第30話 非日常から日常へ 1/4

 あれから数ヶ所の町や街を落とし、どんどん帝都への包囲網を狭めて行き、隣国との連携も取りやすくなっていた。


 鎧の違う奴が頻繁に偉い奴のテントに出入りするようになったり、ヘイが俺と大飯に、よく映画とかアニメとかで見る赤と青のT字の兵棋へいぎを見せ、意見を求めてきたりした。


 騎兵や歩兵、弓兵の配置や地形の利用。各自思い思いの意見を出し合った。


「これ、フランス革命辺りの戦場と同じっぽいので、こんな感じで配置しつつ一部を薄くして、ヘイさんがここから長距離射撃で指揮官の排除。前線で自分とスピナさんが暴れますので、確実に敵の予備戦力がこちらに来ます。なのでこう動いてこの辺が薄くなると思うので、こちらは後方の予備戦力を一気に移動させ、地形を利用して――」


 凄くわかりやすい説明だが、上手く行かないのが戦争だ……。と思ってたら本当にそうなった時は驚いた。過去の例があると、やっぱりそれっぽくなるんだろうか?


 俺の虚を付いた案も採用され、裏取りも上手く行った事もある。



 そして攻城戦ではなく遭遇戦が増え、敵軍が見えた瞬間にジャガノ装備になり、盾と使い慣れた自動小銃mk23を持って最前線で暴れ、ヘイが援護射撃をしつつ、大飯は気が付いたら敵陣深くまで単独で乗り込み、日本刀とダブルバレルガバメントで大暴れしていた。凄く楽しそうに……。


 なんでソレを使っているのかと聞いたら、ストッピングパワーのある45口径の弾が一回で二発出るから、一発でしとめられるってどうしようもない理由だった。


 確かに至近距離だと近い場所に二発当たるけどさ……。




 街での攻城戦の場合は、マスケット銃や大砲っぽい物を多く見るようなった。


 そして避弾経始の事をヘイが説明したが、鉄板を持って歩けないって事で命中率を下げるために、大きな集団で動かす事をしない、俺達の攻撃で数を減らしてからの攻撃がメインになった。


「スピナ、そっちはどう?」


「あぁ? 銃口の跳ね上がりさえ気をつければ撃てば当たる。そっちこそ防壁の上の大砲はどうなんだよ」


 俺は軽機関銃MG4で、柵の向こう側でマスケット銃を持っている奴を、ACOGで大まかに狙いながら三発くらいずつ撃っている。ってかあんまり狙ってない。


「あんなの対物狙撃銃一発でお釈迦だよ。技術的に真鍮かな? そして指揮官の頭はスイカ。大飯の方は?」


 そう言いながら、バゴンバゴンと大きな音を出して不規則に撃っているので、狙って撃ってはいると思う。


「ジャベリン解禁で凄く楽ですね。固まってる所にトップアタックで落とすだけ。悪夢の再来ですよ」


 帝都から一番近い街って事で、もういいんじゃないか? って事で解禁させ、三分おきに柵を巻き込むように撃っている。



「敵の士気もがた落ちだな。裏手や側面の兵士も、減った正面の補充に来て薄くなってるだろうし」


「だねぇ。噂とか報告が来てて、敵はもう負けを確信してるよね」


「危険なのは遭遇戦だけ。問題は帝都の防衛戦力だよねぇ」


「地面を耕かしちゃって、攻め辛そうなのは申し訳なく思います」


「被害が減るんだから、そこは目を瞑ってもらおうか」


 ヘイはもの凄く楽しそうな声で言い、門の破壊や油とかを落とす場所を露出させ始めている。


 低倍率のスコープで見ても敵の動揺が丸わかりだ。



「そろそろ突撃させてもよろしいでしょうか!」


 しばらく撃っていたら凄く派手な鎧の奴がやってきた。この隊の総司令官的な物なのだろうか? ヘイと一緒にいるのを見た事はあるな。


「もうちょっと待ってて、後二人だから」


 ヘイはそう言うと、もの凄くでかい音を十秒間に二回鳴らし、総司令官に緩く良いよーと言っていた。


 そして大飯がおまけと言わんばかりに、最後に一発ジャベリンを撃ち、少し人が固まっていた場所に落として吹き飛ばしていた。


「士気はあってないような物だろうな」


「けどこの次は帝都だから抵抗は少しあると思うよ」


「まぁ、大軍には大軍が一番ですよ。お二人の遅滞戦闘の話を聞いた限りではですけどね」


 自分達の仕事は終わったと言う感じで、少しだけ気を緩めて敵の動きだけを見ていた。



 街を落とし、後続の軍との合流をするために、しばらく防壁の外でキャンプをし、準備が終わったので進軍した。


 けど数日後に後ろから来る兵士と合流してから進軍する事になっているのか、街にかなりの兵士が残っている。


 そしてビスマスは、五万を少し越える程度で帝都アラバスターに進軍し、歩きで二日目に着いた。


「かなり近いな。俺が逃げ出した時は、この間の町に寄らなかったぞ?」


「馬車や馬なら通り過ぎてもいい程度の距離なんでしょ。軍隊の進軍速度なんてそんなもんだよ。あとは他国の軍と連携を取る会議してから攻める。あの街からは結構お互いの距離が近いから、それなりに連携はとれてるし。あー、会議で思い出した。各国のお偉いさんとの連携を取る会議があるんだ。めんどくせー」


 防壁を見ながらのんびりとしていたら、ヘイはため息を吐きながら嫌そうに言った。本当に嫌なんだろうな。



 そしてその二日後、朝食を早めに取り、朝日が見えた瞬間に進軍するラッパが鳴り響き、ついに決戦が始まった。


 俺達は正門の後方に配属され、一番軍事力のある国が正面を担当する事になった。


「噂の悪夢が俺達の後方にいる! 悪夢が我々にとっては吉夢になるだろう!」


「「「「うおーーーーっ!!」」」」


 上官らしき男が兵士を鼓舞し、士気を上げている。まぁ、そうだよな。最終決戦だし。


「門を破壊すればいいんですね?」


「門の上部にある油とかぶっかけるための空間とか、大砲類もだね」


「適当にぶっ放す簡単な仕事だ」


 そんな事を話していたら既に防壁や門に向かって進軍し始めたので、各自軽機関銃で門を撃ったり、ジャベリンで吹き飛ばしたり、大砲を壊したりしていた。



「あ、開門したよ?」


「お、本当だ。もう諦めの体制か?」


 ヘイの言葉に反応し、俺は撃つのを一旦止め、ACOGで門を見ると確かに開き始めている。


「本丸って程じゃないですが、もうここしかありませんからね。ほぼ無血開城で……。民兵のお出ましですね。今現状で考えられる最悪の状態です。気を引き締めて行きましょう。アレは明確な敵です。武器を捨てて投降したと思わせて、背中を見せた瞬間に刺される奴です」


 大飯は冷静に言っていたが、声質が少しだけ低くなっていた。腹を括ったんだろうか?


「……あいよ。元々殲滅のつもりだったんだ。と、そう自分に言い聞かせるさ」


「ははは、スピナは案外脆いからね」


「お前だって、女を殺すのは無理そうな気もするが?」


「割り切るしかない。夫が射殺され、泣き崩れてるところをスコープで見てて、頼む、武器を取らないでくれよ……って言った瞬間に、武器を取ったから撃ち殺したって、ほぼ史実を映画化したのあったでしょ? その人になりきる覚悟だ」


 ヘイもふざけた雰囲気は一切なくなっており、深呼吸を二回してスコープを覗いた。ってか例え話が長い。多分ヘリが墜ちる映画のワンシーンだろうけど。


「あ、薬飲まされてるね。頭吹き飛ばして、後ろの奴の肩が吹き飛んだけど、痛がってる様子がない。こりゃ義勇兵じゃないね」


「ストッピングパワーを信じるしかないな」


 俺はほぼ無心でACOGに入った民兵を撃つが、急所以外に当たったらそのままつっこんでくる。ゾンビじゃなくて、寄生体の方だと思い込もう。


 最前線の兵士も盾で防ぎながら二列目や三列目の兵士が槍で突くが、刺さったままどんどん前に来るので、槍を手放してる状態だ。


 ってか槍の柄の真ん中まで来るってよっぽどだぞ……。


「皇帝って奴はどのくらい腐ってると思う?」


 ヘイがそんな事を聞いてきたので、とりあえず答えておく。


「早すぎたんだ。ってくらいには腐ってる」「投げるとダメージを与えられる、腐った生卵ですかね」


 大飯と被ったが、ダメージ判定のある腐った卵ってどうなんだ?


「すばらしい答えをありがとう。俺は井戸に薬を入れるくらい腐ってると思う」


 集団で薬漬けにするには、それくらいしか思いつかないが、どうコントロールしてるかだよな。凶暴化してるのに……。


「それは捕らえた技術者に聞けばいい……さ!」


 ヘイはそう言いながら、引き金を引いていた。



「リロード! 十秒くれ。ジャベリンの次弾回復まで残り一分」


 大飯はジャベリンの弾が回復するまでは、ミニミの後継機を俺の隣で撃っている。


「回復時間気にしないで撃ってるから、ちょっと残弾厳しいね」


 開戦二時間後には三人とも忙しくなり、こちらの兵の隊列にも乱れが出ている。こっちの兵士の士気が心配だ。ってか他の門も開いて大変な事になってそうだ。


「けど確実に減ってるでしょ。人口も有限だし」


「若者に混じってお年寄りが出てきてるぞ?」


「落とされる事前提で、嫌がらせとしか思えない行動ですね。街の人々全員って感じがしてきました。外道っていうか何でもありですね。クソ気分が悪いです。条約とかある現代はかなりマシですね。さて、戦場になると知ってて市民を逃がさないで、大量に犠牲になったあの戦場とどっちがマシですかね?」


 大飯に汚い言葉が混じり始めた。しかも皮肉まで……。


「にしても、噂をばらまいたのに薬で市民を強制的に使うってーのは、こっちの方が最悪じゃないか? 大量に外に逃げて来るならわかるが、凶暴化させた戦う意志がなかった奴かもしれない」


「比べるだけ無意味かな。色々な国が色々な主義を謳っているけど、恐怖で洗脳も一定の利益とか出すし、一概に悪いとは言えない。正義っていうのは、その人で定義が違うから。それに……正義の方がより人を多く殺しているのは確かだ」


「まぁ、向こうの政治の話は止めよう。政治とスポーツと宗教は駄目だって色々な人から言われませんでした? 天気の話しでもしましょう」


 俺は素に戻ってリロード中の、比較的静かな時に呟くように言った。


「申し訳ない、つい愚痴が漏れた。あー今日はいい天気だ。冬なのに日差しが暖かい。死ぬには丁度良い」


「そうですね。止めましょうか。今は目の前の課題を片付けないと。あとそれ、今日にでも死ぬ覚悟がある人の言葉です。雨でも雪でも関係ないそうですよ。あいつ等はカボチャかジャガイモだと思いましょう。ね? 自分はとっくにそう思ってます」


 大飯も無理矢理作ったような笑顔で言い、ジャベリンを構えてロックした電子音が聞こえると、即座に撃ち出して兵士達の前方にいる奴等を大勢吹き飛ばしていた。


 まさか大飯の皮肉から、こんな話になるとは思わなかったわー。本当もう嫌だ……。帰りたい。


 前線で戦ってる兵士も同じ様な気分だろうな。薬を本人の意思とは関係なく飲まされた一般市民を殺すのが、ここまで物だとは思わなかった。


 そう思いつつも軽機関銃のリロードを終わらせて、門の辺りで詰まっている場所を狙って、自棄になり百発撃ち切るまで引き金を引き続けた。



「お昼だねぇ……」


「……あぁ」


「銃の撃ち過ぎで、振動障害って出るんですかね?」


 十二時を回り、昼になった事を話していたが、大飯がなんか振動障害の話題を出した。


「振動工具って一日何時間まで使用可能だっけ? まぁ工具じゃないし、壊死したら注射でいいだろ。それよりこの腹の減り具合と弾の管理だな」


「てかもう既に残り二桁前半になりそう。スナイパーの弾の回復速度が遅くてやばい」


「ご飯は食える時に食べておけってのは本当ですね。一人が食べてる時に、二人で援護しつつ弾の回復とかどうです?」


「五分で三百秒。俺はスナイパーだから三十発しか回復しない」


「全員で今まで通りエナジーバーでも齧ってた方が良いな」


「そうしましょうか……」


 俺はリュックの中からエナジーバーを取り出し、全員で袋に手を突っ込んで適当に持って行き、各自食べ出した。



「口ん中パッッサパサ!」


 その言葉に大飯が粒状の物を吹き出した。何があった。


「すみません。ツボりました」


 それだけを言い、またモゴモゴとし始めてどうにか飲み込んでいた。


「誰か水持ってねぇ?」


「装備欄に入れられるから買ってないねー」


「自分もないですね。後方の輜重兵に言えばもらえるかもしれませんが、離れる必要がありますね」


「しゃーない。んじゃ俺のオレンジジュース回し飲みな」


 俺はもう一度リュックの中に手を突っ込み、コルクの蓋を口で抜いて二口ほどインド飲みして、隣にいるヘイに渡す。


「果汁百パーセントだねぇ。菌とかこの酸味で繁殖できるのかな? まぁいいか。この世界で衛生概念なんかとっくに捨てたし」


「スピナさんって結構疲労とか栄養を気にして、柑橘類とか野菜買ってますからね。キャベツや玉ねぎで、水分補給しろって言われないで助かりました」


 ヘイから大飯に瓶が行き、大飯がオレンジジュースを飲み干して瓶を誰もいない場所に置いていた。


「糖分とビタミン。後は塩分かー」


「あ、自分塩飴持ってますよ」


 そう言って大飯は、ポケットから紙に包まれた四角い物をこっちに投げてきた。


「助かる」


 俺は包み紙を開けて、半透明な物体を口の中に放り込んで、ゴミをポケットにしまう。


「悪いねー。何もなくて」


「気にすんな」「気にしないで下さい」


 どうにかして俺達は胃に何かを入れ、戦闘を継続させた。すみません最前線の兵士さん達。


 そんな事を思ってたら街の中や後方で煙が上がり、食事を作り始めたのがわかり、前線の兵士が戦列を入れ替えて立ったままパンを口に入れ、スープを流し込んでいた。


「戦闘中の食事ってすげぇ」


「胃に悪そう。しかもかなり熱そう」


「死ぬかもしれないのに質素な食事と、ゆっくり食べれない状況。確実に士気がだだ下がりですね」


「けど、俺達にも食事を持って来ないのはおかしい」


 俺は冗談を言いながら、塩飴を口の中で転がしつつ笑いを取る。多少は自分達の士気も上がるだろう。


 ちなみに俺達の昼食は本当に忘れていたらしく、微妙に冷めた物が運ばれてきた。


 一気に胃に流し込める親切仕様だった。こんちくしょう! 少しは休ませろ。



 それからどうにかして弾の管理をしつつ、狂戦士化した民兵を減らしていくが、既に夕方だ。一度撤退の合図が鳴って、死傷者の回収をするはずなのに敵の攻撃が止まない。本当どうにかしてる。


「焦土化するより質が悪いな」


「敵さんがね」


「敵の心境が知りたいですね。もうヤケクソってな感じなんでしょうか?」


 そんな事を話しながら攻撃していたら、日の入りと共に門が閉まりやっと今日の戦闘が終了したが、門の外にいた狂戦士化した民兵を全て排除するまでは、戦闘は終わらなかった。



「腰が痛い」


「肩が痛い」


「腕が痛い」


 三人で似たような事を言い、銃を地面に置いて盛大にため息を吐く。


「けど死んでないだけマシだ」


「これからたぶん会議」


「会議からの敵前逃亡します?」


「同盟国の指揮官全員疲れてるだろうから、そんな事言うなよ。二人は休んでてくれ」


「あいよー」「わかりました」


 ヘイはため息を吐きながら立ち上がり、装備を軽くしてフラフラと歩いていった。俺達二人はとりあえず話し合い、俺がテント設営で、大飯がこのまま城門の見張りをする事になった。



 大飯は見張りをしていたが一発も撃つことはなく、ヘイが戻ってきてから俺が食事を取りに行き、そして重苦しい雰囲気の中、ヘイが口を開いた。


 内容は会議の事だったが、やっぱり狂戦士化した民兵の話題が出たそうだ。それからは珍しく愚痴が続いたが、やっと本題に入った。


「俺達がいたからまだ正面はいい。問題は残りだ。開門して狂戦士が出てきて決して少なくはない被害が出た。そして出た答えが街に乗り込んで制圧していき、中央に包囲網を狭めていく事だ。後方から来る各国の兵士達にも通達をし、一定の数で防壁を包囲しながら、防壁内の建造物の破壊。狂戦士化した人間の徹底排除。時間をかけて被害を最小限になるように攻めていく事になる」


「薬の効果は各国知っているのか? 麻薬みたいに常習性が高いって」


 たしか脳が、変な物質を出さなくなって、麻薬的なのを摂取し続けないと駄目だから、一回でもやったら止められないというより、食べ物を食べるみたいに、栄養を補給するって感じに近いとかそんな記憶が……。


 たしかとある漫画家がオナ禁に例えてたな。何日我慢できる? 麻薬我慢するのはソレより辛い事だったら? ってな感じで。発想の常勝無敗の名は伊達じゃないよな。



「あぁ、伝えてある。離脱症状は切れてからの倦怠感と無気力。時間と共に凶暴化して、拘束して数日後に死亡。助けるには常に薬を与え続けるか、根気強くどんどん薄くしていって慣らすとかかな」


 やべぇ。小指で少し舐めちまったよ……。まぁ、小学生化した高校生だって少し麻薬的な物を舐めてたし、平気だよな……。


「魔法的なもので完全に治るか、簡単に離脱できればいいんだけど」


「万能薬、エ○ナ? ディ○ペル? デ○ペル?」


「バーサクを打ち消すから後者だな。ってか作品で名前が違うし効果も違うから何とも言えない」


 大飯が魔法の単語を出すが、個人的には魔法は全部四文字で統一してほしかったなぁ。


「本当魔法って便利だよねー」


「教会の高位の人とか使えないんですかね?」


「簡単な回復魔法なら、ポーターやってる時とか過去の戦争の時に見たな。どうなんだろうな?」


「あぁ、メディアス経由でデータを取るのに高僧を呼んだけど、高度な解呪に近いそうだ。一般人にはとても依頼できない額だね」


 ヘイは治すのには時間と金がかかるから、一般人にはどうにもならないと遠回しに言い、毛布の上に寝転がった。


「つまりコスト的な物で、収容施設とか作るよりは、殺してやった方が本人や家族にも、政府の財布的にもいいと」


「そう。クソ面倒なものをばら撒きやがって、ただじゃ済まさねぇっ。て連合国の上の方の人達も言ってた。後は最前線の兵士が凶暴化した、元人間を殺せるかって感情に絡んでくる」


 ヘイは寝転がりながら前腕で目を押さえ、ため息混じりに言った。


「俺達もな」


「ですね……。結局は最前線の兵士が心的外傷になると。むしろ麻薬的な物は呪いに近いバッドステータス……。質が悪い」


 大飯も同意してくれ、多分生き残った連合国の兵士の気遣いもしている。


「心療内科の需要が上がるな。多分明日は街の中に入る事になる。各自近接用の武器に変えてから寝てくれ。スピナは寝辛いから明日で良いよ」


「強化アーマー必須って事だな……。覚悟しておくわ。んじゃおやすみ」


「あぁ、おやすみ」「おやすみなさい」


 俺は二人の声を聞いてから、蝋燭の火を手を振って消した。変なところで日本人が出るなぁ……。

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