俺の目がおかしいのだろうか……?
多英さんは、怒ってたけど、私はホッとしたけどな~と思いながら、萌子は総司が待つエレベーターホールに向かう。
綺麗にして行きたいというのは私の気持ちの問題であって、それで課長に、なにか言ってもらおうとか思わないし。
言ってもらっても、なんだか恥ずかしいし。
……言う課長が想像つかないし、と思いながら、総司が、ちょうど来たので止めてくれていたエレベーターに萌子は乗り込んだ。
総司がエレベーターを止めて待っていると、すぐに萌子がやってきた。
「お待たせしまして、申し訳ありません」
と笑って謝ってくる萌子を見ながら、総司は目をそらす。
……花宮がいつもより綺麗に見えるが、気のせいだろうか。
もしや、これは昨日、御朱印のウリ坊が花宮に見えたのと同じ現象っ?
やはり、これは恋なのか……っ?
と思った総司は、ますます萌子と目が合わせられなくなる。
多英がいたら、
「いやいやいやっ。
単に私の腕がいいからですよっ」
と主張していたかもしれないが――。
その頃、藤崎は、花宮と課長はもう行ったのだろうか、と思いながら、ロビーでウロウロしていた。
いや、ふたりはロビーには立ち寄らず、まっすぐ駐車場の方に行ってしまったに違いないのだが。
微妙に外した位置でウロついてしまうのは、気にはなるが、仲良く出かける二人を見たくないからかもな、と自分で思っていた。
「お疲れっ。
藤崎、なにやってんのー?」
俺は、花宮が好きなのだろうか?
いやいや。
単に、課長と花宮が付き合い出したら、俺はもうキャンプに誘ってもらえないかもと思って気になっているだけかもしれないぞ。
そうだ。
そうに違いない、と藤崎は急いで結論づける。
そのときのために、別のキャンプ仲間を見つけておくのもいいな。
いやいや、これを機に、ソロキャンにしてもいいし。
消防士の霊がいなくなり、すっかり焚き火の魅力にとり憑かれている藤崎に、キャンプをやめるという選択肢はなかった。
「ふーじーさーきーっ。
てめー、私の呼びかけを無視するとはっ」
と後ろから、めぐが首を絞めてきた。
「ケメ!
お前、俺とキャンプに行かないか?」
藤崎が首を絞められながら、振り返り言うと、めぐは、
「は? なんであんたと?」
と首を絞めたまま言ってくる。
「そうか。
行かないか」
とあっさり諦めた藤崎は、今度は通りかかった多英に声をかけた。
「
「えっ?
ほんとにっ?
それって、デートのお誘いっ?
すごいわっ。
恋愛運アップの神社の巫女さんにいいことしたら、早速、いいことがっ」
「あ、やっぱいいです」
と不穏な方向に話が向きそうになったので、藤崎は即行断る。
「ちょっと、あんた、なに乙女心もてあそんでんのよ~っ。
傷つけた罪でおごりなさいよーっ」
と多英が言うと、
「そうよ、私にもおごりなさいよーっ」
と後ろからめぐも言ってくる。
「いや、お前はなんも傷ついてないだろーっ」
と振り返り、めぐに言ったが、結局、おごらされることになった。
仕方なく三人で会社を出ようとしたとき、コンビニで夜食を買ってきたらしい部署の先輩とすれ違う。
先輩は笑って言ってきた。
「おっ、藤崎、どうした?
両手に花じゃないかっ」
……まあ、見ようによっては。
サイフの周りに咲いてるだけの花ですけどね……と思いながら、見た目だけ華やかな状態で、藤崎は近くの居酒屋に引っ張っていかれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます