第66話 シロンの日常編

 クロンの元気がない。

 訳を聞くと妹のシロンという猫魔族の少女がいるとか。

 今年で10歳になると言う。


「シロンが今一体どこで何をしているのか心配です~」


「ご飯も喉が通らない?」


「流石にご飯は食べますよ~」


 とまあそんな感じで拓朗とクロンはシロンのことを考えていた。


 とうのシロンとはと言うと……




 ダンジョンを彷徨っていた。


「なかなか長いダンジョンですね~熱いです」


 シロンは白魔導師の猫魔族の少女である。

 名前の通り白猫の魔族だ。


 もふもふの白猫耳がキリッとしてピンと立っている。

 機嫌が悪い時はたらんと垂れ下がる。

 特に不機嫌だとたれ耳になるかわいい。


 シロンは完璧にロリな白猫少女だ。

 こんな少女がいたら可愛すぎてお持ち帰りしたくなるほどだ。

 だがシロンはその容姿は完璧だが。

 胸がないことを気にしていた。

 10歳なのだから無いのは当たり前である。

 シロンは姉のクロンがまあまああるから自分も無いのは可笑しいと感じていた。

 だがそれはそれでそれほど気にしないことにした。


 それよりモンスターだ。

 シロンは勇敢だが慎重だ。

 しかも狡猾だ。

 でも調子に乗るのでたまに痛い目にあう。


 シロンは攻撃方法が限られていた。

 杖で殴る。

 蹴る。

 殴る。

 体当たり。

 このぐらいだ。


 えっ? 魔法は? そんなものない。

 攻撃魔法など便利な物はない。


 使える魔法は自分の体力を回復させるヒールと魔力を回復させるマギヒールと精神力を回復させるマインドヒールと目暗ましのフラッシュだけだ。


 後は魔力を籠めて杖で殴るのが主な攻撃方法だ。

 よくもまあこんな非力な白猫耳少女がこんな中級者向けのダンジョンに潜ったわけだ。


 シロンのレベルは32しかない。

 これでは中級者向けダンジョンはぎりである。


 出てくるモンスターはコボルトエリートやゴブリンエリートにバブルスライムにと微妙に弱くはないが強くもなモンスターが出てくる中、殺人蜂やオークや中にはトロールなどが出てくる可能性もあるダンジョンだ。


 特にオークならぎりぎり勝てるかもしれないがトロールなんてたぶん無理だ。


 シロンが使う杖は白魔導師用の杖ではなく打撃用の杖だ。

 戦慄の打痕杖という名前だ。

 打撃に特化してて攻撃力が高い。

 魔力を籠めればなかなかの破壊力になる。


 だがトロールとは戦ったことが無い。

 トロールは公表ではBランクのモンスターだ。

 トロールエリートとかB+ランクとかになる。

 トロールキングとかだとA+ランクとかになる。


 オークはオークエリートまでなら戦ったことがある。

 なかなかの強敵だった。

 オークは速さは並だが耐久力が鬼だった。

 いくら杖で殴っても勢いが落ちないのである。

 オークの気迫が近づいてくるのでシロンは委縮してふにゃぁ~となって縮こまってしまったくらいだ。


 その後自宅でごろごろと猫饅頭になっていたほどだ。


 そんな長々と説明していたらフラグだったのか。


 色々とコボルトエリートとかコボルトアーチャーとかをぼこっていたら、ついにヤバそうな奴が現れた。


 シロンは自作の歌を歌いつつ気分が最高にハイになっていたのにだ。


 シロネコにゃんにゃんシロネコにゃんにゃん

 ねこねこにゃんにゃんねこにゃんにゃん

 なおなおなおなーおにゃお? にゃおんにゃおにゃおにゃおんなーお

 シロネコは可愛いのですにゃんにゃんにゃん

 シロンシロシロシロネコですにゃん

 にゃんだふる万歳!! シロネコに不可能はないのです!!


 シロンは歌っていた。

 青顔になっても歌っていた。

 そこにはトロールの亜種、レッドトロールが存在していた。


 レッドトロールって、、、、Aランクのモンスターじゃないじゃないですか!!


 こんなのどうやって倒すのですか一体……


 シロンは悩んでいた。

 トロールは意外と素早い。

 なので逃走は不可能である。

 シロンの魔力を籠めたダッシュでも逃げられるか。


 シロンは初撃をゲキ威力を籠めた一撃を加えた。


 魔力を普段の二倍いや三倍いやいや五倍そんなのじゃ足りない、二十倍だあ!!!

 を籠めて戦慄の打痕杖を揮った。


 自身の魔力を腕や体全体にも籠めて最大限に活用した。


「喰らえーーーです!!!」


 ズゴン!! とかなりの破壊力でレッドトロールにぶち当たった。


 だがレッドトロールは特に応えた感じが無い。

 レッドトロールはニヤリと笑った。


 この程度なら余裕だと言った感じだ。

 そして勢いよくシロンを殴り飛ばした。


 シロンは咄嗟に受け身をとる。

 だが殴られた時に口の中を切った。

 口から血が勢いよく流血している。


「痛いですーーー!? なんて強い攻撃なんですか!? 普通じゃないですこいつ」


 シロンは慎重に考えていた。

 取りあえずこの後ヒールして……と考えていたら……トロールが目の前にいて……


 シロンノ目の前が真っ白になった。

 

 レッドトロールに蹂躙されてそのまま……


 シロンは覚悟したこの後の結末に。

 だが目の前がまっしろになって数分後。

 シロンは眼を覚ました。

 そしていつの間にかレッドトロールはいなくなっていた。


 そしてシロンはその後転移の祭壇を見つけてダンジョンの外に出た。


 だがダンジョンの外に出ると……そこは異世界だった。



「なんですかーーーーー!! ここはいったいどこなんですかにゃあーーーーーー!?」


 つい語尾ににゃあとかつけてしまったシロンはそれだけ混乱しているのである。


 これは事件です隊長!! とシロンは一人漫才をし始める。

 幸いにも若干郊外の場所にいた。


 ここはシロンは知らないが東京都練馬区旭丘のとある場所だ。

 でもすぐに都会がある場所だ。

 そこにある隠されたダンジョンから出てきたのだ。

 いわゆる普通のとこに無いダンジョンだ。

 空き地の地面の中に埋まっている。

 掘らないと見つからないという油断の許さないダンジョンだ。


 とまあそんなことを考えながらシロンは歩き始めた。

 とぼとぼと、そろそろお腹が空いたな~~~と歌いだした。

 ここまでダンジョンにたぶん三日は潜っていた。

 その間適当な携帯食料の堅いパンに干し肉に瓶詰のサバ缶しか食べてない。


 シロンはマジックバックを持ってないのでリュックしか持ってない。

 スキルにマジックボックスなる物があるがそんなレア中のウルトラレアのスキルは持ち合わせてない。

 容量の少ない奴でもかなりレアだ。

 そんなレアなスキルを持っている人がぞろぞろいたらそれはそれで問題です。


 シロンは腹が減っていた。

 幸いにもお金はある。

 ここはどこの街かわからないが共通通貨のレイオン銀貨やレイオン銅貨は使えるだろう。


 シロンはとある建物を見つけた。

 何故か文字が読める見たことない文字なのに。

 エイトテンという小さくないが大きくない建物だ。


 そこに入ったシロンは怒肝を抜かされた。

 

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