日の朝から始動だ。


 ◆・◆・◆


「さあ、お買い物行くわよ~」


 ずるずる。

 両脇から抱えられて運ばれる宇宙人な私。

 ダメじゃん。


 ◆・◆・◆


 亭主元気で留守がいい。というわけではないのだろう。ラブラブだし。

 でもシャイガさんは今日もギルドでお仕事だ。

 そして。


「キャー綺麗」

「わっ、可愛い」


「あっおいしそう」

「いいにおいねえ」


 うん、女性の買い物というのはえてしてこういうものである。

 たったこれだけの原理で行動できるのは女性の特権である。と前世の母親が言っていた。

 まあ多分そうなんだろう。


 俺達が歩いているのは俗に言う商店街というやつだ。

 食べ物屋があり、雑貨屋があり、金物屋がある。

 ついでに武器屋があって防具屋があって魔法薬の店がある。

 うんやはり異世界だな。


 町並みもここ数年の盛況を受けて新しくなっているようで、全体的に新しく、そして統一された意志のようなものが感じられた。

 まあ建物が石造りで質実剛健な感じの中に洒落たデザインが取り入れられなかなかいい感じなのだ。ここら辺は伯爵が招聘したたくさんのドワーフの力が大きいらしい。


 その商店街の道を嬉しそうに尻尾を振りながらご婦人方は練り歩く。


「ん?」


 俺は今二人が通り過ぎた家を見つめた。

 木造だ。

 しかも古めかしい。

 木造で土壁な家が商店街の店なみの中にいきなりポツンと現れた。


「はて、ここだけずいぶん様子が違うが…」


 まるで洒落た商店街の中に一件だけ古めかしい町工場が現れたような…


「おう、坊主、びっくりしたか?」

「おじさんは?」

「うん、まあこの商店街の人だ」


 あとで知ったのだが商店街の顔役だった。商店会長という所だろう。


 そのおじさんによると、『ここには一人の偏屈なドワーフが住み着いていてな…昔、勇者様から聞いたキーカンシャとかいうのを再現するんだって言ってな、そればっかりでよ、いい加減建物を立て直してくれんと商店街全体のイメージってものがよ』…なんて状況らしい。


 だがその建物、一部が新しい壁になっていたりして立て直しもやっているような…


「いやー違うんだ…これが…」


 ドドカーン!


「あ、爆発した」

「そうなんだ、たまに爆発するんだよ、だからその方向は新しくなるんだけどな…」


 いや、それ以前に商店街に爆発するようなものがあっちゃダメだろ。

 そんなことを考えていたら何かか『きゅるるるるっ』と煙をたなびかせながら飛んできて、俺の前にポテリと落ちた。


 ドワーフだった。

 おい。


 ◆・◆・◆


 ドワーフはやっぱりチビキャラだった。身長五〇cmぐらいのミニおっちゃんだった。

 腕が大きくて短足。飛行帽のようなものをかぶり、目にはゴーグル。顔の下半分は髭だ。

 昔のゲームのポリゴンキャラみたいでなかなかかわいい。


「あらあら、これはまたいかにもなドワーフね」


 ああ・・・やっぱりドワーフはこういう種族であったか。

 あとマーメイドもいるんだよな、どんな種族だろう。もうここまで来ると楽しみになって来るよ。


「ドワーフの小父ちゃん大丈夫?」


 こらルトナ、棒で突っつくんじゃありません。


 ◆・◆・◆


「困るよシダ爺さん」


「おしい、『ド』じゃなくて『ダ』か!」


「なんのことだね、ワシの名前は昔からエルシダニア・グラムニアルゼスだが?」


 だからシダさんか…こういうとこはあれだ、あれを言わないと。


「おっちゃん、背中がすすけてるぜ」


 いや、背中どころ全身煤で真っ黒けだけどね。


 にしてもいかんな、ドワーフにあった感動で少し暴走気味だ。

 俺は少し冷静さを取り戻してドワーフが飛んできたほう、つまり町工場のような建物を見た。


 ものの見事に壁がなくなっている。

 仲が丸見えだ。

 そして中には銀色の機械がおいてある。たぶん三台おいてある。爆発したのはその内の一台だ。

 そして生きのこっている二台の機械は勢いよく蒸気を吹きあげていた。


「蒸気機関?」


「おお、分かるのか若いの!」


 商店会長につかまってお小言を食らっていたドワーフのおっちゃんは勢いよく俺に飛びついた。いやだ、俺まで煤けちゃう。


「その通りだ、これはキーカンシャを動かすための蒸気機ー関なのだ!!」


「いや、これじゃ動かないだろ」


 ついぽろっとでてしまった。

 だって構造が変なんだもん。


 でっかい密閉型の釜があって、その下で火が轟々と燃えている。

 その釜の一か所から先細りのノズルが伸びていて、そこから勢いがよく『ぴー』とか音を立てて蒸気が吹き出しているのだ。

 ここまではいい。


 だがその蒸気の行く先が水車のような車輪だった。

 もう一つは扇風機のようなプロペラだった。

 つまりこの蒸気機関は吹き出す蒸気の勢いでプロペラなり車輪なりを回そうとしているのだ。

 蒸気の圧力はなかなかのものらしく、プロペラも車輪も一応くるくる回っている。


 だがそれにどの程度の力があるのか。

 走らんよこれじゃ。

 まだロケットみたいに噴射で進んだ方が可能性がある。


 シダさんはがっくりと手をついた。


「そうなんだよ…こうして浮かしておけばちゃんと回るのだ、じゃがこの力では車を進めるほどの力がない…圧力が足りないのだと考えて釜の改良を進めているんだがのう…」


 そう言うと彼は壊れた釜を指さした。


「ああ、なるほど、内圧に耐えられなかったのか…」


「圧力を上げて勢いを良くしようとすれば力が出る。だが釜が壊れてしまう、釜を丈夫にしようとすると今度は釜が重くなってしまう…」


 いつまでたっても不可能鼬ごっこ、今回は自信作の釜を使って極限まで圧力を上げたが爆発してしまったと。


「おっちゃんよく生きてるね」

「ドワハハっ、ワシらドワーフは火と土の妖精族だ、熱や圧力では傷などつかんぞい」


「あんたは平気でもワシらが死ぬだろうが」


 商店会長ナイス突込み。ナイスげんこつ。


「頼むからこれをやるんならもっと人気のないところに行ってくれよ…」

「断る、面倒臭い、研究の時間が減るだろうが」


 それにここだと飯の調達も簡単なんだそうだ。

 確信犯だなこいつ。


「あー、もう、どうにかしてくれよだれかー」


 商店会長の嘆きは深い。

 仕方ない、ここはひと肌脱ぐか?

 まあ役に立つかどうかは知らんけど…ちょっと気になる台詞があったよね。


「ねえねえ、おっちゃん、さっき言ってた勇者様って何のこと?」


「おう、勇者か? ワシの昔の友人でな、せーぶとかいう所から来たんだそうだよ。そこはキーカンシャというでっかい乗り物がジャジャポポ走っておってな、一度にたくさんの人や物を遠くまで運んでいたのだという。

 ワシはその異世界の話を聞いて心惹かれての…ずっと蒸気機ー関を研究しているのよ」


 異世界、異世界ね、しかもセーブ? 西部か?

 ふーん…興味深い…


「おっちゃん、僕にその話詳しく聞かせてよ、母さん、僕少しおっちゃんの所で遊んでいく」


「そう? まあドワーフに会いたがっていたものね、じゃあお買い物すんだら迎えに来るわ」

「うん、お願い」

「じゃあ迎えに来るわね」


 ルトナはちょっと逡巡してから買い物を選択した。

 女の子だねえ。


 さて、おっちゃんを締め上げて…じゃないや、そそのかして…でもないか、えーと、うまく誘導して勇者と異世界の話を聞かないとな。

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