第77話 おっさん、帰れない

 救出パーティの人達と合流した。


「という訳で素材集め頼む」


 オリヴィエに事情を説明して指揮を執ってもらう事にした。


「分かったわ。糞みたいな故郷だけど、あんなのでも無くなると悲しいから、精一杯やらせてもらうわ」


 これで素材集めは良いだろう。

 薬が駄目だった時の事を考えてこそっと地球に戻ってみるか。


次元移動ディメンションムーブ


 あれっ、次元移動が発動しない。


『ただいま工事中です。ご迷惑をお掛けします』


 この声は管理者。

 約束が違うんじゃないか。

 地球に戻れるようにしろって言ったはずだ。

 報酬前払いでな。


「おら、管理者出て来い」

『ただいま、留守にしております。ピーっという音の後にメッセージをどうぞ。ぴー』

「ふざけんな!」


 ちくしょう騙された。


「なんや荒れとるな。どないしたん」

「約束を守って貰えなかっただけだ」

「そんな奴は賠償金むしり取って、縁切りやな」

「殴ったら良いと思う」

「必罰」


「それがそうもいかないんだよな。貸しとして取り立てるとして、さて俺達はマーロウの事でも調べよう。ダンジョンに戻るぞ」


 スクーターを飛ばせばダンジョンはあっという間だ。

 ダンジョンコアに触れて状況を確かめる。

 3日ぐらい経ったが、各ダンジョンと共に異常はないな。


「ダンジョン内での犯罪は起きてないようだし平和だな」

「そりゃ、あれだけやればね」

「そうだな。目についた犯罪者は軒並み地獄に送ったからな」


「おっと、そう思ったらチンピラ冒険者のお出ましだ」


 チンピラが駆け出しと思われる冒険者をボコボコにしている。

 俺達は現場にワープした。


「この場所は今日から俺達の狩場だ。ほら行った行った」


 狩場の占有とはゲームでの話みたいだな。


「ダンジョンは誰の物でもないだろう。強いて言えば治めている領主かな」

「こいつらみたいに痛い目に遭いたいのか」

「本当に頭わるそうね」

「女だと思って下手に出れば回してやっても良いんだぞ」


「エリナ、こいつら頭が悪そうだ。一戦交えないと分からないようだな」

「そうね。ぱぱっとやりますか」

「うちもやりまひょか」

「参戦」


「じゃあ俺はどうしようもない時に加勢する」

「余裕を見せやがって」


 チンピラ達は剣を抜くとアルマ達に斬りかかってきた。

 とうぜんアルマ達は斬られるが、血など一滴も出ない。

 剣を素手で掴んで止めて、反撃に短剣を走らせた。


「くそう、ゾンビかよ」

「男が召喚士だ」

「ぐっ、俺は駄目だ」


 傷ついても平気な体はチンピラ程度なら無双できるな。

 ほどなくしてチンピラ全員が退治された。


「おい、大丈夫か」


 俺は倒れていた駆け出し冒険者を起こした。


「大分やられたけど、骨まではいってない」

「俺も打撲だけだ」

「痛てぇ、こりゃポーションを飲まないと」

「あいつら良いようにやりやがって」


「外まで運んでやろうか?」

「いいえ、そこまでしてもらわなくても自分の足で帰れます。なあ、みんな」

「おう」

「冒険者は自己責任」

「今回は勉強になったよ。痛い体を引きずって帰るのが勉強代かな」


「じゃな、気を付けろよ」


 さてと、駆け出し冒険者が居なくなったから、この場所を調べるとするか。

 別におかしな所はないな。

 ありふれたダンジョンの一室だ。

 チンピラを殺さないで尋問するべきだったか。


 しばらく待ってみたが、現れたモンスターも普通で、これと言って意味はない。


「チンピラは何の為にここを占有したと思う?」

「ダンジョンの中に店でも開こうとしたんやないの」

「それにしては商材がないな」


「後で運び込む予定だったとか」

「開店準備」


 そうエリナとモニカが意見を言った。


「店を開くってどんな店だ?」

「食べ物屋と違うやろか」

「魔石の闇買取所に一票」

「闇儀式、祭場」


 どれも違うような気がする。

 まあ良いか。

 チンピラが考える事なんて分からない。

 考えるだけ無駄かも知れない。


 そろそろ、薬が出来上がった頃だな。

 村に行くとしようか。

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