第107話/1%のDREAM

今日は晴れ舞台で、新規のお客さんを掴むチャンスの日で、最初から最後までアイドルを全うすると心に決めている。

ライブ後、物販でお客さんへのアピールをしながら必死に藍田みのりを頑張った。


いつも必ず来てくれる田中さんに泣きながら「みのりちゃん…おめでとう」と言われ、この時、思わず私も泣きそうになった。

変えたいと思っていた未来が変わっていく。やっと、やっと…未来が変わってくれた。


物販が終わった後、私達は衣装から洋服に着替え、帰る準備をする。いつか、お祝いをしたいねと話し合っているけど、それはメジャーデビューをしてからだ。


「みんな、準備できたー?行くよー」


帰る準備が終わった私達は車に乗り込む。体は疲れているけど良い余韻があり、みんな充実感に包まれている。

確実にステップアップしたCLOVER。まだまだこれからだけど、未来が楽しみすぎる。



駅に向かう車の中で、明日からのスケジュールをトレースする。待ちに待ったドラマの撮影がもうすぐ始まり、私は鮎川早月としてバスケの練習や台詞を覚えないといけない。

やることが多く、大変だけどやり甲斐があり私は考えるだけでワクワクする。


待ち望んだ仕事漬けの日々が始まる。私は二度とアルバイトだらけの日々に戻りたくないし、芸能の仕事だけをしていたい。


脳内のスケジュールのトレースが終わり、携帯で今日のライブについて調べる。基本、エゴサーチは好きじゃないけど、ファンじゃない人達の良い意見・悪い意見をちゃんと知りたかった。第三者の目線はとても大事だ。


携帯でSNSの検索欄にCLOVER・ライブと打ち込むと、CLOVERのライブに初めて行ったよ!と呟いている人が沢山おり、楽しかった!と評判は上々だ。

特に梨乃のダンスを褒めてくれている人が多く、梨乃のギャップにやられている。


そして、私の評判(特に歌)も上々だった。だけど、何で私と梨乃が(あゆはる)がセンターじゃないの?って意見があり…これには苦笑いするしかなかった。

きっと、美香がこの呟きを見たら怒るだろう。美香は負けず嫌いだし、自分に絶対的な自信を持っている子だ。


ドラマが決まる前の私だったらセンターに固執していた。でも、今は外仕事でチャンスを掴み、あんまりセンターに固執していない。

鮎川早月という大役を掴み、心に余裕ができ、今はどのポジションでも輝ける人になりたいと思っているし、外仕事でも輝きたい。


これは我儘とかではなく個人の仕事はグループに還元できるし、内輪だけの人気を得ても卒業したら苦労すると知っている。

芸能界は厳しい世界だ。グループあってこその人気を個人の人気と勘違いし、廃れていったアイドルを沢山見てきた。



私はあんな風になりたくない…



酷い言い方かもしれない。だけど、人気アイドルグループを卒業して上手くいかなくて廃れていった人は沢山いる。

卒業後に成功した人は1%いるかいないかだ。それほどグループでデビューした人は卒業後の困難が待ち受けている。


グループ内での人気と外での人気がイコールにならない世界。だからこそ、ドリームを掴むと煌びやかな花が咲く1%のDREAM。

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