第155話/雨だらけの私の星

松本梨乃.side


昨日でドラマの撮影が終わり、今日は久しぶりのオフでお昼頃起きた私は寝癖を付けたまま遅めの朝食を食べ、ソファーに座りのんびりテレビを見る。

久々の休息を何もしない贅沢な休日として好きなことをやり満喫したかった。


でも、みのりは今日から映画の撮影で…働きすぎだよとよっちゃんに怒りたいけど、よっちゃんもみのりに付いて仕事をしているはずだから何も言えない。

仕事があることは幸せなことだけど好きな仕事だけを出来ないのが辛い。私はアイドルになりたくて頑張ったのにと考えてしまう。


頭ではアイドルはオールマイティーの仕事だと分かっている。だけど、私がやりたいアイドルとしての仕事はライブだ。

演技がやりたいわけではない。でも…ドラマのお陰で歌番組の出演ができたのは事実で、ドラマに出ていなけれ有名な歌番組には絶対に出れなかった。


CLOVERの知名度もドラマのお陰で知ってもらい、個人名も知ってもらえた。全てはドラマのお陰で…ため息を吐きたくなる。

原作者の奏多みどりってどんな人なんだろう?女性?私のファン?CLOVERをどこで知ったの?と謎ばかり深まる。


私の周りは色んなことに正反対だ。演技の仕事をしたくない私と、女優の仕事を喜ぶ両親や親戚。私はアイドルなのにと言いたい。

きっと、贅沢ものと言われそうだけど…演技の仕事は私には向いていない。みのりやよっちゃん・お母さん達は演技を褒めてくれるけど私にはどこが良いのか分からない。



中学・高校と思い描いていた私の夢は叶った。でも、思い描いていた未来とは違う道を歩んでいるように感じる。

私の夢に女優の仕事なんて入っていなかった。私はステージの上でキラキラと輝くアイドルになりたかっただけなのに。


アイドルって何だろう?と気になり、ソファーに横になり携帯を触る。

アイドルと打ち検索をすると偶像と書いてあり、熱狂的なファンを持つことを意味すると書いてあった。

アイドルは光り輝く存在だ。だからこそ、ファンは崇めたくて熱狂する。


ある意味、宗教みたいだけど私もずっと同じ感情を持ってアイドルを応援してきた。私にとってアイドルは私の心を明るく照らしてくれる女神で生きる糧だ。

いじめもアイドルがいたから耐えられ、アイドルになったからこそみのりと出会え、アイドルは私の道をいつも明るく照らす。


だけど、今はアイドルが苦しい。歌って踊るアイドルだけをやりたい私は現実にもがいている。夢と現実が違いすぎるから。

夢が叶ったのに…やっと夢を掴んだのに、私は路頭に迷う。アイドルって何だろうって、私が思い描くアイドル像が壊れていく。





あれだけ寝たのに…私は朝ご飯を食べた後にソファーの上でいつのまにか寝ていた。

みのりやよっちゃんは朝から仕事をしているのに私は寝てばかりで…だからかな?


嫌な夢を見た。


みのりがどこか遠くに行く夢。みのりに「待って!」と声を掛けてもみのりは止まってくれなくて、私とみのりの間には差が開き、私は必死に追いかけたけどダメだった。


どんどんみのりが見えなくなって、私は膝をつき絶望感に襲われる。なぜか、この時…みのりと一生会えない気がして。


更に追い打ちをかけるように、最後に見えたみのりの横には森川愛ちゃんがいた。

何で、森川さん?と思ったけど私には意味が分からない。だって、分かるはずないし。


これから先、みのりが女優の仕事をするたび、アイドル以外の人と出会うことになる。

みのりが女優の仕事をすればするほど、私との時間が減り、、私だけ取り残される。


何でなの?みんな、アイドルになりたくてオーディションを受けたのに、やっとアイドルになれたのにすぐに次の夢を見る。

何でアイドルが最終地点じゃないの?何で、通過点扱いなの?意味分かんないよ!

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