第53話 遠足気分でテンションMAXの47歳、カツオ。
『やっと終わった・・・。』小久保(さん)との地獄の夜勤。
無言の威圧感をひしひしと感じながらも、あたしはフルシカトで利用者様の介護人没頭した。
そして、転倒した利用者様も、朝一Drに報告。
診察して頂き骨折の疑いは無く、「要観察」という診断で事なき終えた。
あたしは、事故報告書を直々に頭を下げ、Drへ提出。
「阿部はいつも頑張ってるな」
と、何故かお褒めのお言葉を頂戴し、「これからも利用者様の為に宜しくお願いします。」と今度は逆に頭を下げられ、あたしはしどろもどろになりながらそのまま退勤となった。
早番で来ていた良介の視線が、猛烈に突き刺さって痛かったが、佐野さんが迎えに来る為、あたしは逃げるようにフロアを後にした。
『ぐあぁぁぁっ!!朝の空気最高ーーっ!!』
あたしが雄叫びをあげていると、クラクションの音が背後から聞こえた。
『美桜ーっ!!グッモーニーンッ!!』『いやいや、うるせーから。』『阿部、お待たせ。』『阿部さん、お疲れ様!!』
1人除いて落ち着く面子。本当、1人だけ邪魔だけど、少しだけ期待してる。
『阿部、乗れ。』『はい、お邪魔し・・・』
「佐野さんっ!!お疲れ様です!!」
うわっ・・・。最悪。小久保(さん)と帰りがかぶった。
面倒な事に発展しそうな予感。
『あぁ、お疲れ様。気を付けて。』『今から何処かに行かれるんですかぁ!?』『いや、別に。』
顔を出そうとしていた美香さんに、あたしはジェスチャーで「ダメ」と指示。
ここで美香さんの存在が出てきたら、間違いなく更に小久保(さん)の怒りバロメーターは暴走するだろう。
(一旦帰る振りをしますね。)
口パクで佐野さんに伝えたあたし、自分の中の車へと向かおうとしたその時。
「奴」が暴走してしまった。
『みーおーっ!!カムバックトゥーザフューチャー!!』『・・・佐野さんの、お友達・・・ですか!?』『ノンノンノンッ!!我は煌太のいも・・・ふがふがっ!』『な、なんでも無い。小久保、気を付けて帰れ!出来れば早く!!』『佐野さんの・・・芋!?』『いーしやぁーきいもぉー。ホケキョ!!』『頼む、只野。黙っててくれ。』
ここは何としてでも小久保(さん)に帰って貰わねば・・・。
でも、カツオが小久保(さん)にちょっかいを出している。しかもウザいちょっかいだ。
・・・どうしよう。
『小久保、本当、気を付けてな!!』『あ、はい・・・。』『小久保の「こ」の文はどー書くのっ!!こー書いてこー書いて・・・』『じゃ、俺達帰るから!!お疲れ様!!』
佐野さん達が姿を消す作戦。
そうでもしないとカツオのオンステージが止まらない。
遊園地でテンション上がってんじゃねーよ。このドアホ。
『じゃぁ、お疲れ様でした。』『あぁ、阿部さんまだいたの?お疲れ。』車に乗り込み、小久保(さん)がいなくなる。
そして15分後・・・。
口にマスクを付けたカツオが助手席に乗り、再び佐野さんが現れた。
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