第41話 おっさん、酒場で店を開く

 アマザオアシスという所に着いた。

 ここに来たのは、このオアシスにアタンの店がある事と、サラクオアシスと敵対していないからだ。


 グエルオアシスの特産品は三つ、果物、酒、肉製品だ。

 果物は缶詰を売りまくれば潰せる、酒も地球の方が美味い。

 問題は肉製品だ。

 まずはビーフジャーキーをアタンの店に卸して様子をみてみるか。

 よし、次は情報と金稼ぎだ。


 適当な酒場に入る。


「エールを一杯ずつ」

「あいよ、四つね」


 さて、ダンジョンの情報を得たいが、オアシスから出た事のない奴の話を聞いても参考にならない。

 かと言って商人連中も駄目だ。

 聞きたいのはダンジョンに出入りする冒険者達がする話だが。

 自分の首を絞めるような情報は喋らない。

 ギルドもないし、さてどうしたものか。


 情報を得たいのならこっちも提供しないとな。

 それにはまず取っ掛かりだ。


「マスター、俺は商人で、美味い酒を持っている。買ってくれないか」

「味をみて買ってやろう」


 俺は魔力通販で缶ビールを出して、マスターに差し出した。


「ぷはぁ、美味いな。冷えているとこんなに美味いのか」


 魔力通販で買うと冷えた状態で出て来る。

 スーパーで買う時は冷えていたから、当たり前だが。


「冷やす魔法を使う奴なんて雇えないだろ。どうだ俺と組んでみないか」

「そうだな。これを出せるなら損はないだろう」


 俺は酒場と契約した。

 俺は冷えたビールを提供。

 酒場のマスターは金と俺のために場所を開けてくれた。

 テーブル一つが俺の店だ。


「おや、玉子を売っている」

「1個、銅貨10枚だ」


「安いが腐っているんじゃないだろうな」

「1個、割ってみても良いよ。その代わり、10個は買ってくれ」

「あんた、商売上手だな」


 玉子を割り匂いを嗅ぐ客。


「確かに、腐ってない」


 割った玉子は目玉焼きになって酒場の客の胃袋に消えた。


「パンも売っているがどうだ」

「おう、貰おう。さっきから気になっていたがその魔道具は何だ」


「ああ、これね。灯りの魔道具なんだ。頭に装着するんだ」

「夜、起きた時に便利そうだ。でも手に持った方が使い易い」


「職人が偏屈で、このタイプしか作ってないんだ」

「試しに買っていくか」


 今、売っている品物は卵と食パンとヘッドライト。

 卵と食パンは一般の客向けで、ヘッドライトは冒険者向けだ。


 卵と食パンは安い事もあり、売れに売れた。

 ヘッドライトは、ぽつぽつと売れた。

 ぽつぽつ売れると口コミで本来の客が現れる。


「このヘッドライトはいいね。手が塞がらない所が良い。電池というのをくうところが少し不満だが、魔力をくう訳じゃないのでまあまあだ」


 この客は冒険者だ。


「ここだけの耳寄りな話だが、聞くか。お代はダンジョンの情報だ」

「物による」


「サンドシャークに効く毒だ」

「それは良いな。是非ともほしい」


「契約成立だ」


 唐辛子を売りつけ、ダンジョンの情報を得る。

 こんな形で何とかやっている。


 サラクオアシスの話も聞こえてきた。

 サラクはまだ落ちてなくて、元サラクの住人も戻ってきているらしい。

 スパイがますます入り込むな。

 だが、俺は何もできない。


 アタン辺りが上手くやるだろう。


「うちらなら、もっと上手く売れる。なんでうちらに頼まへんの」

「売るのが目的じゃないからな。それにな酒場の従業員は変な目で見られるのでな」


「独占欲ならしゃあない」

「ふっ、可愛い所があるのね」

「独占欲=愛」


「まあ、そんなところだ。次に攻略するダンジョンはウルフダンジョンにしようと思う」

「毒餌を食わせるんやね」

「キシリトール、コーヒー、チョコレートと用意したので、何とかなるだろう」

「農薬とか使ったら良いんじゃない」

「毒薬最強」


「やつら勘が良いんだよ。人間が食べる物じゃないと食わない。だからサンドウルフ討伐の前にはキシリトール飴を舐める事にしている」

「そんな事があるんやね」


「モレクの内臓を仕入れに行こう」


 俺達は肉屋行った。


「食わない内臓を安く譲ってくれないか」

「何に使うんだ」

「モンスターを罠に掛ける為に使うに決まっているだろう」

「肥料に売る値段で売ってやる」


 ミートミンサーを魔力通販で買い、ミンチを作る。

 ハンバーグみたいに焼いて、キシリトール飴とチョコレートとコーヒーを埋め込んだ。

 これで準備はオッケーだ。


 明日からウルフダンジョン攻略だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る