第52話 ドSからのサプライズプレゼント。

『さ、佐野さぁーん!?』あたしは佐野さんの車近くにて、小声で佐野さんの名前を呼ぶ。


『おせーよ。』『いた。すみません、遅くなりました。』『どーせ小久保が休憩オーバーしたんだろ?』『・・・まぁ。』『飯、まだだろ!?』『あ、はい。』『1時間だけ時間くれ。』


そう言った佐野さんはあたしを車に乗せ、コンビニで熱々のおでんとおにぎりを購入しとある場所へとやって来た。


『寒いけど、ちょっと我慢な。』『大丈夫です。』車を降り、歩く事10分。


『わあぁぁぁ・・・。』『ここなら若干夜景も見えるだろ?』田舎の街に小さな光で囲まれた木々達。

白と青で照らされた、丘の上にある小さな夜景・・・。


『こんな場所、あったんですね。』『この間、車で走ってたら見つけたんだ。』『凄く綺麗です!!』『ここで飯食おうぜ。』『はい!!』


佐野さんらしい気配り。

あたしが落ち込んでるとでも思ったのだろう。そして、今日の夜勤が小久保(さん)という事もあり、ストレスが溜まっているのを悟ってくれたのだろう。

外に連れ出し、小さなイルミネーションだけど夜景を眺めながら温かいおでんを2人で食べて・・・。


本当、佐野さんはあたしの性格をちゃんと把握してくれていた。


『夜勤、大丈夫か?』『はい、相手にしてません。』『女って、色々大変なんだな。』『どこに行っても消えない試練です。』


佐野さんが隣にいると落ち着く。安心する。

きっと、これが「恋」なんだって、つくづく実感させられる。

佐野さんだって、仕事終わりで疲れているだろうに、わざわざこんな計画を立ててくれて・・・本当に申し訳ない。


『佐野さん、ごめんなさい。』『何が?』『あたしがもっと色々しっかりしてれば、佐野さんが疲れる事もないんですよね。』『俺がしたいからこうやってる。お前は関係ない。』


もし、佐野さんと出逢っていなければ。

佐野さんを好きになっていなければ、あたしはとっくに施設を辞めて、自分が何をしたいのかさ迷いながら介護士の仕事から離れていたかもしれない。


佐野さんと出逢い、美香さんに出逢い・・・カツオに色んな意味で勇気を貰い。


大人になっても成長はし続けていく。

どんなに嫌な事があっても、前を向いて顔を上げて、自分に自信を持って歩いて行くしかない。

それが、あたしの今の「目標」・・・。


『阿部。』『はい?』『明日って、何してる?』『明日は夜勤開けなので、家でぐうたらですかねぇ(笑)』『ちょっと遠出して、遊園地行かないか?』『えっ!!行く!!行きたいです!』


「美香と只野も一緒なんだけど、いい?」


だと思った。いや、むしろそれでいい。

あたしはカツオに言いたい事がある。


「足を洗って出直せ」と。


『いいですよ!』『じゃぁ、明日夜勤開けに迎えに来るから。』


あたしは、カツオに会える事で何故かワクワクが止まらなかった。









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