第30話 おっさん、3人目をめとる

「モニカは何で独特な喋り方なんだ?」


 ふと気になったので聞いてみた。


「よくぞ聞いてくれました」


 何時もの喋りはどこ行った。

 得意な事だと饒舌になるあれか。


「あれは5歳の頃。ある冒険者に出会いました。その人は独特な喋り方で誤解を受けていたんですが。とっても優しい人でよく食べ物を分けてくれたのです」


「その人に感銘を受けてそうなったのだな」

「拝」


「元に戻ったな」

「結婚承諾」


「なんでだ?」

「姿勢、感銘」


 レアルとアズリの件を見てそう思ったのか。

 普通の事しか言ってない気がするがな。


「水の神アクエルの名の下に、ムニとモニカの結婚を許可する。誓いのキスを」


 オアシスの広場で結婚式だ。

 キスをして結婚はなった。


「三人目だとぅ」

「ちくしょう。強い男しか、もてないのか」


 異世界はモンスターの被害もあって、そういう傾向があるのは否定しない。


「しかし、光を発する部族なんていたか」

「馬鹿だな。特殊な塗料を塗っているんだよ。人間が光る訳ない」


 何時もの通り宴会になる。

 俺は彼らに酒を振る舞ってやった。

 4リットル1500円の安い焼酎だけどな。


「くぅ、効くねぇ。どこの酒だい」

「スーパー産だ」

「スーパーなんてオアシスは聞いた事がないな」

「とっても遠い所さ」


 子供には缶詰の果物を振る舞う。


「甘ーい」

「美味しい」

「パンの耳と一緒に食べると美味しいよ」


 酒も果物の缶詰も好評だ。

 次の交易の商品にはこれも加えておこう。


 そして、何ヶ月か経ち。


「不味い事になったぞ」


 交易から帰って来たアタンが本部でそう言った。


「メンバーに怪我人が出たの?」


 心配そうなアズリ。


「いや、そこは大丈夫じゃ」

「交易でトラブルか?」

「そうだの。しかし規模はもっと大きいんじゃ。オアシス三つが連合を組んでここに攻めて来る」

「分かったぞ。グエルの奴らが動き出した違うか?」

「違わん。グエルのバラムが大将だそうじゃ」


 いよいよか。

 しかし、早いと見るべきか遅いと見るべきか。


「果物の缶詰と酒が不味かったんじゃ。どこのオアシスも上が果物と酒を牛耳っている」

「でも、目くじら立てるほど品物は流していないと思うけど」


 とアズリ。


「先行きを考えたんだろう。今のうちに潰しておきたいと思ったのじゃろうなぁ」

「アタンには話してないが、グエルが攻めて来る理由があるんだ」


 サンドシャーク討伐の顛末をアタンに話した。


「それだと退かんな。全滅するまで戦うだろう」

「アタンもそう思うか。アズリ、こういう負けられない戦いこそ、族長の出番だ。皆を奮い立たせろ」

「ええ、やってみる」


 オアシスの広場に人を集めた。


「グエルの裏切り者で臆病者が攻めて来るそうよ。彼らはサンドシャークに震えあがって生贄を差し出すような輩よ。我々はそのサンドシャークに勝った。我々の方が強い。今こそ裏切り者の猿、バラムに鉄槌を食らわせる時よ。皆は許せないわよね。あの屈辱を忘れてないわよね」


 アズリの演説で皆が沸き立つ。


「そうだ。奴らに鉄槌を」

「おう、恩知らずに報いを」

「俺達は餌じゃねぇ。サンドシャークキラーだ」


「そうだ」

「そうだ」

「戦うぞ」

「ここを守る為だ」


 拍手と武器を打ち鳴らす音が止まらない。

 盛り上がったから、よしとしよう。

 この日の為にボウガンとポリカーボネートの盾は揃えてある。

 鎧はサンドシャークとサンドアリゲーターのを配ったばっかりだしな。

 攻撃力として魔法使いが欲しいところだが、いないものは仕方ない。

 魔力通販の力でなんとかしよう。

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