3-06 説明回、スキルとは何ぞや
3-06 説明回、スキルとは何ぞや。
その扉をくぐるとそこは小ぢんまりとした部屋で、とはいっても二〇畳ぐらいはあると思うのだが、床が磨き抜かれた黒い光沢のある床で、入口の反対側に小さな祭壇が築かれていてそこに像が飾られていた。
技能神ナーディアスとその従神たる六技神の像だそうだ。
この七柱の神さまがこの神殿で祭っている神さまということだ。
あまり大きくはなく人間よりも一回り大きいぐらいの大きさで、造形の素晴らしさかはたまた神さまの威光かかなり好感の持てる像だった。
つまり芸術的ということだね。
この部屋そのものが鑑定のための魔法道具のようなもので、本鑑定のような細かい作業は神殿にあるこの部屋でしかできないらしい。
「さて、せっかくだからスキルについて少し説明しましょう」
ミディオン一級神官は鑑定の前に講釈を垂れるらしかった。
『あの方はこの神殿に三人しかいない一級神官様なんですが、少々能書きが好きな方でして』
お付きの神官さんがそっと教えてくれた。
まあ、こっちは知らないことが多過ぎるから能書きが聞けるのなら歓迎ではある。
「そもそもスキルというのはその人の努力が形になったものです・・・」
一旦スキルのことは置いておこう。
スキルがなかったとしても毎日毎日剣術の練習をしているとその動きというのは体に染みついて行く、最初は意識して体を動かさないと動けない俺達も練習を繰り返すことによって無意識に、しかも失敗なく体を動かすことができるようになる。
これも言ってみれば『スキルが生えてきた』と言っていい状態だろう。
この世界ではそれがもっと顕著になる。
剣術の話をしよう。
開眼とでもいえばいいのだろうか、練習を続けていき、それが身に染みついて行き、有る一線を越えると剣術というものが『理解』できるようになる。たとえば刃筋の通し方とか、風の受け方とか、無駄のない動きとか、そう言うものを総合的に把握できるようになる。
これがスキルを取得したという状態だ。
なので無駄がなくなり疲れにくくなるし、的確な剣撃によって威力も上がる。
努力がスキルという形で結実するとぐんと実力が上がるらしい。
逆に言うとゲームのようにスキルを取得すればいきなり強くなれるわけではない、強くなるべく努力したからそれがスキルという形で結実するということだ。
幾分か魔法的なところはあるようなので、努力によって自分の中にその技能に即した『回路』のようなものが形成されるのだと考えられている。これがこの世界のスキルというものに対する認識だ。
この手のスキルを『技能スキル』といい、『裁縫』とか『料理』とかいろいろなものがある。
他にも『技スキル』というのもある。
これは聞いたところから考えるに『必殺技』であるらしい。
前提条件として『剣術』スキルを持っていて、その人が『地擦り残月』とか『燕返し』とかの剣技を練習し、それが身について一線を超えるとその技が『必殺技スキル』として身につくわけだ。当然命中率も威力も格段に上がる。そして応用も自在になる。
この場合『会得』という言葉が似合う。
中にも魔力を消費する技もあるらしいが、スキルがあるとないとではその効率には雲泥の差が出る。
ちなみに裁縫スキルを持っていると運針を自在に正確に行えるそうなのだが、裁縫スキルの必殺技に『
技能スキルや技スキルのように努力で手に入れるものを『個別スキル』というらしい。
次は『統合スキル』もしくは『
これは個別スキルを集めることで生えてくるスキルだという。
例えば『武術家』というジョブスキルがある。
このスキルは『格闘術』であるとか、『気配察知』であるとか、『魔気功』であるとか、そう言うもろもろで構成されているらしいのだが、こういった個別スキル習得していくとある日ジョブスキルとして結実する。
必要なスキルをある程度集めると総合的なスキルに昇華するということだ。
だが全部は必要ないらしい。
一〇の個別スキルで構成されているジョブスキルならその内六とか、七をとるとそのジョブスキルに昇華し、おまけとして残りの三か四もついてくるという大変お得なスキルなのだそうだ。
能力強化スキルというのはこのジョブスキルの中にしか存在しないらしい。
筋力アップとか、敏捷アップとかはジョブスキルをとった時のおまけでしか手に入らないのだ。
そしてこのジョブスキルをとるとその仕事はものすごく楽になるし、また良い仕事ができるようになる。
『農夫』なんてジョブスキルもあるがバカにするなかれ、これを持っているといないとでは収穫が倍も違ってくるらしい。
恐るべしジョブスキル!
この所為かここで生きる人はジョブスキルを手に入れることを目指すのが自然な流れなんだという。
まあなかなか大変らしいけどね。
「つまり、生まれながらに『織姫』なんてスキルを持っているルー姉たちはすごく恵まれているということ?」
「そうなるわね。生まれた時から普通の人より一歩前を進んでいるようなものだから」
シャイガさんは子供のころからの英才教育で織姫の他に『武術家』『
しかしそんなすごいのを調べられる本鑑定って、今やる必要ってあるのかな?
無駄に終わりそうな気がするんだが…
「大丈夫だ。これは僕たちの感覚だが、ルティーもディアも何か、一つ抜けている気がするんだよね」
「そうね、一つ覚醒しているような感じ…うん、調べてみて損はないわ。この後も
それにいま家はゆとりがあるから~」
なるほど、無駄にはならないということか…ちなみに鑑定のお値段。
簡易鑑定だと五〇〇リゼル。個別鑑定だと一つにつき一〇〇〇リゼルなんだけど、本鑑定は五〇〇〇〇リゼルもする。
日本円だと五〇万円ぐらいのお金がかかるわけだ。そうそうできることじゃないな。
ちなみにこれは最低線。喜捨なので金額はお任せします。うわーい。
まあ神官さんも人間だから、たくさん喜捨を貰うと頑張っちゃうかもしれない。
今回は俺達は一人一〇、〇〇〇〇リゼル払ったそうな。
わーいお金持ちだー。
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