第55話/セピアカラフル
あきら君をファミレスで待ちながら私達はドリンクバーに飲み物を取りにく。私は温かいカフェラテを選び、たっぷり砂糖を入れた。
これから頭を使わないといけないし、きっと精神的にも疲れるはずだ。
早速、甘いカフェラテを飲みながら2人について考える。由香里とあきら君は今現在、高校2年生。学生時代の恋愛は簡単に熱くなったり冷めたりする時期で、あきら君の中で何かが発動したのかもしれない。
もし、由香里があきら君の初恋で、初めての相手だったら…残り香や忘れられない想いなどが簡単に走馬灯のように蘇ってくる。
話し合いで解決できたらいいけど、できなかった場合非常に面倒い。きっと、ストッパーが壊れ、感情が爆発しているあきら君に由香里はしつこく復縁を迫られる。
よく、昔の恋が忘れられない人がいるって聞くけど、私には分からない感情だ。終わった恋は過去であり、今と過去は違う。
「ねぇ、あきら君ってどんな子なの?」
美香がコーラを飲みながら由香里にあきら君について質問をする。この質問は私が一番聞きたかったことだ。
まず、あきら君の性格を把握しないと話が拗れる可能性があるし、衝突する可能性がある。
「あきらは真面目で…スポーツが得意で、勉強も出来たかな」
私はあきら君の性格を聞き納得する。私の勝手なイメージだけど真面目な子ほど、過去に囚われやすい傾向にある。
私は更に気になっていたことを由香里に質問する。私の勘は当たっているはずだ。
「私からも質問いい?」
「うん」
「あきら君って由香里が初めての恋人?」
「あー…そうだね」
やっぱり、当たってた。私の質問に美香が「なるほど」と同意し、「初めての恋人にしつこいぐらい想いが残る人いるよね」と吐き捨てるように言う。
美香はあきら君に嫌悪感を持っているようだ。でも、美香の気持ちも分かる。
私達からしたら、あきら君は由香里を困らせる元彼でしかない。私は苦々しい顔をしながら「ムカつく…」と吐き捨てる美香に苦笑いしながら、さらに質問を続けた。
「あきら君って話をしたら分かってくれるタイプ?」
「多分…でも、どうだろう。わざわざ、ライブに来たから」
確かにそうだ。電話で済ませられるのにわざわざ元彼女の仕事場に押しかけた。
「電話は?あきら君からこれまで電話は一度も来なかったの?」
美香が怒りを必死に抑えながら由香里に質問する。美香の質問は核をついており、物事には順番があるのにあきら君は色々スッとばして突撃を選んでいる。
「電話はなかったよ。だから、今日あきらがいてびっくりした」
「何それ…急に押しかけてまた付き合いたいなんてストーカーじゃん」
美香が眉間に皺を寄せ、憤慨している。これは私も同感だ。あきら君は終わった恋なのにまた自分の中だけで勝手に盛り上がり、またあの頃の関係に戻りたいと勝手に独りよがりな考えに陥っている。
「あきら君はさ…何で今頃、由香里に会いに来たのかな?」
ずっと静かにみんなの話を聞いていた梨乃が由香里に質問する。沈んだ表情で、梨乃の悩みのこともあり気になってしまう。
「分からないよ…だって、あきらとはもう終わってるし」
由香里にとってはとっくの前に終わっている恋であり、分からないのは当然だ。由香里は過去に戻ろうとしていない。
「私が思うに…きっと、由香里のメジャーデビューが決まったからだと思う」
「何それ!嫌がらせじゃん」
梨乃の言葉に美香が今にも机を叩きそうな勢いで怒り、由香里は驚いた表情をした後、悲しそうな顔をした。
「美香…落ち着いて。私が思うに嫌がらせじゃなくて…ただ、由香里に会いたかったからじゃないかな?もうすぐデビューする由香里を一眼見たくて、でも由香里を見て昔の想いが蘇って止めれなくなった感じがするの」
梨乃の言葉にみんな沈黙する。あり得る話であり、あきら君はステージでキラキラと輝く元彼女を見て想いが蘇ってしまった。
でも、それでも独りよがりだ。由香里は過去より未来を向いている。
「それでもだよ…。ゆーちゃんはもうあきら君に想いがないから意味がないし」
美香が怒りを抑えながら、またあきら君に対し苦言を言う。どれだけ、あきら君の気持ちを分かっても、由香里には迷惑な気持ちであり、実際少し暴走している。
「そうだね…。両思いから片思いに変わっちゃったから」
こんなにも恋愛について語る梨乃を初めて見た。私の知らなかった梨乃の一面を知り、戸惑いと緊張が生まれる。
「でもね、初恋って…きっと大事なものなんだよ。自分が馬鹿なことをしてるって自覚できないぐらい馬鹿になってしまう」
梨乃の発言に私の口が閉まらない。梨乃が恋愛についてこんな風に語るなんて思わず、美香も由香里も驚いている。
でも、恋はそんなに人を狂わせるものなの?私には分からない感情だ。
私は恋に興味もないし、恋がどんなものか知らない。恋愛不適合者の私には無縁なもので、狂った恋なんてあり得ない。
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